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2024.04.20(Sat)
目次
Xtrepreneur(クロストレプレナー)とは、アントレプレナーでもイントレプレナーでもない、次世代を担う新しく多様な共創家たちを表す言葉です。企業が積み重ねてきた価値をかけ合わせ、一社が生み出すよりも何倍も大きなインパクトを生み出していく。本アワードは、そんなプロジェクトに光を当てるもので、「業界を超えた2社以上がアセットを持ち寄っていること」「社会課題へインパクトをもたらすこと」「日本独自かつ、世界に発信できること」が応募の要件となっています。
授賞式の冒頭、主催者を代表して挨拶に立ったForbes JAPAN編集長の藤吉雅春氏は、過去3回の開催を通じて実感してきたアワードの本質を、こんな言葉で表現しました。

「一言で言うと、“わらしべ長者”だなと思いました。出会いが新たな価値をつくっていく。小さな力が、出会いによってとても大きくなっていく。そのゴールは社会課題の解決であり、まさにこのアワードが新しい社会をつくっていくのだと実感しました」
続いて、共催するNTTドコモビジネスの代表取締役副社長・工藤晶子が登壇。NTTドコモビジネスが、2023年の第1回からこのアワードに参画し続ける理由を、次のように述べました。

「社会や産業を取り巻く課題が複雑化するなかでは、一社、一組織では解決できない課題が非常に多く、複数の企業や組織が集まって初めて解決できるテーマが増えています。だからこそ、企業や業界、組織の垣根を超えて、それぞれの強みや知見をかけ合わせて新しい価値を創出する皆さんの挑戦が、これからの社会にますます重要になってくるのです」
そして受賞者たちへ、「皆さんの挑戦が発展し、共創の連鎖がどんどん大きくなって、より大きな価値を生み出していけるよう、当社も一生懸命ご支援していきたい」とエールを送りました。
後援する経済産業省からは、イノベーション・環境局長の菊川人吾氏が挨拶に立ちました。直前まで熊本の災害対応にあたっていたことを明かし、被災地ではスタートアップも加わった新しい取り組みが始まっていることを紹介しました。

「未来の社会課題を解決することも大事ですが、今、目の前にある課題や災害にも対応していく。今ある危機と、将来起こりうる危機の双方に思いを馳せながら、どう解決していくかを皆さんと議論していきたい」と、共創への期待を語りました。
続いて、いよいよ6部門の表彰です。最初のリジェネレーション賞は、あらゆる廃棄物を炭化して素材に変える循環ソリューション「.Garbon」(Gab、大木工藝、共和ライフテクノ、オカムラ)が受賞。これまで分別が難しく、焼却・埋め立てされてきた混合廃棄物を炭化し、素材と生まれ変わらせた実装力が評価されました。

Gab代表取締役の山内萌斗氏は「酸素を入れずに廃棄物を加熱すると、本来CO2になる炭素を固定化できます。その炭素を活用して、人々の暮らしを豊かにする様々な出口を創出していく。その先に、世の中から廃棄物、ゴミという概念がなくなる世界を目指したい」と構想を語りました。
炭化技術を担う大木工藝代表取締役の大木武彦氏は「56年間、廃棄物の炭化に取り組み、様々な大学と共同研究をしてきました。廃プラスチックを炭化すると、PFAS(自然界でほとんど分解されない有機フッ素化合物)の吸着材や電池の電極材といった高機能な製品に生まれ変わります」と、長年にわたり蓄積してきた技術力を披露。老舗の技術と若い構想が結びついた、まさにレガシーのかけ合わせによる受賞です。
メドテック賞は、質感や出血までリアルに再現した3Dクローンモデルで外科手術の訓練を変える「『失敗できる患者』を実装する、日本発・次世代医療支援/教育プラットフォーム」(ミライズウェルメディカルグループ、MEDiDENT、日南)が受賞しました。

プロジェクトの原点について、歯科医師の富田大介氏は「いくら勉強しても、画面の中でシミュレーションしても、最終的には患者さんで実践していくという構造が医療にはあります。だからこそ、リアルな『失敗できる患者』をつくろうという発想が浮かんだのです」と振り返りました。
フードイノベーション賞は、高級寿司ネタ「トリガイ」の種苗生産に挑む共創(チキンクラム、宮城県漁業協同組合女川町支所、宮城県女川町)が受賞。種苗生産とは、養殖のもとになる稚貝(種苗)を人工的に育てる技術のことです。トリガイは天然資源への依存度が高く、安定した種苗生産が長年の課題でした。

チキンクラム代表の長谷川翔亮氏は「二枚貝は環境にとても優しいタンパク源で、その中でもトリガイは可食部分の成長が最も早い。トリガイが世界的なタンパク源になっていけるよう、日々開発を続けています」とその可能性を説明します。また、女川町産業振興課の鈴木涼太氏は「地方の小さな自治体には、行政だけでは解決できない地域課題があります。東日本大震災で多くのことを学び、今回のプロジェクトも、ごく自然に共創という形になっていました」と語り、震災を経た町に根づく共創の文化を印象づけました。
セーフモビリティ賞は、AIによる乱気流予測で航空安全を高める産学連携プロジェクト(BlueWX、ANAホールディングス・全日本空輸、慶應義塾大学)に贈られました。日本上空での高い予測精度を誇る技術は、すでに実運航に導入されています。

BlueWX代表取締役社長の渡辺和成氏は「パイロットが乱気流を避けて飛行することが、どんどん可能になってきています。すでに国内では多数の航空会社に導入いただいており、これから世界中に販売していきます」と自信を見せました。ANAホールディングスの松本紋子氏も「気候変動の影響で、乱気流はますます増えています。それを少しでも削減して、お客様に安心して空の旅を楽しんでいただきたいという思いで始めたプロジェクトです」と、その原点を語ります。
エネルギーソリューション賞は、衛星データ×AIで系統用蓄電所の用地開発を支援する「Deal Techプロジェクト」(WHERE、パワーエックス)が受賞。系統用蓄電所とは、送電網に直接つなぎ、再生可能エネルギーの導入拡大に伴う電力の需給バランスを調整する大型の蓄電池施設のことで、送電線への近接性や地盤条件など要件が多く、用地確保が課題でした。

JAXA発スタートアップ・WHEREの関根ゆたか氏は「宇宙から地球の不動産市場を変えることを目指しています。衛星データと、国や自治体が公開しているオープンデータをかけ合わせ、蓄電所開発を土地探しの段階から支援していきます」と構想を描きます。国産蓄電池を手がけるパワーエックスの高尾渉氏は「蓄電池を売るのではなく、蓄電所として販売し、日本に系統用蓄電所という概念を広めていきたい」と事業への思いを語りました。

デジタルクラフツマンシップ賞は、計算解析と熟練加工技術による次世代自動車構造の共創(Nature Architects、浅野)が受賞しました。Nature Architects代表取締役CEOの須藤海氏は「これまでのような自動車メーカー主導ではなく、ボトムアップでイノベーションを起こしていく必要があります。当社のデジタルエンジニアリング技術と浅野さんのクラフトマンシップの掛け算で、非常に軽量で安全な自動車構造を生み出すことができました」と共創の成果を強調。浅野代表取締役の浅野圭祐氏も「自社単独では気づくことができない、我々独自の強みや可能性に気づく機会になりました」と応じました。

6部門の表彰が終わると、会場の空気が変わります。いよいよ、当日まで明かされていなかったグランプリの発表です。藤吉氏が読み上げたのは、メドテック賞とあわせての受賞となる「失敗できる患者」プロジェクトでした。
大きな拍手に包まれて登壇した富田大介氏は、「本当に驚いています」と声を弾ませます。
「ノミネートされたプロジェクトの皆さんが本当に素晴らしい事業ばかりだったので、そのなかで僕らの名前が挙がったことに驚いています。僕らの技術だけではなく、医療とものづくり、異分野のプロフェッショナルが本気で手を組んだ、その挑戦への評価だと思っています。この構想は本気で医療の未来を変えると信じていますので、世界に向けて社会実装を進めていきたいです」
ものづくり側として参画した日南の猿渡義市氏は、こう振り返ります。
「最初にお話をいただいたときは、本当にそんなものができるのかと思いました。しかし、『思いを形にする』が私たちのポリシー。見た目だけではなく、触ったときの感触や切開したときの感覚までリアルに再現したいという医療者の熱い思いに共感し、本当にたくさんのプロトタイプをつくりました。最近はAIの登場で技術開発がとてつもないスピードで加速しています。こうした技術で社会課題に貢献できることを追求していきたいです」
さらに、ミライズウェルメディカルグループの富田由美子氏は、直前に幼い息子がけがで治療を受けた経験に触れ、「廊下の片隅で、処置が終わるのをひたすら震えながら待っていました。患者の気持ちに寄り添えるリアルな人体模型をより多くの皆様に届けて、その先にいる患者様の安心につなげたい」と語り、会場の共感を集めました。

受賞者全員によるフォトセッションの後、アドバイザリーボードを代表してForbes JAPAN Web編集長の谷本有香氏が総括に立ちました。「回を重ねるごとに審査員の目は厳しくなり、去年よりもっと社会にインパクトがあるものを、という審査になっています。そのなかで、まさに日本から世界に発信したい素晴らしい取り組みをたくさん表彰できたことを、心よりお祝い申し上げます」と受賞者を称えます。
一方で、当日の朝に海外の起業家と交わした会話も紹介しました。「日本はすべてが整っていて完璧で、課題がなかなか見つからない。だから起業家が生まれにくいのではないか、と言われたのです」。日本は「課題先進国」と呼ばれる一方、社会が整っているがゆえに課題が見えにくい。そのうえで谷本氏は、受賞者たちの姿にこそ日本の可能性があるとして、こう締めくくりました。
「目の前にある課題に、一社ではできない取り組みとして多くの皆さんと力を合わせ、共創することで、結果的に大きな社会的インパクトを起こしていく。これが日本ならではの、日本らしいイノベーションの発露の仕方ではないかと思いました」

総括の後は乾杯と歓談の時間となり、グランプリ受賞者と藤吉氏によるトークセッションや、受賞者・関係者が交流するミートアップも行われました。この場での出会いが、次の共創の種になっていくのかもしれません。
出会いが価値を生み、その価値がまた新しい仲間を呼び込んでいく。この日表彰されたプロジェクトは、いずれも一社では到達できなかった地平を、共創によって切りひらいてきたものでした。「OPEN HUB」は、これからもXtrepreneurたちの挑戦を支援していきます。
OPEN HUB
THEME
Xtrepreneur Award
#共創プロジェクトアワード