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vol. 02

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いまさら聞けない食品ロス。「ムダ」の構造をインフォグラフィックスで解説

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食べ残しや売れ残りなどさまざまな理由で、まだ食べられるのに廃棄されてしまう「食品ロス」。世界的な社会問題とされていますが、それらがどうして社会にとって深刻な問題なのか。また、どこで誰がどのように、どれくらいの食品ロスを発生させてしまっているのか。私たちのライフスタイルと密接に結び付いているその背景についてインフォグラフィックスで学んでいきましょう。

本記事は、食品ロス問題ジャーナリストの井出留美氏の監修のもとに作成しています。

なぜ、削減すべきなのか

そもそも食品ロスをなぜ減らさなくてはならないのか。その理由は、「経済」「環境」「社会」の3つの観点から語ることができます。それぞれが私たちの経済活動や消費行動に深く関係した問題です。

環境省の発表によると、全国の自治体の一般廃棄物関連費用、つまりごみ全般の処理費用は2兆1,000億円以上。燃やすごみのうち、生ごみ(食品廃棄物)の割合は少なく見積っても約40%。2兆1,000億円には焼却施設の維持費も含まれているので、単純計算はできませんが、およそ1兆円の公費が食品廃棄物の処理費用に充てられている可能性があります。

また、日本社会全体で発生している食品ロスの食品の売価を計算すると、一般家庭と事業者で合わせて年間約6兆7525億円分になります。このうち、一般家庭における食品ロスは、1世帯(4人家族)当たり年間 約6万円分(処理費含む)。全世帯で約3兆円分の食品ロスを発生させていると推察されます。

加工業者や流通業者、飲食店、家庭などからごみとして出された食品は、処理工場に運ばれ、多くの自治体では可燃ごみとして焼却処分されます。この運搬から焼却までの過程では多くのCO2が発生するため、食品ロスは環境負荷の面でも問題視されています。

世界には十分な食料を得られていない地域や人々が多く存在します。飢餓と貧困の撲滅を使命に活動している国連WFPが、世界全体を対象に支援している食料の量は年間約420万t。それに対して、日本国内で発生している食品ロスの量は年間約570万t(2019年、農林水産省・環境省)。日本だけで世界の支援量の1.2倍以上の食品ロスを出していることになります。解消されるべきこうしたアンバランスな状況について、先進国で暮らす多くの人々が無自覚なままでいます。

どこで、どれくらい?

食品ロスがどのような場所で、どれくらい発生しているのか。日本の一般家庭と事業者の比率、および事業者の業種別の比率を見てみましょう。

注目すべきは、家庭から発生する食品ロスの割合が全体の半数近いことです。私たち一般消費者の日常生活におけるなにげない行動が、深刻な規模の食品ロスを招いてしまっています。また、事業者については、各業界で固有の発生原因や因習などが存在しています。次は、そうした事業者が抱えている食品ロスの問題について詳しく見ていきましょう。

食品サプライチェーンのなかで発生する食品ロス

食品が生産され、出荷・流通を経て小売店に並び私たちの手元に届くまでに、どのような食品ロスが発生しているのでしょうか。各業界における発生原因について、食品サプライチェーンの上流から下流までを順番に見ていきましょう。

事業系食品ロスのなかでも最も多くの食品ロスを出している製造業。発生原因には規格外品や製造加工時の割れ、欠け、焦げなどの破損・汚損や、サイズの不適合などがありますが、小売業者が欠品、品切れによる販売機会の損失を避けるために製造業者に課している「欠品ペナルティ」と呼ばれる商習慣も、過剰生産を招く一因として問題視されています。こうした食品ロスを招く商習慣の種類や仕組みについては後述します。

食品卸売・小売業界では、欠品、品切れによる販売機会の損失を避けるために、在庫を多く保有する在庫余剰や、商品自体の品質には問題のないダンボールなどの外装の傷みや汚れの破損・汚損による廃棄が食品ロスの原因になっています。

外食産業における食品ロスは、提供量が多すぎたことでの客の食べ残しや、客数の予測・需要見込みを誤ったことで料理を作りすぎてしまう調理余剰、発注ミスなどが主な原因とされています。

家庭で発生する食品ロスは、食べ残しや直接廃棄、調理の際の過剰な除去などが原因になります。また、賞味期限(おいしさが保たれる目安)と消費期限(安全に食べられる期限)の違いを知らずに、賞味期限切れの食品を廃棄してしまっている例も、食品ロスにカウントされます。

食品ロスの連鎖を生む商習慣

先述したように、食品サプライチェーンにおいては業種間で定着している商習慣が存在します。そして、それが無用な食品の生産・供給を生む原因になっているのです。問題視されている主な商習慣である「3分の1ルール」と「欠品ペナルティ」について解説します。

「3分の1ルール」とは賞味期限の3分の1の期間までに製造業者が小売業者に納品しなければならず、小売り業者は次の3分の1までに販売しきらないといけないという商習慣です。具体的には、賞味期間を3等分し、初めの3分の1までが納品期限、次の3分の2までが販売期限になります。法律ではないため、守らないことで罰則が課されることはありませんが、順守しない製造業者は小売業者と取引が続けられなくなるという暗黙の了解があります。

近年では農林水産省や食品業界全体の働きかけによって緩和に向かっており、2012年10月からは菓子や飲料に関しては納品期限が3分の1から2分の1へと延びるなど、改善の動きが見られています。

「欠品ペナルティ」は、食品製造業者が、小売店から発注を受けた数量分の納品ができなかった場合に、小売店に対して補償金を支払うなどの罰則のことです。何らかの理由で製造が間に合わない、売れ行きが予想以上に大きく在庫がなくなった場合などに発生します。こうした事態を避けるために、製造業者は実際の需要を上回る量の生産を続けざるを得ず、結果として食品ロスを生み出してしまっています。実際には、罰金の支払いを課せられることよりも、取引停止を言い渡されることの方が多いという声もあります。

データの利活用で描く効率的な消費サイクル

ここまで、食品ロスが発生する背景について詳しく見てきました。状況を改善していくためには、個人や各企業による行動も大切ですが、さまざまな利害関係者同士が複雑に絡み合う経済活動においては、新たな連携の仕組みを構築することが重要です。

鍵となるのは「データの利活用」。IT技術の飛躍的な進化によって収集可能なデータの範囲は拡大し、活用の仕方も精緻化・高度化しています。それによって実現する新たなネットワークやソリューションが、食品ロスを大量に生み出す社会構造を変えてくれる可能性があります。

例えば、外食産業全体で各社のデータが共有されることで、AIによる正確な来店予測や提供量の指示が実現し、食品ロスの原因そのものをなくすことができるかもしれません。

または、食品の保存状態に対するリスクヘッジを理由に、他国に比べて極端に短く設定されているとされる日本の賞味期限。これも、食品サプライチェーン間で商品の保存状態のデータをリアルタイムで追跡・共有できたとしたら、賞味期限を延ばすことができ、「3分の1ルール」の緩和を合理的に実現できるかもしれません。

垣根を越えたデータの利活用が、どんなかたちで食品ロスの削減に貢献できるのか。OPEN HUBも可能性を探っていきます。

監修者
井出留美
株式会社office 3.11 代表取締役
食品ロス問題ジャーナリスト
博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊、日本ケロッグを経て3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け誕生日を冠した株式会社office 3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力。政府・企業・国際機関・研究機関などのリーダーによる世界的連合Champions 12.3メンバー。著書に『食べものが足りない!』『SDGs時代の食べ方』『捨てないパン屋の挑戦』(第68回青少年読書感想文全国コンクール課題図書)『食料危機』『あるものでまかなう生活』『捨てられる食べものたち』『「食品ロス」をなくしたら1か月5,000円の得!』『賞味期限のウソ』ほか、監修書に『食品ロスの大研究』ほか。食品ロスを全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして第2回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人「オーサーアワード2018」/令和2年度 食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。

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