01
2024.04.20(Sat)
目次
開会の挨拶をしたNTTドコモビジネス スマートヘルスケア推進室長(現在は退職)・久野誠史は、2023年に12社で活動をスタートしたValue Add Femtech Communityが、現在は49社が参加するコミュニティーへと拡大していることを紹介。活動を通じて共創事例が生まれる一方で、認知拡大やマネタイズなど、会員企業が共通して抱える課題も見えてきたと振り返りました。
「フェムテックの認知拡大やマネタイズといった課題解決に向けて、会員企業の皆さんからは、NTTドコモグループが持つ約1億アカウントのdポイント会員基盤を通じたメディア・プロモーション機能、販売チャネルなどへの期待が寄せられています。皆さんの強みとNTTドコモグループのアセットを掛け合わせることで、女性のウェルビーイングを一緒につくっていきたい。今日は、NTTドコモグループのことを知ってもらうとともに、皆さん同士がつながり、コラボレーションが生まれるきっかけにしていただければと思います」(久野)

続いて、一般社団法人メディカル・フェムテック・コンソーシアム 代表理事の青木勇気氏による講演「フェムテックの概況について」が行われました。
メディカル・フェムテック・コンソーシアム(以下、MFC)は、良質なフェムテック製品・サービスを社会に普及させることをミッションとして、事業者と産婦人科専門医が2020年9月に設立した団体です。現在は正会員21社、賛助会員18社(2026年7月23日時点)が参加しており、フェムテックの社会実装を支える制度づくりや政策提言を行っています。
Femtech振興議員連盟や関係省庁との連携を通じて、市場の拡大だけでなく、社会全体で女性の健康課題に向き合うための環境整備を推進してきたことは、実を結びつつあります。2021年に閣議決定された骨太方針に「フェムテック」の記載が実現して以来、現在まで5年連続で国の政策文書に取り上げられているほか、2024年度にMFCの政策委員会が提案した産後ケアに関する提言は「女性活躍・男女共同参画の重点方針2025(女性版骨太の方針2025)」に反映されました。
「生理、不妊治療・妊活、更年期を三本柱として議論してきましたが、直近では医療アクセスの改善に資するフェムテック製品・サービスの開発環境の整備、若い世代への早期アプローチをテーマに議論を進めてきました。経済産業省・文部科学省・厚生労働省の3省に申し入れを行いましたが、文部科学省への申し入れは今回が初めて。現代に合った包括的性教育を施さなければ、望まない形でさまざまな健康課題に直面してしまうという問題意識をお伝えしました」(青木氏)

国内フェムテック・フェムケア市場は2020年の約600億円から毎年約10%成長を続け、2026年度には1,000億円弱規模になる見込みです。健康経営・福利厚生、更年期関連での事業者の増加が目立つ一方で、フェムテック市場に参入していた大手企業の撤退・縮小やスタートアップの資金調達難という状況も続いています。
「市場は拡大傾向にありますが、経済産業省の5年間にわたるフェムテック実証事業が一定の成果を上げたとして終了し、啓発フェーズに移行しています。ただ、フェムテックの社会実装はまだまだ始まったばかりですし、女性活躍が進めば、それに合わせた制度や製品、サービスが必要となります。志を持つ事業者同士で連携し、活動を続けていきましょう」(青木氏)
一人ひとりと、その大切な人に寄り添うヘルスケアへ

NTTドコモ ヘルスケアサービス部長(現在はマーケティングソリューション統括部長)の南部美貴氏は、日々の健康管理から医療機関の受診までを一気通貫で支援する2つのアプリを紹介しました。
「dヘルスケア」は、毎日の歩数や体重、生活週間を記録することができ、「眠気」「気分」「お通じ」「運動」「食事」といった入力データを独自のAIが分析し、ユーザーの体調をスコア化。「免疫力推定」「フレイル推定」を行います。さらに、健康不安の解消・解決に向けた情報提供を行ってユーザーの行動変容を促し、メディカルサービスへの入口を提供します。アプリの利用に応じてdポイントが溜まる仕組みで、提供開始10年を迎え、累計1,800万ダウンロードを突破しています。
一方の「ミナカラ」は、日常的な診療や健康管理をしてくれるオンラインのかかりつけ医アプリです。最短10分、平均30分以内で診察・服薬指導・薬の配送を完結でき、早期受診や重症化予防をサポートします。
「日本は超高齢化社会を迎え、2040年には認知症患者が1000万人、要介護者が800万人に達すると見込まれています。仕事をしながら家族の介護に従事する“ビジネスケアラー”の問題も深刻化する中、特に働く女性への負担は顕著です。スマホを持っているだけでユーザー自身の健康が促進されるだけでなく、介護などに関わる家族の皆さんの支援にもつながってほしいという思いで取り組みを進めています」(南部氏)
サービスを通じて蓄積したデータは、dポイントの会員基盤と組み合わせることで、マーケティング支援や治験サポートなど、新たな価値創出にも活用されています。今後はフェムテック関連検査や遺伝子検査など、生活者が必要な検査に手軽にアクセスできる環境づくりを進めていく方針です。
体験から広がる、女性の健康課題への理解

NTTドコモ プロダクトクリエーション部の近藤菜菜子氏は、2024年からValue Add Femtech Communityの活動に参画。フェムテックに特化したドコモ公式のInstagramアカウントを開設し社内外に情報発信するほか、2025年にはフェムテックに関心のある男女社員、約120名が参加するコミュニティ「fem+(フェムプラス)」を設立しました。
セミナー開催や、就寝中に体内の高温期と低温期のリズムを自動計測するヘルスケアIoTサービス「わたしの温度®」の社内モニター施策などを展開し、フェムテックに関する社員のリテラシーを高めています。
「2025年8月、ドコモグループの社員およびそのご家族の約2,000名が参加したファミリーデーでは生理痛体験や妊婦体験ができるイベントを実施し、コミュニティの輪が男性社員にも広がりました。2026年3月の国際女性デーには社内で初めてフェムテックイベントを開催し、会員企業のサービス・商品を実際に体験してもらいました。男女を問わず、実際に体感することで女性特有の健康課題への関心が高まっていきます。そこに大きな手応えを感じています」(近藤氏)
今後は、Value Add Femtech Communityの参加企業とともに、NTTドコモグループの社員を対象としたテストマーケティングの場の提供や、認知・理解促進のための情報発信、事例づくりなど共創の機会をさらに広げていく考えです。
社員のアクションから広がる、社会課題への取り組み

NTTドコモ サステナビリティ推進室 社会貢献推進担当の上村咲貴氏は、子どもたちの体験格差といった社会課題の解決や、一人ひとりが自分の好きなことを見つけるきっかけづくりを目指す「ドコモ未来プロジェクト」を紹介しました。2025年5月から全国の子ども食堂や児童館などにNTTドコモグループの社員が出向き、プログラミングやデジタルアートなどの体験コンテンツを提供しています。全国37拠点で258回開催、延べ1,721名が参加しました。
東京・葛飾区の「みとちゃん食堂」で開催した「いのち・からだ・思いやりを学ぶ体験プログラム」では、小学生が妊婦ジャケットを着用する体験を実施。「自分の体や命を大切にすること、周りの人にも思いやりを持つことを学んでほしいと企画したプログラムです。みんな楽しそうに体験しながら、妊婦さんの大変さを実感してくれました」(上村氏)
続いて、NTTドコモ サステナビリティ推進室 戦略担当の西絵理香氏は、全国の有志社員1,632名が参加する「サステナアンバサダー」制度を紹介しました。
「サステナアンバサダー」は、社員一人ひとりがサステナビリティを自分ごととして捉え、行動につなげることを目的に、2022年から社内浸透施策としてスタートした取り組みです。社員が社外での体験や学習・社会貢献活動を通じて得た気づきを自社の業務に還元していくことを目指し、他社とサステナビリティ活動を共有する会の開催や、NPO法人などへの社外ダブルワークなどが行われています。
「社会・環境課題の解決は、企業の垣根を超えて取り組むことが重要だと考えています。ぜひご興味があれば一緒にできればと思っています」(西氏)

HerLifeLab株式会社 代表取締役COO大塚響子氏は、NTTドコモと取り組む更年期に特化した統合医療のデジタルプラットフォーム「Vivalle(ビバエル)」の共創事例を紹介しました。
サービス開発の原点となったのは、2022年にHerLifeLabを共同創業した医学研究者オリガ・エリセーバ氏の原体験です。同氏は、43歳で更年期症状を経験。記憶力の低下や関節の痛み、気分の落ち込みに見舞われながらも、適切な支援を受けられず、キャリアにも影響を受けたと言います。その経験が、同じ思いをする女性を減らしたいという同社のミッションにつながっています。
更年期障害を抱える女性は国内約500万人いる一方、専門ケアを受けられる人はわずか1%。その背景には専門医の不足や、診療時間の確保が難しいという構造的な課題があります。こうした現実に対し、「Vivalle」は、LINEを活用したAIチャット相談やオンライン診療の受診までを支援しています。
経済産業省のフェムテック支援事業としてNTTドコモ・NTTドコモCS社員向けに実施したプログラムでは、参加者の約90%が健康課題による仕事のパフォーマンスへの影響を自覚していることが判明。「Vivalle」を活用してもらい2カ月間伴走支援した結果、更年期症状スコアは92%の参加者で改善し、抑うつスコアも68%が改善。仕事ぶりの自己評価も深刻層の70%で向上が見られました。
「『健康課題が仕事に影響している』と感じている人がこれだけ多いということは、深刻な状態の方が潜在的にいるということです。こうした現実を企業の皆さんに知っていただき、何ができるかを一緒に考えていただきたい。年齢を問わず女性たちがチャレンジし続けられる社会を創れるよう、一緒に取り組んでいけたらうれしいです」(大塚氏)
続いて、Value Add Femtech Communityに参画する会員企業3社が、それぞれ取り組みやサービスを紹介しました。

株式会社メディカルリテラシーは、微量な血液で女性ホルモン値を可視化する検査キット「ホルモンバランス パスポート」を軸に、医師監修のWeb問診、検査を入口とした企業向け更年期ケアサービスを展開。内科・婦人科の臨床医チームが監修し、科学的根拠に基づいて適切な婦人科クリニックへつなぐ体制を整えています。
代表取締役の小林秀平氏は、「多くの女性から聞かれた『つらさを我慢してしまう』というリアルな悩みと、婦人科系・循環器系学会の医師たちの『女性が適切な医療にたどり着いてほしい』という切実な声がサービス開発のきっかけでした。適切な医療にアクセスして我慢をなくすことを、これからも広めていきたいと思います」と語りました。

TOPPAN株式会社 情報ソリューションBU ライフデザイン事業開発部の名和成明氏は、「わたし新発見プログラム®」というサービスを紹介しました。
このサービスは、ウエアラブルデバイス「わたしの温度®」を着用して女性ホルモンによる周期的な体調変化を可視化し、動画研修や医療相談を組み合わせて最適な対処法と行動パターンを見つけることを支援する研修プログラムです。「つけて寝るだけ」で測れる利便性を活かし、すべての女性がライフスタイルに合わせて、無理なく自身の健康状態と向き合える仕組みとなっています。
「企業にとっては人的資本投資が組織活性化や生産性向上を生み出します。女性が安定して活躍できる社会のために、これからも導入企業を広げていきたいと思います」(名和氏)

株式会社TRULYは、代表取締役CEO・二宮未摩子氏が2019年に創業したスタートアップです。「更年期を、いい変化のチャンスに。」をビジョンに掲げ、ホルモン検査、専門家チャット相談、法人向け健康経営支援など5事業を展開。20名以上の専門家チームと、更年期世代のリアルな声を深くすくい上げるインサイト力を武器に、100社以上との協業実績を持ちます。
「TRULYは7年間、更年期世代の方々と継続的な関係を築き、AIや一般的なアンケートでは拾えないリアルなインサイトを蓄積してきました。この生活者接点を活かし、企業の皆さまと共創しながら、本当に必要とされる商品・サービスを生み出していく機会をご一緒できれば、うれしく思います。」(二宮氏)
イベントの最後に行われた会員交流会では、業種の垣根を超えて、更年期ケアや生理・妊活、プレコンセプションケアなど多様なテーマについて参加者同士が語り合いました。
NTTドコモビジネス スマートヘルスケア推進室 鵜飼耕一郎は閉会に際して、次のように述べました。
「今日のテーマは、皆さまのサービスを知ること、NTTドコモグループのことを深く知っていただくことです。NTTドコモグループとの連携だけでなく、皆さま同士のコラボレーションの可能性も、今日の機会をきっかけに思い描いていただければと思います」
「お互いを知る」ことから始まった今回のイベントは、Value Add Femtech Communityの会員企業が持つ多様な強みとNTTドコモグループのアセットが掛け合わさることで、新たな共創のはじまりを予感させる場となりました。これからもValue Add Femtech Communityは、イベントやメディアを通じた情報発信により、フェムテック領域の企業の輪をさらに広げていきます。ぜひ、今後の活動にご期待ください。
OPEN HUB
THEME
Co-Create the Future
#共創