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Co-Create the Future
2024.10.11(Fri)
この記事の要約
テレビプロデューサーの佐久間宣行氏が、アイデア創出と実現のコツを語るイベントが開催された。
佐久間氏は、メディア分断時代に対応するため、各メディアに適した仮説を立てることの重要性を強調。自己理解と周囲からの認識把握、独自の「原液」となる強みの確立、企画を通すためのKPI設定などを提案した。また、仮説と検証のプロセスを重視し、「失敗の質」を上げることの大切さを説いた。
クロストークでは、データとクリエイティブのバランス、常識にとらわれないアイデア創出、チームビルディングについての質問に回答。仮説にもとづく分析力と柔軟なチーム構成の重要性を強調した。
※この要約は生成AIをもとに作成しました。
目次
会場となったOPEN HUB Parkのほか、ライブ配信にも多くの参加者が集った本イベント。開催の背景について、OPEN HUB代表の戸松正剛はこう話します。
「いつも同じようなアイデアしか浮かばない、企画を立ててもなかなか通らない。こうした悩みを持たれている方は業界や職種を問わず、多くいるのではないでしょうか。
そこで今回は、テレビプロデューサー、演出家、作家、ラジオパーソナリティと多方面で活躍されている佐久間宣行さんに『アイデアを生み出し、形にしていく』ためのヒントをお聞きすべく、本イベントを企画しました。この場で得た気づきを、ぜひ明日から役立ててもらえたらうれしいです」
1999年にテレビ東京に入社した佐久間氏。数々のヒット番組を生み出し、2021年4月からはフリーランスとして自身のYouTubeチャンネルの企画・出演・プロデュース、初のビジネス書『佐久間宣行のずるい仕事術』を出版するなど活躍の場を広げています。
さまざまなコンテンツを手がける中で、佐久間氏は強烈に感じていることがあると話します。
「今、私たちはメディアが分断する時代に突入しています。テレビ、ラジオ、配信、YouTube、書籍とさまざまなメディアの仕事をしていますが、それぞれにファンがいて横のつながりはほとんどありません。例えば、人気YouTuberがテレビやラジオに進出すると、ファンは『YouTubeを踏み台にした』と思って応援しなくなるし、『テレビでご存じの……』という雰囲気をYouTubeに持ち込むと、再生回数は伸びなくなる。6年続けているラジオにも独特の文化があって、『佐久間のつくっているコンテンツは知らないけれどラジオパーソナリティとしては好き』という方が多いのです」
分断の時代をいかに生き抜くか。佐久間氏が立てた戦略はそれぞれに最適なコンセプト構築/ブランディングを模索すること、つまり「メディアごとに“仮説”を変える」というものです。
「ラジオでは芸人さんの裏話をしようかと思っていたのですが、そもそも僕がつくっているものを知らないのであれば、まず僕がどんな人間なのかを知ってもらうのが先ですよね。では何を話そうかと考え、最初は自分自身では価値がないと思っていた『おじさんで、家庭持ちで、サラリーマンです』というパーソナルな話をし始めてから、リスナーがぐんと増えました。
一方、若くてルックスに強みのある人たちが席巻しているYouTubeであれば、不利になりそうなパーソナルの部分では戦わずに、きっちりコストをかけて、テレビで培った企画力とクオリティで勝負しています。
大事なのは、メディアごとに自分が提供できるものは何か、仮説を立てて臨むこと。YouTubeの中に“テレビをつくる”のは他のYouTuberにはできないので、多くの人の注目を集められるのではないか、そう考えてコンテンツをつくることで、ある程度の結果を出すことができました」
ひとつの方法論では対応しきれない「メディア分断時代」だからこそ、フィールドごとに異なる仮説を立て、マルチチャネルに対応する。良質なアイデアを生み出すためのカギとなりそうな、佐久間氏の実体験にもとづく“仮説”への考察に、参加者は熱心に聞き入っていました。
フリーランスになる以前は、22年間にわたり会社員生活を続けてきた佐久間氏。どんなに画期的なアイデアも、上司や周囲の理解を得ることができなければ形にするのは難しいもの。仮説を“ヒットにつなげる”ための土台づくりとして重要なのが「自分を知る」ことだと語ります。
「自分の得意分野や強みを把握するのと同じくらい、『あの人ってこういう人だよね』と周りから認識されているキャラクターを知ることが大事です。自分が思う自分ではなく、他人から見えている自分をどれだけ客観的に捉えられるか。
組織の中での立ち位置が分かれば、振る舞い方も見えてきますよね。それが自分自身のブランドになり、本当にやりたい仕事ができる環境へとつながります」
「営業でも企画でも、どんな仕事においても『これが自分のやり方だ』といえるものを持っておくことが大切で、例えばジンのような強いお酒はそれ単体で飲むと苦いけれど、いろいろなものを混ぜて割ればおいしいカクテルになりますよね。“自分だけの原液”を持っていれば、違う場所に行った時にも、“自分自身の味”を軸に新しいアイデアを生み出すことができます。
僕は『お笑いのカルチャーに映画や演劇、音楽のカルチャーを混ぜ合わせる』という原液をつくりました。その原液だけだと味が濃すぎるし、逆にマーケティングだけだと味気ないアイデアしかつくれない。でも双方を掛け合わせれば、仮に失敗してもそれは新しいチャレンジをした結果として貴重な知見になります。こうした知見を積み重ねて“仮説と検証”の質を向上していくことでしか、まだ市場にない新たなコンテンツを生み出すことはできない、そんな感覚があります」
続いて第2部では、OPEN HUB代表の戸松とのトークセッションがスタート。参加者から寄せられたさまざまな質問に佐久間氏が回答し、会場はさらなる熱気に包まれました。
戸松正剛(以下、戸松):1つめの質問はIT業界管理職の方からで、「定量データがあふれている世の中で、データとクリエイティブのバランスをどのように考えていますか?」です。生産性を担保する上でデータドリブンは欠かせない手法ですが、クリエイティビティとデータ分析を掛け合わせてヒットを生んでこられた佐久間さんはいかがでしょうか?
佐久間宣行氏(以下、佐久間氏):データはもちろん大事ですが、クリエイティブの段階ではあまり意識しないですね。左脳できっちりマーケティングを考えて方向性だけ決めたら、あとは自分が面白いと思うことに重きを置いています。
戸松:なるほど。逆説的ですが、「自分が面白い」というセンス(右脳)をフィルターとして市場を捉えることができれば、データに新鮮な価値を見出せるし、アイデアに既視感が生じるのも避けられそうですね。
2つめは製造業界マネージャーの方から、「常識に捉われないアイデアを生み出すための判断基準は何でしょうか? 佐久間さんおすすめの『仮説と検証の方法』を教えてください」。こちらも興味深い質問です。
佐久間氏:他人の企画に対して仮説を立ててみるのがおすすめです。例えば、大作映画が公開されるなら、この映画はこういう理由でヒットする、あるいはヒットしない、と自分なりの分析と予想を立てて、結果が出るまでしばらくウォッチしてみる。それでもし外れれば、自分の仮説が間違っていたことがわかりますよね。それをいろんなところで繰り返して仮説のつくり方の精度を上げていくと、いざ自分自身の仮説を立てる時に役に立ちます。
戸松:確かに、そもそも客観的な分析力が育たなければ、自分の仮説の質も向上しないですよね。
佐久間氏:そうなのです。だからYouTubeでもアニメでも何でもいいので、ヒットした理由は何なのか、自分に関連する業界で当たったものの仕組みを自分なりに理解してストックするようにしています。
戸松:続いて3つめ、最後の質問です。「良いアウトプットにつなげるためのチーム像とは? チームや協力者との連携で意識していることはありますか?」ということで、総合商社勤務の方からですが、こちらはいかがでしょうか。
佐久間氏:一人ひとりの良いところを見つけるようにしています。実は人見知りを直すために始めたことなのですが、「この人はここが得意だな」というのを普段から把握しておくと、何か頼むときに「君はこれが得意だからお願いしたい」と言いやすいし、「なんのためにここにいるのか」が腹落ちしていると、人はやる気を出しやすいですよね。これをやり始めてからチームの空気が良くなって、生産性も上がったように感じます。
戸松:佐久間さんがチームを組む時に気をつけていることはありますか?
佐久間氏:プロジェクトのフェーズによってメンバーを最適化していくことですね。例えば、新しいジャンルに参入する時ほど、自分と気の合わない、価値観の異なる人を入れるようにしています。「本当にそれでいいのですか?」と物おじせずに言ってくれる人がいないと、視聴者が興味を持ってくれるかどうかを冷静に判断できないからです。
戸松:良いチームをつくってもうまくいかない時はどう対処していますか?
佐久間氏:そのプロジェクトにおける“トンマナ”を決めるようにしています。これは違うなというパフォーマンスをしている人がいたら、「それはやっちゃいけないこと。なぜならそれをやると○○が起きて△△になるから」という“やらないルール”を設けていって、そのコンテンツで何を大事にすべきなのかを皆で共有することを心がけています。
戸松:なるほど。先ほどの「社内コミュニケーションの大切さ」にも関わってくる話ですが、持続的にヒットを生むこととチームビルディングには密接な関係があると思うので、参考にされる方も多いはずです。
質問は尽きないのですが、今日は“仮説の立て方”をキーワードに、組織の中で個性を発揮しながら事業や企画を実現していく佐久間流の仕事術を学ばせてもらいました。本当にありがとうございました。
時代を牽引するヒットメーカーの思考に触れ、ビジネスにおいてクリエイティビティを発揮するヒントを模索した本イベント。
上司や同僚もコミットしたくなる魅力的なオリジナルKPIの立て方など、優れた仮説を結果に結び付けるためのより詳細な講演内容や、ここでは紹介しきれなかった「インプットのコツは?」「うまくいかないプロジェクトのやめ時は?」「リーダーが知っておくべき若手の育成法は?」といった質問への回答でもにぎわった当日のオンデマンド配信は、こちらからご覧いただけます(視聴には無料の会員登録が必要です)。
また、「価値創造のこれから」をテーマに、さまざまな業界で活躍されている有識者をゲストに招いて10月23日に行う次回イベント、「【OPEN HUB×amana】『価値創造』のこれから データ×感性=『価値創造』の答え合わせ」の詳細と観覧予約はこちら。
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