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2024.10.02(Wed)
Carbon Neutrality
2025.03.21(Fri)
この記事の要約
本記事では日本のICT産業の国際競争力向上を目的にESGの観点も考慮して投資を行う官民ファンド JICT(海外通信・放送・郵便事業支援機構)と、自らサステナビリティ経営を実践するNTTコミュニケーションズが事業活動から得た知見をもとに持続可能な未来について語ります。
JICTは、海外展開をめざす日本企業に対し、出資によるリスクマネーの供給や経営アドバイス等を提供し、政策性と収益性の両立を条件に支援を行っています。主にデータセンターの整備・運用、光海底ケーブル敷設、クラウドベースのICTサービスなどの海外事業に投資しています。また、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点も重視し、サステナビリティを考慮した投資判断を行っています。
NTTグループとの対談では、企業が持続可能な社会の実現に向けて取り組むべき姿勢が語られ、特にNTT Comのカーボンニュートラル目標や森林クレジット、水稲クレジット取引の推進などの具体的な事例が紹介されました。
大道氏と田畑氏は、ESGが企業成長の基盤となることを強調し、官民の連携によってサステナブルな事業の発展を支援していく意向を示しました。
※本要約は生成AIにより作成しています。
目次
——国と民間が共同出資して設立された官民ファンドのJICTは、海外におけるICTインフラ事業をはじめさまざまな分野で日本企業の成長を支援するなかで、ESGの観点からも投資評価を行うなど、サステナビリティ分野の知見もお持ちです。まずはJICTがどのような経緯で設立されたのかお聞かせください。
大道英城氏(以下、大道氏):JICTは、通信・放送・郵送事業の分野で海外展開をめざす日本企業に対し、出資によるリスクマネーの供給や専門家による経営アドバイスなどのハンズオン支援を行っています。その目的は、日本のICT産業の国際競争力を高めること。国の方針と民間の経営視点を取り入れ、企業が継続的に収益を生み出すための成長を支援しています。
支援事業は、政策性と収益性の両方を満たすことが前提です。民間だけでは難しい案件に参入することで、日本企業の成長を後押しします。
——これまでの支援実績について教えてください。
大道氏:海外におけるデータセンター建設、光海底ケーブル敷設、クラウドを活用したICTサービス事業等での支援を進めています。また、ベンチャーキャピタルやコーポレートベンチャーキャピタルを通じて企業を支援する、LP投資も積極的に実施しています。
——出資判断にはどのような基準があるのでしょうか。
大道氏:JICTの支援対象は通信・放送・郵便事業で、エリアは海外に限られます。また、単独出資は行わず、日本の企業の皆さまとの共同投資を前提に、かつ、日本の共同出資者との間では最大株主にならない範囲での出資を原則としています。加えて重要なのがESGの観点です。ESG投資とは、従来の財務情報を主とした投資判断だけでなく、ESGも考慮して投資先を選定し、社会的リスクをコントロールしつつ、中長期的なリターンの向上を目指す投資手法といえると思います。ESGは企業の持続可能性を評価する上でも重要な要素となっています。
——こうした基準にもとづいて、JICTではどのような投資手法をとっているのでしょうか?
JICTでは、投資判断の初期段階で自然環境、人権、企業統治など、リスト項目に沿ってネガティブ・スクリーニングを行います。また、ESG観点でより優れた投資案件を高く評価するボジティブ・スクリーニング、投資実行後にはわたしたちと投資先企業が建設的な対話を行うエンゲージメントにも取り組んでいます。JICTは、日本企業の海外での事業展開を支援することを主たる目的としていますので、サステナブルテーマ投資や社会的リターンと財務的リターンを両立するインパクト投資といった投資手法はとっていません。ESGの観点で何らかの課題がある投資案件の場合でも、将来的に回避する方策や代替案、あるいはリスクの軽減策が想定されるようであれば、投資の検討の俎上(そじょう)に載せることもあり、ある程度先の未来を見据えて投資判断を行っています。
——NTTグループは通信分野で事業を展開していますが、サステナビリティ推進の方針や取り組みについてお聞かせください。
田畑好崇(以下、田畑):私たちは「NTTグループサステナビリティ憲章」を定め、これにもとづいてさまざまな活動に取り組んでいます。具体的には「自然との共生」「文化の共栄」「Well-beingの最大化」という3つのテーマがあり、脱炭素、資源循環、コンプライアンス・ガバナンスの強化徹底、ダイバーシティ&インクルージョンなど取り組みは多岐にわたります。
NTT Comでは、サステナビリティ基本方針の重点領域として「社会」「環境」「人材」「ガバナンス」の4つを掲げています。ESGを中心に置いて目標を設定し、日々の事業活動で実践しています。
サステナビリティ推進はコストの観点から語られることが多かったように思いますが、中長期的に見れば自社の持続的な成長につながります。近年ではこうした考え方を持っているか、具体的なアクションに結びついているかが企業間の取引の必須条件になるなど、ESGは事業に直結するようになってきていますよね。
大道氏:欧州に限らず、新興国でもESG関連の法規制が厳しくなってきています。一部ではESGのバックラッシュともいえる動きが見受けられますが、中長期的には気候変動や社会的責任に向き合うことは企業活動を続けていく上で不可欠だと思われます。多少の振幅はあるかもしれませんが、今後ともESGの重要性が増していく基調は変わらないと考えています。
——続いて、サステナビリティ経営について掘り下げたいと思います。NTTグループが掲げる目標や取り組みの内容を教えてください。
田畑:最も大きな取り組みが脱炭素です。2030年度にはNTT Comが携わるモバイルやデータセンター事業におけるカーボンニュートラルを、2040年度にはNTTグループのバリューチェーン全体(Scope1,2,3)のネットゼロを目標に掲げています。グリーンエネルギー転換や従来の電気通信を光通信に置き換えることで省電力かつ大容量の通信を実現する次世代情報通信基盤IOWN構想の実現やDX推進もその一環といえます。
また、NTT Comではサステナビリティに寄与するソリューションを多数展開しています。これらを私たち自身も積極的に活用しているのですが、実践するなかで得られたノウハウを還流させることで経験にもとづくソリューションをお客さまにも提供しています。自社の取り組みという枠を超えて同じ思いを持つお客さまの取り組みも支援していくことが、結果として社会全体のサステナビリティ、さらには持続的な事業成長につながると考えているためです。こうした取り組みの輪を大きく広げていくという意味では、企業同士のつながりが今後は一層重要になっていくのではないでしょうか。
大道氏:NTT Comからは、他企業との共創によって地域社会のサステナビリティに寄与するサービスが生まれていますよね。
田畑:ありがとうございます。いくつか事例をご紹介すると、住友林業さまとの共創から生まれた森林価値創造プラットフォーム(通称「森かち」)では、「森林由来のJ-クレジットを創出し、それを販売したい森林所有者」と「購入したい企業」をつなぎ、クレジット取引を包括的に支援しています。また、ヤンマーマルシェさまとも、温室効果ガスの排出削減に向け、生産者さん協力のもと、水稲栽培の中干し期間を延長することで創出されるJ-クレジットの販売・支援を実現しています。
大道氏:最近では、CO2の削減状況はもとより、自然環境や生物多様性の状況を可視化するICTサービス事業も投資の対象として注目されるようになっています。このような事業を含め、我々もさまざまな分野や地域の企業の皆さまへの支援をしていきたいと考えています。
——最後に、サステナビリティ推進の未来像についてお考えをお聞かせください。
田畑:NTT Comのサービスが顧客の「驚き」や「幸せ」につながり、従業員のやりがいがエネルギーとなって、事業の成長とサステナブルな社会の実現へとつながっていく。それが私たちのめざすサステナビリティです。これからもお客さまの期待を超える「驚きと感動のDX」を届けていきたいと思います。
大道氏:企業にとって資本効率を上げるというのは、サステナビリティの観点からも非常に重要なテーマです。そこで我々のような官民ファンドを有効な手段として活用いただき、成長性の高い分野への積極的なチャレンジにつなげてほしいと考えています。
私たちの仕事は、単に出資をするだけではありません。サステナブルな事業を共に育てていくために、企業の皆さまの相談相手となり、中長期にわたって伴走支援を行っています。より多くの企業の皆さまとのご縁がつながることを楽しみにしています。
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