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2025.02.21(Fri)

フェムテック市場における企業連携の最前線―共創で切り拓く認知拡大と実現可能性

#共創 #ヘルスケア #データ利活用 #イノベーション
NTTコミュニケーションズが2023年1月に立ち上げた、フェムテック領域に携わる企業同士の連携を生み出すコミュニティ「Value Add Femtech Community」。同コミュニティのミーティングでは、参加企業の担当者が集まり、企業間の壁を越えて女性特有の悩みや課題を解決する事業の可能性を探っています。

6回目となる今回は、コミュニティを起点とした、NTTドコモと会員企業の共創事例を構築し、いかに認知拡大するかをテーマに開催しました。第1部は、女性の健康管理をサポートする「わたしの温度®」のサービス開発・提供を行うTOPPANエッジと、販売代理を手掛けるティーガイア、NTTドコモによる講演と、「docomo STARTUP CHALLENGE」発のスタートアップ・ReCuteのCEO 山下萌々夏による講演の2本立て。第2部では、Value Add Femtech Communityで生まれたつながりから共創ビジネスへと発展させたベルシステム24とNTTドコモの取り組みや、フェムテックに関するビッグデータを取り扱うFloraの事業を紹介しました。

フェムテック市場はまだまだ規模が小さいと言われていますが、女性がいきいきと働くには欠かせないテーマです。どうやって事業を発展させていくか、示唆に富んだコミュニティ活動の様子をレポートします。

この記事の要約

NTTコミュニケーションズが運営する「Value Add Femtech Community」の第6回ミーティングの様子をレポートします。今回は、コミュニティを起点とした企業連携の事例が紹介されました。

第1部では、TOPPANエッジが開発した女性の健康管理IoTサービス「わたしの温度®」について、NTTドコモとティーガイアを交えた3社連携の取り組みが共有されました。また、ドコモのスタートアッププログラムから誕生した、化粧室でヘアアイロンを借りられるサービス「ReCute」の事業化プロセスも紹介されました。

第2部では、ベルシステム24の「頭痛ーる」にNTTドコモの免疫力推定AIを組み合わせた新サービスや、Floraが保有する15万人規模の女性の健康データの活用事例が報告されました。

フェムテック市場はまだ発展途上ですが、企業間の垣根を越えた協業や、データに基づく事業展開により、より多くの女性の課題解決に貢献することが期待されています。

※この要約は生成AIをもとに作成しています。

目次


    3社の強みを持ち寄ってフェムテック市場を切り拓く

    第1部の前半の講演は、2024年9月にドコモオンラインショップで販売を開始した、ヘルスケアIoTサービス「わたしの温度®」のサービス開発・提供を行うTOPPANエッジ、そしてその販売代理を手掛けるティーガイア、NTTドコモの3社による講演からスタートしました。

    「わたしの温度®」は、デバイスと専用アプリを連動させたサービスで、デバイスを取り付けた専用ナイトブラを着用して寝るだけで女性特有の高温期と低温期の周期を把握できるのが特徴です。健康管理だけではなく、妊活中の基礎体温測定時の身体的・精神的な負荷の軽減、ダイエットに適した時期やむくみやすい時期の予測による美容対策、年齢変化による日々の心身の変化への付き合い方など、さまざまな目的に合わせて、女性が快適に過ごすことをサポートします。

    このデバイスとナイトブラ、アプリを開発したのはTOPPANエッジ。同社と共創を行った背景についてNTTドコモの近藤菜菜子は次のように話しました。

    「弊社では、フェムテックをもっと社会に浸透させ、女性の健康課題の改善の必要性、そして重要性を伝えていきたいと考えています。また、通信インフラの会社ですので、社会に対して情報発信する力があり、さらに、全国各地に広がる支店を中心に幅広い顧客接点を持っています。こうした強みを生かし、パートナー企業との共創によって生み出されるサービスやデバイスを社会に広めながら、フェムテックの認知拡大に取り組んでいきたいと考えています」

    近藤菜菜子|株式会社NTTドコモ プロダクトマーケティング本部

    ドコモ公式インスタグラムでの調査結果によると、日本の社会全体におけるフェムテックの認知度はわずか19%。フェムテックそのものに対する認知が低い中では、プロモーションの面でも各社の強みを持ち寄る必要があります。TOPPANエッジの廣瀬久美氏は「NTTドコモが持つネットワーク力や情報発信力に期待を持っています」とし、「まずは『わたしの温度®』を国内に浸透させ、ゆくゆくは海外でも展開していきたいと考えています」と展望を語りました。

    小俣景子(左)|TOPPANエッジ株式会社 イノベーションセンター イノベーション推進部 ソリューション設計チーム 主任
    廣瀬久美(右)|TOPPANエッジ株式会社 イノベーションセンター イノベーション推進部 ヘルスケアプロモーションチーム チームリーダー

    さらに、フェムテック市場において独自のチャネルを持つティーガイアは、それらを活用して販路拡大に貢献していくとしています。

    「当社は、携帯電話販売代理店として、携帯電話ショップを運営している会社です。近年は『FEMTECH LAB(フェムテックラボ)』という名前でサロン型店舗とオンラインショップの両軸でフェムテックストアの運営も行うようになりました。携帯電話の販売を通じてお客さまと直接会話してきた対話力を強みとして、フェムテック事業においてもさまざまな女性の健康課題に寄り添ってサービスをご紹介しています。『わたしの温度®』においてもこうした店舗事業で培ったネットワークやノウハウを活用していきたいと考えています」

    佐々木詩織(左)、山岸奈々(右)|株式会社ティーガイア ヘルスケア事業部 フェムテックチーム

    デバイスやアプリの開発、サービス提供を行うTOPPANエッジ、フェムテックストアを運営するティーガイア、発信力を持つNTTドコモ。Value Add Femtech Communityから生まれたこのプロジェクトが、それぞれの強みを持ち寄って新事業を推進していくことで、市場の拡大が目下の課題とされるフェムテック業界でどんな波を巻き起こすのか。期待が膨らみます。

    ドコモのスタートアッププログラムから生まれた女性向けサービス

    第1部の後半では、フェムテック領域の新規事業創出に取り組むことが多いコミュニティメンバー向けに、大企業における新規事業立ち上げのヒントを探るセッションを開催。ドコモグループ社員が事業創出にチャレンジできるプログラム「docomo STARTUP CHALLENGE」をきっかけにスピンアウトしたReCute(リキュート)の山下萌々夏が登壇し、ニッチな分野で事業を生み出し、社内の承認を得て、資金調達を成功させた一連のプロセスが語られました。

    山下 萌々夏|株式会社ReCute

    社名にもなっているReCuteは、外出先の化粧室でヘアアイロンが気軽に借りられるレンタルサービスの名称です。現在は東京都内を中心に一部エリアにて展開中で、今後は全国約3,500カ所まで貸出スポットを増やしていくことを目標にしています。

    ReCuteは「docomo STARTUP CHALLENGE 2023」でBRONZE賞を獲得したものの、出資が決まりスピンアウトに至るまでには、とにかく苦労が続いたという山下。アイデアが固まっても、市場規模や蓋然(がいぜん)性を指摘され、なかなか事業計画が認められなかったといいます。

    「スピンアウトへの道のりは決して平坦ではありませんでした。まず、商業施設との交渉には何度も足を運び、ようやく実証実験の許可を得ることができました。そこでヘアアイロンを設置し、利用状況を丹念に記録・分析することで、確かな需要があることを数値で示すことができました。同時に、利用者一人ひとりから率直な意見を集めることにも力を注ぎました。さらに、SNSでの情報発信やユーザーイベントの開催を通じて、潜在的なニーズを掘り起こしていく中で、市場の手応えを肌で感じることができました。これらの地道な取り組みを通じて得られたデータと知見をもとに、市場の現状と将来性を説得力のある形で示すことができ、結果として資金調達とスピンアウトの実現にこぎつけることができたのです」

    既存サービスの掛け合わせでヘルスケアの機能拡張とマネタイズを実現

    第2部では、Value Add Femtech Communityから生み出された、ベルシステム24とNTTドコモによる共創事業と、フェムテックに関するビッグデータを取り扱うFloraの取り組みが紹介されました。

    ベルシステム24が運営する「頭痛ーる」は、気圧の変化による体調不良などの「気象病」が起こりそうな時間帯の確認、痛みや服薬の記録ができるサービスです。2024年12月には、同サービスにNTTドコモが開発した免疫力推定AIを搭載した「頭痛ーる for スゴ得」がリリースされました。

    「頭痛ーる」のアプリはサービス開始から今年で11年目を迎え、これまでに2,000万ダウンロードされています。女性の利用者が圧倒的に多いことを受け、2021年には生理を管理する機能を追加し、頭痛や痛みの症状と月経周期との相関関係を確認できるようにしました。

    岩見統之|株式会社ベルシステム24 事業開発本部 コンテンツ事業部 事業部長

    ベルシステム24の岩見統之氏は、「頭痛ーる for スゴ得」の開発背景について、「気圧の変化による自律神経の乱れは気象病だけではなく、免疫力などにも影響を及ぼしている」との説明の上、アプリが保有するデータとNTTドコモの免疫力推定AIを掛け合わせた、機能拡張のための開発を行ったと語りました。

    「頭痛ーる for スゴ得」に搭載された「免疫力判定」と「気圧変化の振り返り・免疫力増加のアドバイス」機能

    NTTドコモの石塚淳は、同サービスについて「免疫力推定AIでは、スマートフォンから取得できる睡眠情報、運動情報などから免疫力の変化を推定することができます。そのため、気象の変化と生活習慣の両面から免疫力に対する意識を高め、日々の健康維持に向けたセルフケアにもつなげることが期待できる」としています。

    石塚淳|株式会社NTTドコモ ヘルスケアサービス部 データビジネス担当 担当課長

    各社のサービスを掛け合わせることになった背景について、岩見氏は「もともと、『頭痛ーる』をよりパーソナライズ化させていきたいと考えていました。その中で、免疫力推定AIはユーザーの関心も高いのではないかという期待があった」とし、石塚は「免疫力推定AIは、これまでドコモのヘルスケアサービス『健康マイレージ』で提供されていたサービスです。ヘルスケアサービスはマネタイズが難しいのが一般的な認識ですが、『頭痛ーる for スゴ得』への提供により、こうした課題の解決になることを期待しています。サービス開始当日の12月3日には新機能のページに30万ユーザーのアクセスがあり、ユーザーの関心が高いことがわかりました」と明かしました。

    このベルシステム24とNTTドコモの協業は、両社の既存アセットを組み合わせることで新たな価値を創出し、かつ収益化の道筋をつけた好例といえます。「頭痛ーる」の豊富なユーザーデータと免疫力推定AIの掛け合わせは、ユーザーにとってより包括的な健康管理を可能にすると同時に、ヘルスケアサービスの持続可能なビジネスモデルの1つの形を示しています。

    ビッグデータの活用で事業アイデアの決裁を勝ち取る

    そして、今回のミーティングの最後に登壇したのは、「FemTech Big Data」の構築で女性一人ひとりの「なりたい自分」の実現を目指すFloraでCOOを務める髙田涼太氏。データ連携という形で企業との協業に積極的に取り組んでいる背景について語りました。

    Floraが持つビッグデータの収集源となっているのは、同社が運営するサービス「Moonly」です。これは、女性が生理・排卵日の予測や妊活プランの作成、または更年期症状を管理するためのアプリで、アプリのダウンロード数は15万件に達し「データベースとして信頼性の高いものになってきている」といいます。髙田氏は、それらのデータを企業に提供することの有益性について次のように語りました。

    「当社が持つデータ・ユーザーは、比較的深く、かつ新鮮なため、商品開発における市場調査、試験などのエビデンスの収集、パーソナライズ型の啓発やPRなど、多岐にわたって役立てることができます。

    また、女性の健康に関する商品を開発したいと考えている企業は多いようですが、社内決裁者が男性であることが多いため、なかなか事業の実現に至らないことが課題となっています。今後は、男性決裁者が納得できる商品の事業計画を立てることが鍵になるでしょう。そのためにも、データの活用は有効です」

    Floraが構築するフェムテックのビッグデータは、企業の新規事業創出を後押しするだけでなく、データにもとづく客観的な事業判断を可能にすることで、フェムテック市場における新たなビジネス展開の可能性を広げています。15万人規模の実データを活用することで、これまで感覚的にしか把握できなかった女性の健康ニーズを可視化し、より説得力のある事業計画の立案を実現。今後のフェムテック市場の成長における重要な推進力となることが期待されます。

    髙田涼太|Flora株式会社 COO

    今回のValue Add Femtech Communityミーティングでは、業界の垣根を越えた共同開発やフェムテック事業の立ち上げに関するノウハウ、ビッグデータ活用など、発展途上の市場に効果的にアプローチしていくための事例が紹介されました。事例には、本コミュニティのつながりから生み出されたプロジェクトも含まれています。各社の強みを生かした協業や、データにもとづく事業展開は、より多くの女性の悩みや課題に寄り添いながら、市場の成長を促進する原動力となっていくことでしょう。

    今後もValue Add Femtech Communityでは、イベントやメディアを通じて、フェムテック領域の企業の輪をさらに広げていきます。ぜひ、今後の活動にご期待ください。

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