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2024.04.20(Sat)
目次
――バックオフィス業務のアウトソーシングは海外でのオフショアが盛んでしたが、いまはどういった状況になっているのでしょうか。
永井康幸氏(以下、永井氏):1990年代から人件費の安い中国を中心とした海外でのオフショアBPOが盛んでしたが、近年は人件費上昇や地政学的リスク、円安という背景もあって、国内回帰を検討する動きも見られるようになっています。ただ、国内でも2040年に労働人口が1000万人以上減少すると予測*されるなど人材不足は深刻で、業務継続性の確保が重要な経営課題になっています。そこで、AIやRPAなどのツールを活用して省人化を図りつつ、バックオフィス業務を変革しようという機運が高まっています。BPOは業務変革を実現する有力な選択肢の1つです。

* 国立社会保障・人口問題研究所が2023年4月に発表した日本の将来推計人口(令和5年推計)より
――業務の標準化や共通化は、進んでいると言えるのでしょうか?
永井氏:標準化・共通化は長年の重要テーマですが、なかなか進んでいないのが現状です。ITを導入すれば解決するという問題ではなく、業務の細かい部分に立ち入った変革が求められるからです。例えば、拠点ごとの「承認プロセス」「例外処理」「責任分担」などがバラバラ、属人化していて不明瞭というケースは多い。そうした既存業務を標準化できるのか。できるとすれば、どのように標準化すべきか――。アウトソーシングを検討する際に必ず直面する課題ですが、その判断は簡単ではありません。
さらに、その業務を支えてきた会社や部門にどんなメリットがあるのかが十分に共有されていない場合、現場の賛同を得ながら取り組んでいくのが非常に難しくなります。
一方で、請求処理や給与計算業務を標準化してデータを一元化し、迅速に経営判断に生かすことが競争力の向上につながります。拠点やビジネスユニットごとに業務が分かれたままでは、「どの商品が売れているのか」「地域ごとの特徴は何か」といった、管理会計に必要な情報が十分に見えてこないため、非常に大きな課題です。
――バックオフィスBPOに対するお客さまのニーズの変化はありますか?
永野卓巳(以下、永野):DXの広がりによって、多くの企業で相当の業務改善が進んだと思いますが、AIを使って一部のプロセスを自動化する、あるいは業務の品質・精度向上を目指すなど、もう一段の生産性向上が求められています。お客さまのBPOへの向き合い方も変化しています。従来はもっぱら低コストが求められましたが、最近は、経営課題解決につながる価値創出や意思決定のためのデータ利活用が期待されるケースが増えています。

――標準化や共通化が進みにくいという壁を突破するためのアプローチはあるのでしょうか。
末永義博(以下、末永):各拠点の業務プロセスが異なるのは、現場の方が自分たちでやり方を工夫して事業を支えてきたからです。そういった業務のやり方を変えて共通化するのは容易ではなく、経営トップの意思決定と関与は欠かせません。その上で、小規模な業務の共通化によって成功体験を積み重ねていき、現場の納得感を醸成していくことが重要です。
小林千華氏(以下、小林氏):経営トップが明確なメッセージを発信する企業ほど、BPO導入がスムーズに進みますし、運用フェーズに入ってから収穫できる効果も大きくなります。ただ、グループ企業内でも、本社と小会社では基幹システムの導入状況や成熟度が異なるケースもあるため、現状業務(As-Is)をそのまま引き受けるだけではなく、AIの活用を前提に、システム計画も含めた業務のあるべき姿(To-Be)をご提案するケースが増えています。BPOとシステムの両方を組み合わせた付加価値提案が、今まさに求められています。
永井氏:AI活用の広がりは、大きなチャンスだと言えます。いま多くのビジネスパーソンがAIの力を認識し、業務のAI対応は避けて通れないと考えているのではないでしょうか。AI活用を前提にすると、単に既存業務にAIを当てはめるのではなく、最初から業務をどう標準化し、どこまで共通化し、どの領域をSSC(シェアードサービスセンター)やBPOに移すべきかを設計することが重要になります。部門や拠点ごとの業務差異を可視化し、標準化できる領域と個社固有で残すべき領域を切り分けたうえで、段階的にSSCやBPOにつなげる。そのようなアプローチが現実的だと考えます。AIによる業務変革投資も、成長投資・生産性向上投資として説明しやすい環境になりつつあります。
永野:私たちが「デジタルBPO」という考え方を打ち出した背景にもAIがあります。AIの登場は、企業変革を進める絶好の機会として、インターネットや動画配信が登場した時と同じくらい大きなインパクトだと感じています。
――標準化や共通化に向けて、どういった進め方があるのでしょうか?
永井氏:アプローチとしては、業務を集約した後で標準化を進める方法と、先に各拠点で標準化を行ってから集約する方法の2つがあります。ただ先ほど申し上げたように、最近は、システム統合やAIの活用など、「仕組み」を先に議論するケースが増えています。プロセスがバラバラなまま集約しても標準化するのは難しいので、先にプロセスを設計し集約するのです。今後は、AIを前提としてどこまで業務を変えられるのか、新しいAIをどのように取り込み続けるのかという視点で業務を集約し、BPO活用を考える流れになっていくでしょう。
――「共通化できる業務」と「残すべき業務」を判断する際、実際にはどのような観点で整理しているのでしょうか。
永野:最終的な判断基準は、「会社全体の価値をどう最大化するか」という視点に行き着くと思います。そのために自前プロセスを残したほうがいいかもしれませんし、BPOが望ましいかもしれません。BPOを導入する場合には、どの業務を外部化するか、どのようなツールを採用するかといった具体的なアプローチを検討し、BPOを活用した業務変革プロジェクトに進みます。近年では、企業グループ内にとどまらず、業界全体で共通化を図る新たな動きも始まっています。
末永:加えて、第三者の視点も有効です。私たちのようなBPOパートナーによる客観的な提案により、後ろ向きだった関係者が受け入れてくれる場合もあります。実際、お客さまからそうした提案を求められるケースが多くあります。

――業界横断型BPOは、競合企業同士が、いわば“相乗り”するサービスですが、このようなBPOは増えつつあるのでしょうか。
永井氏:競合する複数企業の協力が前提なので、ハードルは高いと言えます。とはいえ、AIの進化に加え、データ連携やプロセス標準化の手法も進んだことで、特定領域の業務プラットフォームを構築しやすくなったことは確かです。これをBPO事業者が担うケースもありますし、こうしたサービスが広がっていく可能性は十分あると思います。
小林氏:例えば、NTTデータが13の地方銀行向けに提供している地銀共同センターは、IT領域がメインの共助モデルです。こうした業界横断的な共同利用型ITサービスは以前からありました。最近では、システム領域だけでなく、業務領域についても改善を進めるフェーズに入ってきています。
――実際に業界横断型BPOは実現しているのでしょうか。
小林氏:大手電力会社向けに提供する業界横断型BPOの事例をご紹介します。業務内容は顧客接点の窓口で、有事の際に要員をシェアリングしながら効率的な運用をできるようにしています。2拠点で運営しており、青森拠点は大手電力会社9社向けに受電対応、金沢拠点は10社向けにチャット対応を担います。台風などの災害時には停電が発生することがあり、電力会社に多くの問い合わせが寄せられます。これに対応するために、各社がピーク時を想定した人員を確保するのは難しい。そこで、ある電力会社で災害対応が必要になった際に、他社のオペレーターも応援に入り、人員をシフトして対応します。

――電力業界で共同利用型のBPOセンターが生まれたきっかけは、なんだったのでしょうか。
小林氏:2010年代に電力事業を取り巻く法的、制度的な枠組みが変化する中で、旧一般電気事業者と呼ばれる大手電力会社はこれまで以上のコスト削減を求められるようになりました。特に、2020年の送配電制度改正を契機に、大手電力各社が個別に対応するのではなく、業界全体として電話対応を共通化する流れが生まれたのです。当社はもともと、中部電力向けのBPOで実績がありました。その中部電力が他社にも呼び掛けて、共同センターの利用が拡大しました。
青森拠点の受電システムなどは、各社が従来から使っていた仕組みを引き継いでおり、業務とITのすべてを共通化したわけではないのですが、人材を融通する仕組みによって効率的な運用を可能にしています。
――業界横断型BPOの可能性をどのように見ていますか。
永井氏:素晴らしいモデルだと思います。電力業界に限らず、「自社の情報を競合に共有したくない」といった声は強くなりがちです。ピーク対応という共通課題があり、その価値を全社が共有できたことが大きかったのでしょう。
業界横断型で共通化できる可能性のある非競争領域の業務は、制度差・競争優位性への影響が比較的小さい領域、例えば、定型的な債権債務管理、間接材購買、給与関連の一部業務などでしょう。各社の既存業務システムを共通プロセスに載せるのは簡単ではありませんが、複雑性を吸収するAIやITの技術も進化しており、各社固有の仕組みを維持したまま共通化できる可能性が広がっています。もちろん、その仕組みを構築するための業務設計やトランジションコストは必要です。ただし、AIを前提とした共通化を進め、設計と移行を適切に行えば、将来的なコスト最適化につながる可能性があります。

――業界横断型BPOを成功させるポイントはありますか?
末永:業界横断型BPOをさまざまな領域へ拡大させるには、業務プロセス共通化による効率と、各社の使い勝手とを両立させる仕組みが重要になります。言い換えれば、全体最適を土台にしながら、各社が固有に必要とする部分もきちんと残す、というバランスです。ベーシックな機能はできるだけ共通化して、全体最適化を目指す。その基盤の上に個社の独自性を載せるという、「2階建て」のイメージです。場合によっては、BPOへの移行に伴い、各社には従来の業務やIT機能の取捨選択が必要になるかもしれません。
永野:どの業務領域ならライバル同士が協力できるか、価値を創出することができるか。戦略的な意思決定が求められるだけに、緻密な検討はもちろんですが、トップレベルでの合意も必要です。その際、私たちBPO事業者が、企業と企業をつなぐハブのような役割を担うこともできると思っています。

――最後に、企業のパートナーとしてバックオフィス変革を担うBPO事業者の役割について、皆さんのお考えをお聞かせください。
永井氏:国内での人材不足の影響もあり、BPOのニーズは高まっています。一方で、AIやAIエージェントによる業務プロセス自動化は大きなテーマです。AI前提の業務プロセス基盤づくりを目指す際には、AI・BPR・BPOを個別施策ではなく、業務モデルの再設計として一体で捉える視点、そして、BPO事業者の提案力、課題解決力が問われています。
末永:BPOにおいてAIを活用していくには、人とAIとの役割分担、境目の見極めが極めて重要です。現在はAIエージェントがビジネスに入り始めた段階ですが、テクノロジーと業務にまたがる知見を生かしてお客さまをサポートしていきたいと思います。
小林氏:現在、企業や業界の垣根を越えて共通業務を集約・標準化し、生産性向上と競争力強化を実現するSSCの構築が加速しています。当社もこれまで数多くのSSC構築・運営支援の実績を有しており、近年ではAI、RPA、BPMSなどのDXソリューションを組み合わせた高度なSSCの実現を推進しています。業務の効率化だけでなく、品質向上や継続的な改善を通じて、クライアント企業様の競争力強化と持続的な成長をご支援してまいります。
永野:企業の人材不足は厳しさを増していますし、AI活用で世の中の変化も加速しています。その中で、企業が大きな業務変革を自前でやり切るのは難しくなっていると言えるでしょう。そのため、私たちBPO事業者が、構想から実行まで一貫して支援していくことが重要です。「デジタルBPO」という考え方を通じて、さまざまな業務領域で支援していきたいと考えています。
■デジタルBPOソリューションはこちら
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