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Partnership with Robots
2023.08.25(Fri)
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九法崇雄(以下、九法):異なる分野で注目を集めるお二人ですが、今回のキーワード「SF」をはじめ相通ずる部分は多そうですよね。稲見教授は研究者として、SFからどのような影響を受けているのでしょうか?
稲見昌彦氏(以下、稲見氏):フィクションをつくっている方々は、空想よりもリアリティを大切にしていますよね。以前、アニメ『ROBOTICS;NOTES(ロボティクス・ノーツ)』の制作陣とお会いした時、「99%の科学と1%のファンタジー」をスローガンにつくっていると伺ったことがあります。一般的なSF作品だと、8割がリアリティ、フィクションの要素は2割といった感じでしょうか。私の研究者としての仕事は、その“2割の中にある手が届きそうなもの”を見つけて、実現していくことだと思っています。
逆に、シナリオライターや小説家の方々が作品のリアリティを高めるために、私たちの研究を引用することもあります。例えば、あるマーベル映画の劇中で透明になる技術が使われる際、「再帰性反射パネル展開」というセリフが出てきます。SF作品『攻殻機動隊』に登場する透明化スーツの実現を目指して私たちが開発した「光学迷彩」には、再帰性反射材というものが使われているんですが、これを引用してリアリティを高めている。そういったフィクションと研究の相互作用にはおもしろさを感じますね。
「光学迷彩」の施されたポンチョを着用し、姿が透けて見える様子
最近は研究者の中でも「SF思考」というワードが流行っています。多くの研究者が、程度の差はあれ、SFに影響を受けているのは確かだと思います。なぜ影響を受けているかというと、研究の先にある世界を予見するためにはSF的な想像が欠かせないからです。
研究者はハードを自分でつくることはできますが、それが展開した世界がどうなるかは予見できません。そこで求められるのが、「新しい技術が登場したとき、もしくは今ある技術が次のステージへ進化を遂げたときに、どんな社会が実現するのか」というバーチャルリアリティ的な想像。社会とテクノロジーの関係について、研究者も責任を持って考えなければいけない中で、そのトレーニングとしてSF思考は意義があります。
もちろん、研究者が想像したSF的な世界観がエンターテインメントとしておもしろいかは別の話ですが(笑)。その点、小川さんの著作には非常に感心させられました。『地図と拳』の中で、登場人物のとある研究者たちによって、まさにそうしたSF的な思考実験が為されるシーンが描かれている。とても驚きました。
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ロボットと人との共生