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2026.08.21(Fri)

移動も、探す手間も減らす。デジタルツインで変わる建設・施設管理の現場 ─「Cupix Experience 2026 in JAPAN」ウェビナーレポート

建設・施設管理の現場では、施工進捗管理や点検業務の人手不足、移動工数の増大、熟練者依存といった課題が深刻化しています。そうした中で注目されているのが、360°カメラやドローンで「誰でも簡単」に「現場を撮影・共有」できるデジタルツインプラットフォームです。本レポートでは、ウェビナー「Cupix Experience 2026 in JAPAN」で行われた、NTTドコモビジネスの牧内章浩によるCupixWorksの紹介と、Cupixのジョン・ユンオク氏による活用事例・最新バージョン「Cupix v5 Parallax」の解説を紹介します。

目次


    建設・施設管理DXを支えるデジタルツインの現在地

    ─はじめにNTTドコモビジネスの牧内章浩は、建設・施設管理の現場で生じている課題を整理したうえで、CupixWorksがそれらをどのように解決し得るのかを紹介しました。

    牧内章浩│NTTドコモビジネス プラットフォームサービス本部 5G&IoTサービス部第二サービス部門第四グループ第二チーム

    建設業界では、人手不足や技能労働者の高齢化が大きな課題となっています。現地で現物を確認・判断することを重視する業務特性ゆえの長時間労働や、熟練者に依存した品質確保の懸念も多くの企業が抱えています。

    一方、お客様へのヒアリングでは「協力会社を含めた施工進捗の把握や、出来高管理に時間を取られている」という声が寄せられています。現場が遠方で複数施設にわたり、移動だけで1日が終わってしまうことも珍しくありません。

    現場へ足を運ぶ回数を減らすため、写真を撮影して事務所で確認できるようにしているものの、その写真がいつ、どの現場を撮ったものなのかを整理・管理する必要があり、かえって作業負担になっているという声もあります。

    施設・設備管理業界も同様です。点検時に写真を撮ったとしても、その時点の状況しかわからず、過去との時系列での比較・評価は困難です。必要な箇所が十分に撮影されていない場合もあり、「結局、再確認が必要になる」といった課題も聞かれます。また、点検動線や資材の搬入動線を事前に確認しようとしても、「図面が古すぎる」「思いがけない機材の残置によって想定どおりに作業や搬入ができない」といった問題に直面してしまいます。

    これらの課題解決で求められるのが、遠隔から、誰でも簡単に、現場を確認できる仕組みであり、その実現手段として注目されているのが「デジタルツイン」です。

    そこでフォーカスするのが、Cupix社が開発した「CupixWorks」です。米国の建設テクノロジーメディア「Connected World」が選定する「Constructech Top Products 2022」を受賞したデジタルツインプラットフォームで、現在、NTTドコモビジネスが同社の日本総代理店として提供をしております。

    CupixWorksは、大きく3つの特徴を備えています。

    1つ目は、簡単な撮影。360°カメラを持ち歩くだけで現場を撮影できます。ドローンの撮影データをインポートし、モデリングツールを別途用意しなくても点群やオルソ画像を生成することも可能です。

    2つ目は、パノラマビューと点群の生成。1回の撮影で、Googleストリートビューのようなパノラマビュー(3Dウォークスルー)と点群(3Dドールハウス)を同時に生成し、自分視点と鳥の目視点の双方で空間情報を確認できます。なお、ウォークスルーはアップロードからおよそ2〜3時間、ドールハウスは半日程度で生成されます。

    3つ目は、BIMデータとの比較や連携。生成したデータは、必要に応じてBIMソフトと連携して、データの比較や重ね合わせを行うことが可能です。施工スケジュールと連動した施工進捗の自動判定や計測もできます。

    CupixWorksは360°カメラの撮影データから、BIMソフトとも連携可能な2種類のデータを生成できます

    CupixWorksのBIMデータ連携機能

    360°カメラの撮影データから生成される3DモデルにBIMデータや図面を連携することが可能。施工状況の見える化、過去の施工状況の確認、設計データとの整合など、進捗管理の効率化・高度化に寄与します。

    • 撮影データとBIMデータを横並びで比較できるBIMコンペア機能により、最新データと過去の撮影データを並べて確認し、建物状況の時系列変化を把握できます。
    • 透過表示にも対応しているため、例えば埋設後の配管状況を確認したい場合でも、壁の中の状態を把握できます。
    • モデルデータに図面データを重ねて透過表示できるため、必要設備の設置状況なども、モデルと図面を照合しながら確認できます。

    建設現場でのデジタルツイン活用事例

    実際の建設現場におけるデジタルツインの活用事例として、竹中工務店の取り組みを紹介します。同社は、都内のオフィスビル建替プロジェクトにて2025年夏頃からCupixWorksを利用してきました。

    背景にあったのは、次のような課題です。

    所長や現場の全体管理者は、出張などで現場を離れる際、遠隔確認用の社内ツールに登録された写真で状況を把握していました。しかし、必要な箇所が写っていないことも多く、正確な進捗確認が困難でした。

    また、建築・設備の担当者は、作業者から連絡や相談を受けるたび、事務所と現場を頻繁に往復していました。協力会社との施工進捗の打ち合わせでは各社の認識にずれが生じることもあり、打ち合わせ後に再度現地で確認し合うなど、多くの時間と労力を要していました。

    これらの稼働についてアンケートで月別工数を確認したところ、月間工数の約2〜3割を占めていたとのことです。

    こうした業務の効率化を図るため、同社はCupixWorksを導入しました。

    利用方法は極めてシンプルです。日々の現場見回りの一環として360°カメラで撮影するだけで、必要なデータが生成されます。これにより、それぞれの立場で業務に大きな変化が生まれました。

    所長や全体管理者は、事務所や外出先からでも現場の状況を容易に確認できるようになりました。煩雑な写真フォルダの探索作業からも解放され、情報確認を効率化しています。

    建築担当者は、現場作業が工程表どおりに進んでいるか、在宅勤務からでも把握できるようになりました。また、現地塗装色のカラースキーム不整合などにも早期に気付くことができ、生産性と品質管理の向上に寄与しています。

    設備担当者は、協力会社とのミーティング時に、事務所にいても同じデータを見ながら状況を共有・確認できるようになりました。これにより、施工進捗状況の認識合わせも容易になりました。

    現場見回り業務にあわせて360°カメラで撮影し、そのデータをもって情報共有やコミュニケーションを行いました

    施工進捗確認における稼働削減効果

    検証前後の月間工数を比較した結果、延床面積約26,000㎡のオフィスの新築プロジェクトにおいて、月間約64時間(年間約769時間相当)の業務効率化の効果が確認されました。 
    ・所長/全体管理者:26.3時間(54%)削減
    ・建築担当者:17.8時間(29%)削減
    ・設備担当者:20時間(25%)削減

    さらに同社は、撮影作業の効率化や撮影データの網羅性向上の観点から、犬型ロボットによるCupixWorks撮影についても検証。移動速度やルートが均一になり、よりブレの少ない写真撮影ができることを確認。今後も、CupixWorksを活用した課題解決を進めていく考えです。

    現場記録をAIで活用する、デジタルツインの次なる展開

    ウェビナー後半では、Cupixのジョン・ユンオク氏が、点検データと現場映像を結びつける活用事例と、AI連携を強化した最新バージョン「Cupix v5 Parallax」について説明しました。

    ジョン・ユンオク(Jasper Jeong)氏│Cupix inc. Biz. Dev. 2(Japan) 日本事業部部長

    点検報告書はあるものの、それが現場のどの場所を示しているのか確認に手間取った経験はないでしょうか。今回は、そうした点検データと現場映像をCupixWorksで結びつけた事例を紹介します。

    取り上げるのは、海外の大手エネルギー設備メーカーにおける取り組みです。同社は、石油・ガス、発電、データセンターなどで使われる大型設備を製造しており、顧客は100カ国以上に広がり、設置台数は17,000台を超えます。これらをすべて現地で確認することは現実的ではなく、多くの場合、報告書や写真を基に遠隔で判断しています。この事業規模の大きさが、そのまま管理の難しさにつながっていました。

    最大の課題は、点検業務で二つの作業が分断されていたことです。一つは、担当者がタブレットのチェックリストに沿って点検し、データを記録する作業。もう一つは、別の担当者が現場を360°で撮影する作業です。例えば「3号機の圧縮機で振動異常」と記録されていても、それが映像のどの位置に当たるのかは、人が探して印を付ける必要がありました。つまり、点検データと映像の位置合わせをすべて手作業で行っていたのです。

    こうした手作業の積み重ねは「遠隔地のエンジニアが現場状況をすぐに把握できず、工具や部品の準備が遅れる」「データと映像の紐づけに毎年数百時間を要する」など、大きな非効率を生んでいました。さらに、設備は20年以上使用されるため、時間の経過とともに実態と記録のずれが広がり、予防保全も難しくなります。一見小さな作業負担が、時間やコストだけでなく、保守品質の低下にもつながってしまうのです。

    そこで、同社はCupixWorksを導入しました。点検時に360°カメラで撮影しながら、点検データと写真を同時に収集します。収集したデータをアップロードすると、現場の不具合やメモが、図面および3D上の位置に自動で紐づきます。例えば「2階ポンプ室のバルブから水漏れ」と記録すると、その場所が図面と3D上にピンのように表示されます。これにより、管理者や保守担当者は、「何が問題か」と「どこで起きているか」を一体で把握し、顧客と共有できるようになりました。

    導入後は、全員が同じ360°映像を見ながら状況を確認できるため、認識のずれが減りました。重要な場所へワンクリックで移動できるようになり、会議時間はおよそ半分に短縮されています。遠隔でも現場と同じ情報を確認できるため、現地訪問回数は約75%減少しました。さらに、いつ・どこで・何を行ったかを映像で残せるため、判断や対応を場所と紐づけて記録できます。点検から確認、記録までの手間を減らし、対応の迅速化と記録の確実性を高めたことが、この取り組みの大きな価値です。

    CupixWorksでデジタルツインを実現し、問題とその場所が一致するようになりました

    Cupix v5 Parallaxが体現する「デジタルツイン×AI連携」

    CupixWorksは、さらなる進化を遂げようとしています。その方向を示すのが、最新バージョンの「Cupix v5 Parallax」です。

    Parallaxの基本的な考え方は、現場記録の活用を「人が探す」ものから「AIが見つける」ものに変えることにあります。

    従来は写真を撮影し、図面と照合しながら、人が必要な情報を探す必要がありました。CupixWorksも例外ではなく、360°映像から3D記録を作成する仕組みとして活用されてきたものの、その記録を読み解くのは人の役割でした。

    これに対してParallaxでは、記録の中から必要な情報をAIが抽出します。従来の「読む3D記録」から、「尋ねれば答える仕組み」へ進化させることが、Parallaxの出発点です。

    Parallaxが現場にもたらす価値は、大きく「気づく」「合わせる」「守る」の3点です。

    「気づく(Detect)」では、工程の遅れ、品質上の問題、安全上の懸念を、重大なトラブルになる前にAIが検知して通知します。「合わせる(Align)」では、図面や発注内容と実際の現場を重ね合わせ、差異をその場で確認できます。「守る(Protect)」では、いつ・どこで撮影したかを記録として残すことで、後日の認識違いや、「言った・言わない」のトラブルを防ぎます。Parallaxは、単体の製品から現場全体を支えるプラットフォームへと進化しています。

    「尋ねれば答える仕組み」を作ることで、「気づく」「合わせる」「守る」という3つの価値を現場にもたらします

    Parallaxの主要機能

    The Gen6 SLAM Engine
    通常の360°歩行撮影を、「何が写っているか」まで把握できる3D記録に変換します。壁やダクトなどの現場要素を自動で識別・分類し、暗所や狭所、ブレのある映像にも対応します。将来的にはサビ、水漏れ、ひび割れなどの発生場所や規模をタグで通知する機能も実装予定です。

    Capture Intelligence
    撮影データの処理過程で、AIが内容を自動で読み取り、現場情報を整理します。現場状況の要約、安全上の懸念箇所の早期抽出、部屋ごとの施工進捗の分類などに対応。例えば消火器の場所を確認したい場合も、指定すれば3D空間内から対象を探し出し、その位置を示します。目的物をAIが検出する「PixGenie」は、現在約9割の正答率を実現しており、今後さらなる精度向上が見込まれています。

    Compass & MCP
    Parallaxのさまざまな機能に対して、Compassは自然な言葉で質問できる仕組みを提供します。例えば「3階の未対応の安全項目は?」と尋ねると、根拠を伴う回答が返り、関連する写真や図面にもすぐにアクセスできます。そしてMCPは、ClaudeやCopilotなど外部AIと連携し、AI自身が現場データを読み取り、活用できるようにする機能です。

    TwinField
    スマートフォンがあれば、現場で気づいたことを即時に記録・管理できます。実際の現場と図面(BIM)を重ね合わせ、差異のある箇所を3D空間上にピンで記録することが可能。現実の風景に図面を重ねて表示するAR機能にも対応しました。

    AssetAtlas
    建物の運用・維持管理を支援します。すべての設備を、実際の設置場所と、その時点の状態を示す360°記録に紐づけます。設備一覧表から3D空間や図面上の位置へ直接アクセスでき、点検写真、関連書類、状態履歴も一元管理できます。サビや水漏れなどの変化も時系列で把握できるため、問題の早期発見と予防保全に役立ちます。

    BIM Timeline & SiteInsights
    従来のBIMでは、「何を・どこに」は把握できても、「いつ」までは十分に管理できませんでした。そこでBIM Timelineは、BIMに時間軸を加えます。日付を選ぶと、その時点の計画と実際の現場を並べて比較でき、進捗や遅れをひと目で確認できます。さらにSiteInsightsは、360°歩行撮影に加え、ドローンやレーザースキャンのデータからも進捗を読み取れるようにします。

    BluePrint
    これまで分散して管理されがちだったデータを、建物、階、作業エリアといった実際の構成に沿って整理します。複数の建物をプロジェクト単位で管理できるため、大規模現場や複数棟の運用にも対応しやすくなります。また、位置情報の基準を統一することで、設計ファイルと撮影データを正確に重ね合わせ、建設から運用まで一貫して記録を活用することが可能となります。

    Parallaxは引き続き多彩なアップデートを予定しています。現場の状況を迅速かつ正確に把握し、そのまま次の一手へとつなげていく――それこそが、Cupixが目指している「デジタルツイン×AI連携」の世界です。

    ウェビナーでも言及されたように、建設・施設管理の現場では、限られた人員で多くの情報を確認し、正確に判断することが求められています。だからこそ、現場をデジタルで記録し、関係者が同じ情報を共有できる仕組みづくりが重要になります。NTTドコモビジネスは、CupixWorksの提供を通じて、現場確認や進捗管理、施設管理の効率化を支え、建設・施設管理DXの実現に貢献していきます。

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