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New Technologies
2024.01.26(Fri)
目次
――昨今の企業ITを取り巻く環境の変化と情報通信の課題について教えていただけますか。
正岡 毅(以下、正岡):企業の競争力強化に向けてデジタルトランスフォーメーションの有効性が叫ばれるようになり、その実現に向けた一歩として、IT化やネットワーク最適化といったニーズが高まってきました。コロナ禍で接触機会を減らすためにデジタル技術が活用されたこともニーズの高まりを後押ししています。そこで発生している課題がIT人材の不足です。ニーズはあるものの人材を採用できない企業が増えています。これにより3つの問題が生じています。
1つめはクラウド利用の拡大によって加速した経営のスピードに追従できないことです。これは人材がいないせいで、IT環境の見直しがうまくいかないことに起因します。2つ目は、逼迫するトラフィックへの対応です。コロナ禍を境に「Webを介して会議をする」というワークスタイルは急速に定着しました。今やオフィス内にいてもWeb会議システムを利用するケースが多いため、増え続けるトラフィックを解消する手立てが必要です。そして3つ目がセキュリティ対策です。高度・多様化するサイバー攻撃に備え、ゼロトラストへの対応などが急務となっています。
これらの問題を従来のネットワークサービスで解決するためには、高度なスキルを持つIT人材が不可欠です。しかし、先ほども述べたように、そのような人材を採用することは容易ではありません。そこでIT人材のスキルに依存しない、これまでにない新たなネットワークサービスとして「docomo business RINK™」の開発プロジェクトが始動しました。
稲田 遼(以下、稲田):別の側面としてNTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)とNTTドコモが同じ組織になったことで、互いの強みを活かせる初めてのサービスにするという狙いもありました。NTT Comのネットワークとセキュリティ、NTTドコモのモバイルといったそれぞれの強みであるサービスや機能を余すところなくdocomo business RINK™に盛り込むことで、組織一丸となってドコモビジネスの価値を最大化できるサービスに仕上げたかったのです。
――開発にはどのような意気込みで取り組んだのでしょうか。
伊藤 良哉(以下、伊藤):入社以来、10年以上、NTT Comのネットワークサービス開発に携わっています。バックボーンからコントローラーまで、ネットワークのエンドツーエンドを経験してきた私から見ても壮大なプロジェクトだと感じましたね。NTT Comのネットワーク、セキュリティ商材はもとより、NTTドコモのモバイルネットワーク商材をはじめ多様なシステムと連携する新しいネットワークサービスの開発はわくわくする一方、前例のない未知の領域に踏み込むプレッシャーもありました。
森藤 福真(以下、森藤):私は新サービス開発へのアサインをチャンスだと感じました。ネットワークサービスのオーダーはUX観点で改善の余地があると思っていたからです。サービスを契約するお客さまにオーダーシートの記入を強いることを心苦しく感じていたので、この煩雑な処理のウイークポイントをようやく解消できると思い、前向きに取り組むことができました。
開発当初より、紙や人手を介することなくシンプルで使いやすいUIでユーザーにサービスを届けることが重要だと感じていましたので、裏側の大変さを感じさせないような、スピーディかつ簡単に利用できるサービスの開発を意識していました。
こうして誕生したのがNTT Comの「docomo business RINK™」です。ハイブリッドなネットワークとクラウド型セキュリティ機能の一体提供により、ゼロトラストにもとづく安全なIT環境を実現する統合型ネットワークサービスで、IT人材不足解決のための一手となり得る可能性を秘めています。
――docomo business RINK™には従来のネットワークと一線を画す3つのポイントがあると伺っています。
稲田:第1のポイントは、これまで複数のサービス契約が必要だった、インターネットのようなオープン接続とIP-VPNのようなクローズド接続、固定とモバイルのアクセス回線などの機能を1つのサービスの中で提供していることです。また、各種セキュリティ対策についても本プラットフォーム内で一元的に対応可能です。
第2のポイントは、Webポータルからオンデマンドで、ネットワークやセキュリティの新設、機能拡張などが完結できることです。従来のような紙による申し込み、契約手続きが不要になるため、お客様の稼働削減にもつながりますし、UXも大幅に改善されています。
伊藤:最近、Webポータル上で申し込みができるネットワークサービスは増えてきていますが、工事などの物理的な工程は、営業担当と日程調整をしなければならないケースがほとんどです。こうした部分も含めて、すべてWebポータル上で完結できるのは私が知る限りdocomo business RINK™だけです。繰り返しになりますが、紙やExcelベースでのオーダーをお客さまに強いることがなくなったことも、自信を持っておすすめできるポイントになっています。
稲田:第3のポイントが、Webポータルから分単位で帯域を増減できることです。使った分だけの従量課金を採用し、最低利用期間も設けてないため、よりスピーディで柔軟にサービスが利用できるようになっています。たとえば、Web会議を多用する繁忙期には帯域を上げ、通常時は帯域を下げておくといった運用を行えば、利用料金を抑えることもできます。
――サービスリリース後、どのような反響がありましたか。
稲田:NTTドコモとNTT Comが合体したドコモビジネスを象徴する新サービスが登場したという期待感、これがいちばんよく耳にするお客さまの反響だと思います。最初に正岡が申し上げたIT人材の不足から派生したスピード経営に対応できない、Web会議でトラフィックが逼迫する、ゼロトラストへ対応できないといった課題をdocomo business RINK™であればトータルに解決できるため、お客さまの期待はかなり大きいと感じています。
正岡:すでに商談数は1,000件を超えています。大企業層のみならず、中堅中小企業層のお客さまからも引き合いが多い印象ですね。やはり、いままでのネットワークとは違ってWebポータルからさまざまなこと簡単にできるところが少人数のIT部門、ひとり情シスで業務を回しているお客さまに響いていると感じています。
――どういったケーススタディを想定しているのでしょうか。
稲田:主に小売業、建設業のお客さまを想定しています。たとえば、小売業であれば店舗の新規出店でネットワークの新設が必要になった場合、固定アクセス回線は物理的な工事が必須なため開通に時間がかかりました。しかし、docomo business RINK™の5Gモバイルアクセス回線であれば、最短10営業日で開通でき、後々固定アクセス回線が開通すればモバイルアクセス回線をバックアップとして利用することも可能です。
建設業の場合は、固定アクセス回線が引けない期間限定の仮設事務所などを想定しています。これまでは、容量超過による速度制限といった制約の多いモバイル回線を使用していましたが、docomo business RINK™の5Gモバイルアクセス回線は容量無制限のため、ストレスフリーで利用ができます。
正岡:業種を問わず、Web会議のトラフィック逼迫を解消する手段の一つにローカルブレイクアウトがありますが、意外と設定が煩雑です。docomo business RINK™であればTeams、Zoom、WebexといったWeb会議システムの利用頻度に応じて利用帯域が拡張でき、ローカルブレイクアウトもWebポータルのボタンを押すだけで手軽に行えるので、ストレスのないネットワーク環境が実現します。
――これからのアップデートプランを教えてください。
森藤:2024年度の第一四半期を目指して通信品質を保証するギャランティ回線メニューの提供が予定されています。さらにこのギャランティ回線を対象にアプリケーション別に利用状況を可視化できる機能の実装も進めています。また、細かい話ではあるものの、現在のdocomo business RINK™は当社が提供するルーターのみにつながるのですが、今後はお客さまが持ち込んだルーターでも接続できる機能も追加予定です。
以降は、具体的なスケジュールが決まっているわけではないのですが、オフィスのITに限らず、あらゆるフィールドに点在するIoTや、工場のOT など接続できる機器を増やしていく計画です。ネットワークコントローラーがすべての端末を把握し、悪意ある攻撃を受けた場合に、通信を遮断、通知する機能の実装を考えています。
――こうしたアップデートを経て、docomo business RINK™はどのような未来を実現するのでしょうか。構想なども含め、展望をお聞かせください。
伊藤:今検討しているのは、AIと連携し、過去の履歴からトラフィックを分析し、未来の流量を予測することです。AIが状況に応じてユーザー側に帯域を増やした方がいい、減らした方がいいとアドバイスしてくれる未来もそう遠くないと考えています。
ただ構想はいろいろあるものの、当面はサービスの安定性を高めていくことが重要です。トラブルを最小化して安定性を維持するのが、新機能の開発につながると考えています。将来的には、あらゆるITをdocomo business RINK™に集約させ、NTT Comの収益の柱に育て上げたいですね。
稲田:もちろん、NTT Comが掲げる「Smart World(※)」の根幹にdocomo business RINK™を位置づけています。そのためにも、これから2年、3年はお客さまのニーズを的確にとらえたdocomo business RINK™の機能拡充を重ね、お客さまから選んでいただける、愛していただけるサービスに育てていきたいと考えています。ゆくゆくは社内にIT人材がひとり、あるいはゼロであっても誰もがネットワークインフラを意識せずに運用できる領域に踏み込みたいですね。
(※)Smart World
ITを基盤とした多種多様なデータの蓄積・利活用を通じて社会課題の解決、進化したより良い世界をつくる取り組みのこと
森藤:開発エンジニアとして、まずはdocomo business RINK™のネットワークコントローラーで世にあふれる、あらゆる端末を管理してお客さまのIT環境をすべて把握できる状態を目指したいと思っています。将来的には、クラウドやセキュリティといったさまざまなレイヤーのサービスとAPI連携して、ユーザーが望む最適なIT環境を自動的に生成する仕組みを実現できるようになれば、「やりたいことのすべてがdocomo business RINK™のワンプラットフォームで叶う」素晴らしい世界が拓けていくのではないのでしょうか。
正岡: IOWN、Beyond5G、6Gのような最先端と呼ばれる技術は多数ありますが、ビジネスのプラットフォームとなるネットワークに求められることは非常にシンプルです。大容量かつ低遅延、同時接続数が多い、加えて環境の観点から低消費電力であるほどいいネットワークといえます。
企業は当然、この分野に投資したいと考えるわけですが、冒頭に申し上げた通り、IT人材の不足という壁がそこに立ちはだかります。docomo business RINK™はこの壁を乗り越えるために開発されました。私たちが考えるdocomo business RINK™の最終的なゴールは、すべてのITを集約し、AI連携などで人を選ばず誰もが平等に、望み通りの業務環境を実現できるようにすることです。3年後なのか、5年後なのか、もっと先になるのか、今はわかりませんが、ゴールテープを切ることができれば、もっと日本の未来は元気に、明るくなるはずです。
docomo business RINK™の詳細・お問い合わせはこちらから
https://www.ntt.com/business/services/rink.html
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