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この記事の要約
この記事は、「DX スクエア」から「OPEN HUB Square」へとリニューアルした経緯やその特徴について説明しています。前身のDX スクエアは5Gの普及・啓蒙を目的としていましたが、現在は実用段階に入り、「ビジネス課題解決のヒントに出会える場」へとコンセプトを転換しました。IoT活用の本格普及期に向けた重要なキーワードは「エッジ基盤」であり、工場内データをクラウドに出さずに処理できる点がセキュリティ面でも優位性を持ちます。施設は「メインエリア」と「Garageエリア」で構成され、デジタルヒューマンによる紹介や製品IoT化パック、リアルハプティクスなど多彩なソリューションを展示。また、OPEN HUB Square を新設したOPEN HUBは今後、「点の関係性」から「面の関係性」へと共創のスタイルを発展させ、社会可能性の発見を追求していく方針です。
※この要約は生成AIをもとに作成しました
目次
戸松正剛(以下、戸松):「OPEN HUB Square」がリニューアルオープンしますが、OPEN HUB Squareの前身は、2021年にスタートした「ドコモ5G DX スクエア」でしたね。それから約4年が経ち、今回のリニューアルに至った経緯を教えてください。
浅田隆介(以下、浅田):DX スクエアがスタートした2021年当時は、5Gの普及・啓蒙という目的がありました。それから4年近くが経った現在、啓蒙期はすでに終え、5Gは実用段階に入っていると考えています。
当時は5Gの未来を「体験する」ことに注力していましたが、今は5GやIoTを活用した成功事例やソリューションも続々と生まれています。そうした事例やソリューションの体験を通じ、企業の課題解決における具体的なアイデアをともに模索するフェーズに移行していきたいと考え、リニューアルする運びとなりました。そのため施設のコンセプトを「ビジネス課題解決のヒントに出会える場」とし、首都圏最大の営業拠点で、多くのお客さまが来訪される大手町プレイスで再始動することになったのです。
戸松:以前は「こんなことができるようになります」という技術紹介が中心でしたが、OPEN HUB Squareではより具体的な「社会産業課題の解決のヒント」を提示するわけですね。
ハイプ・サイクルでいえば、DX スクエアがスタートした2021年は、先進技術であった5G・IoTの話題で持ちきりだった2010年代中盤〜後半のピークを過ぎて幻滅期に入っていた時期だと思われます。それから約4年経ち、実際に成果を上げて課題解決を実現する企業やユースケースが増えてきた。確かに、啓蒙普及期のレイヤーから一段上がった感じがありますね。
浅田:IoTに関していうと、設備や製品の稼働状況の監視などは、いまや大企業を中心に普通に行われています。
一方で、例えば系列のサプライチェーン全体までを含めた大規模な事例はまだそう多くありません。しかし以前よりもセンサーコストや通信コストが安価になって導入しやすくなった現在、大規模な実用フェーズもまさに目前に迫っており、IoTが再注目されるようになっています。
戸松:そもそもInternet of Things(モノのインターネット)という言葉がケビン・アシュトンによって提唱されたのは1999年でした。「ネットに接続しているデバイスの数は、2010年にならないうちに世界人口の数を超える」という予想もありました。
IoTが注目され始めたのは、2011年にドイツ政府が提唱した、IT活用による製造業のデジタル化・自動化政策「Industry 4.0」が契機だったと思います。その後、GoogleやAppleがスマートホームに参入し始め、一般消費者にもIoTが広まりましたが、現在のAIのような爆発的な普及にまでは至りませんでした。特にIndustry 4.0は、日本国内ではあまり普及が進まず、幻滅期に入っていました。
ところが気付くと、2020年代中盤に差しかかった現在、全世界では人口の3倍以上にもなる約250億のIoT機器がインターネットに接続されているそうです。この数は今後10年のうちに1兆を超えるといわれていて、我々はまさに時代の波の真っただ中にいるわけですね。
そこで浅田さんに伺いたいのですが、日本企業のさらなるIoT活用には何が必要だと思いますか?
浅田:IoTは、機器から収集したデータを利活用してこそ真の価値を発揮すると思いますが、そのハードルは年々低くなっています。以前の機械学習テクノロジーではAIの学習コストが高くつきましたが、LLMの活用により学習コストが低減し、「IoTで蓄積したデータを活用し、AIが工場内機器を自動制御する」といったシステムを実現するハードルは下がり始めています。NVIDIAも2025年1月のCESでフィジカルAIへの大々的な取り組み強化を発表しており、ロボティクスやFA機器の制御への展開が加速するでしょう。
ただ、それで日本の産業界が一変するかどうかは未知数です。IoTデータをAIに学習させるには、どうしてもデータをクラウドに上げて処理しなければなりません。しかし、日本企業、特に製造業では「工場内のデータは競争力の源泉なので、セキュアに運用したい」という意向が強く、パブリッククラウド上のAI活用ではなくオンプレミス環境を選択するケースが多いです。結果として、データは工場内の閉域での利活用にとどまっているケースが大半で、これは日本でIndustry 4.0があまり進んでいない要因のひとつと見ています。
戸松:なるほど。まさに2010年前後に話題になった、サイバーフィジカルシステム(CPS)の導入に日本特有のハードルがあったわけですね。
サイバー空間と物理空間の連携には、(1)IoTで物理空間からデータを収集する、(2)収集したデータをクラウド上で可視化する、(3)可視化したデータをAIで最適化する、(4)最適化した解を現実世界にフィードバックする、という4つのプロセスがありますが、多くの日本企業で、(2)におけるクラウドや(3)でキーとなる生成AIを使うことのリスクが懸念されていると。この課題に向け、OPEN HUB Squareではどのような提案をするのでしょうか。
浅田:ポイントになるのは「エッジコンピューティング」です。弊社で提供するエッジコンピューティング基盤の「docomo MEC」は、データをインターネット上に出さずに、モバイル網の閉域環境内のコンピュートリソースを活用して低遅延にデータ分析やAI活用ができます。エッジ基盤の活用により、ここでIoTによって収集したデータを外部脅威にさらされずにセキュアに活用することができるようになるのです。
戸松:IoTやAIのポテンシャルを活かしながら、セキュリティの懸念を解決する「エッジ基盤」は重要なキーワードですね。AI分野は米国や中国が先行している感がありますが、今後のIoT×AIの本格普及によって日本のものづくりの力を最大化できると捉えると、国際競争力を大きく飛躍させるチャンスといえます。ただ、企業のセキュリティ被害は年々複雑化・深刻化していますよね。その対策についてはどのように考えていますか?
浅田:これまでのサイバーセキュリティは、基幹システムや顧客情報などを扱うコーポレートITを中心として対策が講じられており、IoT分野ではセキュリティ対応が不十分なデバイスも散見されます。今では、こうしたエッジデバイスからエンタープライズの中核部を狙う攻撃も少なくありません。
それに昨今は、サーバーに高負荷を与えサービスを妨害するDDoS攻撃を重要な社会インフラに仕掛けられるケースも増えており、自社のIoT機器が乗っ取られ、DDoS攻撃の踏み台として加害者になってしまう可能性も視野に入れる必要があります。
その対策には、SIMの認証などIoTデバイス側の対策だけでなく、IoT通信をモニタリングしてセキュリティ攻撃を検知するなど、ネットワーク事業者ならではのセキュリティ機能がますます重要になると考えています。
戸松:IoTの幻滅期から本格普及期に移行する中、活用を促進するキーワードとして、エッジ基盤にまつわるAIの価値とセキュリティの重要性について伺いました。そうしたトレンドを踏まえ、今回のOPEN HUB Squareの見どころを教えてもらえますか。
浅田:まずコンセプトとしては、まだIoTの世界にエントリーしていない方々に「こういう課題解決の方法がある」という気付きを提供する場となることを目指しています。すでに実用フェーズに移ってきているIoTですが、実用化されたソリューションをまだ体験したことのない方や、他業界の成功事例を参照して自社アセットの新しい価値を模索する、といった体験に馴染みのない方に向けて、自社で5G・ IoT活用をするためのヒントが得られる体験設計になっています。
Squareは2つのエリアで構成されています。「メインエリア」には、DXを支えるさまざまなコネクティビティサービスや、業界ごとの課題に応じたIoTソリューションのご紹介を通じて、課題解決の種を発見する「インサイトゾーン」と、顧客のニーズや世の中のトレンドに合わせたテーマ設定にもとづいた展示を行う「シーズナルゾーン」があります。どちらもNTT Comの営業担当者を通じて予約できます。
もうひとつの「Garageエリア」はカフェスペースの中にあり、社員もお客さまも自由に出入りできる場所です。こちらも予約対応していますが、予約で埋まっていない時は自由に見学してもらえます。
戸松:どんなソリューションが展示されるのでしょう?
浅田:メインエリアでは、エントランスに設置された75インチのディスプレイでデジタルヒューマンの「CONN」がお出迎えします。お客さまの業界やビジネスモデルに応じた5G・IoTソリューションをご紹介するので、具体的な興味や関心がまだ固まっていない方は、まずはこのインタラクションでイメージを膨らませてください。
その先のインサイトゾーンでは、これからIoTに取り組む方、そしてすでにIoTを活用していて今後一層拡充していきたい方、それぞれに向けた具体的なテクノロジーとユースケースを紹介します。例えば、先ほどお話ししたエッジ基盤であるdocomo MECや、「製品IoT化パック」をはじめとした、自社製品をIoT化するためのソリューションなどですね。
また、我々が特許を持っている「Active Multi-Access SIM」も多数の引き合いを得ているサービスです。これは、SIMの通信プロファイル領域と記憶領域であるアプレット領域を分割して管理する「アプレット領域分割技術」を活用して実現したキャリア冗長の仕組みですが、この技術により、アプレット領域を活用したさまざまなユースケースが生まれています。
ローカル5Gネットワークと公衆モバイルネットワークの自動切換えの実現や、また自販機決済端末に導入したケースでは、アプレット領域を活用した機微情報の管理などにも活用されています。こういったサービスはカタログだけでは伝わりにくい部分もあると思うので、ぜひ現地で紹介させてもらいたいですね。
ほかにユニークなものだと、「リアルハプティクス」も先進技術として注目を集めています。リアルハプティクスとは、人間の繊細な手指の力加減をロボットで再現しながら遠隔操作したり、またロボットが得た触覚を操作者にフィードバックしたりできる技術です。例えばdocomo MECと組み合わせることで、AIがロボットを操作して人間のようにコンビニの商品棚を整理する、といった動きも実現できます。
インサイトゾーンを出た先にあるシーズナルゾーンでは、その時々で注目のソリューションをご紹介する予定で、オープン時は現在ニーズが高まっている災害対策ソリューションを展示します。通信環境が整備されていない山間部でも高速・低遅延のインターネット接続ができる「Starlink」や、LAN配線の難しい場所でも屋内外問わずWi-Fi環境を構築できる「PicoCELA」、可搬型蓄電システム「パワーイレ」、避難所に置くデジタルサイネージなどを紹介します。
戸松:もうひとつのGarageエリアはいかがでしょう?
浅田:Garageエリアでは、屋外や広めの空間での活用イメージがあるデバイスを展示します。デジタルコンテンツを現実空間にシームレスに融合する、重さ約125gの軽量ケーブルレス XRグラス「MiRZA」や、水・空に対応するさまざまなドローンなど、手に取って体験できるサービスを置いています。また、人数カウントや属性推定を行う「EDGEMATRIX」なども準備しています。
戸松:興味深い展示ばかりですが、業種ごとのユースケースなども踏まえるとここでは紹介しきれませんね。どなたでも、ぜひお問い合わせください。
最後に、OPEN HUB SquareとOPEN HUB Parkの未来についてもディスカッションしたいのですが、浅田さんはどのような展望を描いていますか。
浅田:OPEN HUB Squareの「Square」は「広場」、そしてOPEN HUB Parkの「Park」は「公園」という意味です。広場であるOPEN HUB Squareをビジネスの課題解決に向けたヒントと出会う場として活用してもらい、その先の公園=OPEN HUB Parkでビジネス共創につながるコミュニケーションを活性化するなど、段階に応じた使い分けをしていきたいですね。
NTT ComのIoTビジネスでいえば、今後より大きな業界の課題解決に取り組んでいきたいです。2024年10月には、デバイスやモジュールの開発企業、IoTで課題解決を目指すメーカー企業の方々などと共創してIoT活用を促進する「IoTパートナープログラム」も立ち上げました。これからIoTが本格的な普及期に移行する中で、社会インパクトの大きな取り組みをパートナー企業とともに進めていきたいです。
戸松:参加企業同士がゆるやかにコミュニティーを形成しながら進行しているIoTのパートナープログラムは、私も非常にいい動きだと思っています。なぜなら、OPEN HUBが誕生して約4年が経ちますが、これまで進めてきた共創のスタイルを、「点」から「面」へとアップデートさせるべきタイミングだと感じているからです。
共創によって”社会課題の解決”を目指すことは当然大切ですが、NTT Comとパートナー企業、1対1のいわば「点の関係性」の中で“課題”というマイナスからスタートしていく状況では、ちょっとした息苦しさが漂うこともあります。そうした閉塞感を打破すべく、いろいろな企業が集まった「面の関係性」の中で議論を展開して、“社会可能性の発見”を追求していきたい。それがOPEN HUBの新たな目標です。
浅田:なるほど。IoTも今、”課題解決”から”ビジネスの可能性を広げる”ための手段へと変貌しつつあります。そういう意味でも、OPEN HUB Squareでソリューション/ユースケースと出会い、さらに「IoTパートナープログラム」などの面の関係性の中で“社会可能性を発見”していく、という共創をめぐる新しいビジョンは、IoTの導入・利活用を検討している企業に関心を持ってもらうきっかけにもなりそうです。
戸松:ちょうど生成AIのClaudeにNTT Comの特徴を質問してみると、「敷居が高い」という回答がきてショックを受けたところでした(笑)。目指すのは、より多様な企業やアセットが集まりやすいOPEN HUBになることで、マイナスをゼロにするだけではなく、プラスの可能性を広げていくこと。
IoTのパートナープログラムをはじめ、スマートシティやフェムテック、グリーンテックなど、OPEN HUBではさまざまなビジネスコミュニティーをフォローしています。Squareのリニューアルを通して新たなOPEN HUBへの第一歩を踏み出し、皆さんとワクワクする未来を創っていけたらいいなと思います。
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