Carbon Neutrality

2025.06.25(Wed)

太陽光パネルはリサイクルできる!新制度が検討中

#イノベーション #環境・エネルギー #法規制 #サステナブル #スマートシティ
日本では現在、太陽光パネルのリサイクル義務化に関する新制度の準備が進められています。パネルを回収する費用や、リサイクル時の費用は誰が負担するのでしょうか?

目次


    太陽光発電の増加の裏に「FIT」あり

     日本では現在、太陽光発電が増え続けています。

     公益財団法人自然エネルギー財団が2024年12月に発表した「太陽光発電の動向」という資料によると、2023年における太陽光発電の累計導入量は7,384kWで、2014年の2,317kWから3倍以上も増えています。さらに、2023年度の太陽光発電の年間発電電力量は921億kWhで、これは日本全体の発電電力量の9%に相当する数値といいます。

     同資料では太陽光発電が増加した背景に、2012年7月に開始された「FIT制度(固定価格買取制度)」の影響があるとしています。

     FIT制度とは太陽光発電など、化石燃料を使用せず、CO2など温室効果ガスも発生しない再生可能エネルギーで作られた電気を、一定期間は政府が定めた価格で、電力会社が必ず買い取ることを保証する助成制度のことです。再生エネルギーの導入希望者に対し、安定した売電収入を保障することで、一般家庭や事業者が再生可能エネルギーを導入しやすいという特徴があります。

     2022年からはFITに加えて、市場連動型の「FIP制度」もスタートしました。FIPは再生エネルギー由来の電力を卸市場で売電した際、その価格に一定のプレミアム(補助額)が加算される制度です。FITとFIPは、どちらも再生可能エネルギーの普及・促進効果を狙ったものという点で共通しています。

    2030年頃から太陽光パネルの廃棄が増加する理由とは

     太陽光発電は、一度導入すれば長期間使用できる点も特徴です。太陽光発電協会のサイトでは、太陽光パネルの法定耐用年数について「17年」としていますが、一方で資源エネルギー庁では太陽光パネルの製品寿命について「25~30年程度」としており、法定耐用年数を超えても使い続けることが可能です。

     しかしながら、経年劣化はどうしても生じてしまいます。雨や風に晒されているうちに、だんだんと発電量が落ち、最終的にはパネルを廃棄せざるを得ない時も訪れます。

     経済産業省と環境庁が2024年9月に公開した「太陽光発電設備の廃棄・リサイクルをめぐる状況」という資料では、太陽光パネルの排出量は2030年代半ばから増加することが見込まれています。これは、FIT制度によって2010年代に導入された太陽光パネルの多くが、それから20年経った2030年頃から製品寿命を迎えることが影響しています。

     同資料では、太陽光パネルの年間排出量は、2040年代に最大50万トンに達する可能性があるとしています。この数値は、2021年度の産業廃棄物の処分量である869万トンの約5%に相当します。

    太陽光パネルの排出量予測(経済産業省・環境庁「太陽光発電設備の廃棄・リサイクルをめぐる状況及び論点について」17ページより引用)

     現行法では、太陽光パネルにはリサイクルの義務はなく、廃棄物処理法により産業廃棄物として処理されます。もし先に挙げた年間50万トンの使用済み太陽光パネルがすべて産業廃棄物として処分された場合、最終処分場が逼迫したり、不十分な管理でパネルが放置される恐れがあるとしています。太陽光パネルには鉛やカドミウム、ヒ素やセレンなど環境負荷が高い化学物質も含まれており、正しく処理しないことで人体に悪影響を及ぼす恐れもあります。

     こうした事態を避けるため、先に挙げた経産省と環境庁の資料では、使用済み太陽光パネルの廃棄の発生を抑制したり(リデュース)、再使用(リユース)や再生利用(リサイクル)を行うなど、循環型社会形成推進基本法に基づいた対応を行うべきとしています。

    パネルをリサイクルする費用は誰が負担するのか?新ルールが準備中

     現在政府では、太陽光パネルのリサイクル義務化に関する新制度の準備が進められており、2025年の通常国会にて法案が提出されることが新聞やニュース番組で報じられています。

     2024年12月に開催された会議の資料によれば、新制度によってリサイクル義務化の対象となるのは、FIT/FIP設備、非FIT/非FIP設備に関わらず、制度開始時点において設置済みの太陽光パネルです。パネルを設置するための基礎や土台、発電した電気を変換するパワーコンディショナーはリサイクルの対象外となる予定です。

     新制度では太陽光パネルのうち、太陽電池のセルを覆うガラス部分の再資源化が求められます。これはガラスがパネルの重量の約6割を占めており、かつ最終処分量の削減効果が大きいことが理由です。セルに含まれるプラスチック・シリコンについては熱回収(焼却の際に発生する熱エネルギーを回収し利用すること)を行うことが適当としています。

    太陽光パネルのリサイクルフロー(経済産業省・環境庁「太陽光発電設備のリサイクル制度のあり方について(案)参考資料」8ページより引用。一部、編集部で画像を変更)

     リサイクル費用については、複数のプレイヤーが分担します。たとえば設備の解体費用については太陽光発電設備の所有者が、パネルの再資源化を行う際の費用は、太陽光パネルの製造業者もしくは輸入業者が負担します。費用のやり取りについては、確実に処理が行われるよう、第三者機関が仲介する見込みです。

    解体等・再資源化費用の流れの全体像(経済産業省・環境庁「太陽光発電設備のリサイクル制度のあり方について(案)参考資料」18ページより引用。一部、編集部で画像を変更)

     太陽光パネルをリサイクルせず放置や不法投棄を行う事業者の対策として、現行のFIT/FIP設備で導入されている解体費用の積立金の支払いを、非FIT/非FIP設備に対しても義務付ける予定です。加えて、太陽光発電設備の所在地や事業の開始・廃止時期に関する情報、廃棄・リサイクルの実施状況に関する情報を、関係者間で共有する仕組みを構築する必要があるとしています。

     ここまで挙げたルールはいずれも検討段階のものですが、リサイクルに関する新たな縛りが設けられるのは間違いありません。太陽光発電は地球環境にやさしい再生可能エネルギーですが、パネルを放置すると、かえって地球環境を汚すことにつながります。

     すでに太陽光発電を導入済み、もしくはこれから導入を予定しているのであれば、どのように処分するのか、いずれ訪れる後始末のことも考えておいた方が良いでしょう。

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