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2026.04.03(Fri)

人材が圧倒的に不足「デジタル人材」はどう育てれば良いのか?

日本ではDXを担うデジタル人材が慢性的に不足しています。 デジタル人材を確保する方法は、何も外部から優秀な人材を確保するだけではありません。社内で従業員がスキルアップを重ねていき、それを企業が評価し、適正なポジションへ配置していくことで、自然とデジタル人材が育っていく可能性があります。具体的にどうすれば社内で育成できるのでしょうか?IPAの資料から読み解きます。

目次


    ■日本では会社が人材を育てる気が無く、従業員も学ぶ気が無い?

     「DXを推進したいが、そのためのデジタル人材がいない」と、人材不足に頭を悩ませている企業は多いかもしれません。

     独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が2025年7月に公表した資料「DX動向2025」によると、日本企業の85.1%が「DXを推進する人材が不足している」と回答しました(2024年度)。海外企業で「足りない」と回答した割合は、アメリカで23.8%、ドイツで44.6%だったため、日本の人材不足ぶりは特に突出しています。

     その前年度(2023年度)の調査でも、DXを推進するための人材が不足していると回答した日本企業の割合は85.7%、さらにその前年度(2022年度)調査でも83.5%と、ここ数年はほぼ同じ数値で推移しています。

     なぜ日本では、デジタル人材が少ないのでしょうか? 同資料では、日本企業ではそもそも人材育成があまり行われていない現状があるとしています。

     DX動向2025によると、日本企業の36.6%が、デジタル人材育成のための支援を「特にしていない」と回答しています。これは米国企業の1.0%、ドイツ企業の1.9%と比べても圧倒的に少ない数値です。

     そもそも日本では、人材育成や個人の自己学習に対する取り組みが、諸外国よりも劣っている傾向が見られます。

     リクルートワークス研究所が各国の大卒以上の30~40代雇用者を対象に実施した「Global Career Survey 2024」という調査によると、フルタイムの無期雇用者が1年間にOJTを受けた割合は、日本は調査対象国(日本、ドイツ、フランス、英国、米国、中国、スウェーデン)の中で最も低い結果になりました。加えて、フルタイムの無期雇用者が1年間に自分の意志で仕事にかかわる知識や技術の向上のための取り組みを行った割合も、同じく最下位でした。

     会社としても個人としても、「従業員を人材として育てよう」「人材として自ら育とう」という意識の希薄さが、そのままデジタル人材の不足に繋がっている可能性が考えられます。

    30代・40 代のフルタイムの無期雇用者における、自己啓発の国別実施状況(出典:リクルートワークス研究所「Global Career Survey 2024」をもとにIPAが作成)

    ■人材育成の鍵①:スキルを軸とした人事制度の導入をすべき

     日本でデジタル人材を育てるためには、どのようにすれば良いのでしょうか? IPAが2025年10月に発表した「DX動向2025-AI時代のデジタル人材育成」という資料によると、デジタル人材を育成するためには、「企業と個人の関係(人材マネジメント)の変革」と、「実践型学習の充実」が必要といいます。

     1つ目の「企業と個人の関係(人材マネジメント)の変革」とは、人事評価や配置の転換を、スキルを基盤に行うことを指します。端的にいえば、従業員に仕事を任せるときの基準を、年齢や在籍年数ではなく、保有スキルに置き換える必要があるということです。

     すでに政府では、2024年8月に「ジョブ型人事指針」という指針にて、企業は従業員に対して仕事内容と必要スキルを明確に示し、その条件に応じて処遇を決める人事方式へ移行することを勧めています。

     日本では長年、新卒一括採用と会社主導の異動が中心でしたが、この従来のままの仕組みでは、社員が身に付けたスキルが報酬や役割に十分反映されにくい傾向にあり、結果として社内に「学んでも評価されにくい」という空気が生まれ、学習意欲が高まりにくいと指摘しています。

     一方のジョブ型人事指針では、まず仕事内容と求めるスキルを文章で示し(職務内容書)、その価値を市場水準も踏まえて、賃金に反映する仕組みへ改めることを促しています。仕事の中身と求められる技術を先に提示すれば、社員はどの能力を伸ばせば評価につながるかを理解しやすくなり、企業は事業計画に必要なスキル不足を把握しやすくなります。

     資料では、このような仕組みを整えることで、学習と人事配置の循環が生まれ、社内でデジタル人材を育て続けられる体制の構築が期待できると説明しています。

    ■人材育成の鍵②:講義形式だけでなく、より実践的な学習をしよう

     2つ目の「実践型学習の充実」とは、オンライン講座などで得た知識を、実際の開発や課題解決で試しながら学ぶ「実践型学習」を、より充実させていくことを指します。

     現在、大学レベルの講義をオンラインで受講できる大規模公開オンライン講座「MOOC(Massive Open Online Courses)」など、オンラインコンテンツによる学習の機会は普及しています。資料ではこうした学習の機会を、「基礎的な知識を習得するうえで有用」とする一方で、AI技術の変化が速い現在では、講義形式だけでは最新の手法を身に付けるのは簡単ではないともしています。

     資料では実践型学習の実例として、札幌市の産学官連携組織「Sapporo AI Lab」を挙げています。同組織では大学発ベンチャーが指導役となり、地域企業と一緒にAIシステムを開発する一年間のプログラムを行っています。参加者は本物のデータと顧客課題を扱うため、プログラミングだけでなく問題設定力や関係者との調整力も同時に鍛えられるとしています。

     デジタル人材を確保する方法は、何も外部から優秀な人材を確保するだけではありません。社内で従業員がスキルアップを重ねていき、それを企業が評価し、適正なポジションへ配置していくことで、自然とデジタル人材が育っていく可能性があります。

     スキルを起点にした人事制度と、実践型学習の場づくりは、その循環を回し続けるエンジンです。自社の現場で目の前の課題を教材にし、得られた知見を次の挑戦へ生かすサイクルが定着すれば、やがてデジタル人材の不足も解消され、自社の競争力も自然と高まっていくはずです。

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