DIVE to METAVERSE

2023.04.21(Fri)

メタバースの流行はこれから本格化?
市場リサーチから読み解く、メタバースの現在と未来

#金融 #メタバース #製造
現実と仮想現実が遮断されずリンクすることで、コンテンツの消費やイベント参加、商品売買といったさまざまな経済活動の展開が可能なメタバース空間。情報技術の革新に伴って、今後のメタバース市場規模は加速度的に拡大することが予見されています。

そこでOPEN HUBは今回、メタバースの認知状況について市場調査を実施。ビジネス/利用者それぞれの目線から、日本のメタバースが向かう近未来をレポートします。

目次


    OPEN HUBはインターネットモニターによるWebアンケートにて、従業員数1,000名以上の企業に勤める、ビジネスパーソン400名にメタバースの調査を実施しました。

    調査概要
    対象者:従業員数1,000名以上の企業に勤めるビジネス従事者
    回答方法:インターネットモニターによるWebアンケート
    実査期間:2023年2月10日〜14日
    有効回答数:400人
    調査企画:NTTコミュニケーションズ
    調査実施:矢野経済研究所

    本調査および記事では、メタバースを以下のように定義しています。
    メタバースは、コンピューターの中に構築された3次元の仮想空間やそのサービスを指します。利用者はオンライン上に構築された3次元コンピューターグラフィックスの仮想空間に世界中から思い思いのアバターと呼ばれる自分の分身で参加し、相互に意思疎通しながら買い物や商品の制作・販売といった経済活動を行ったり、そこをもう1つの「現実」として新たな生活を送ったりすることが想定されています。

    メタバースとは? ビジネスへの活用事例と導入のメリット・課題

    もう誰もが知っている?メタバース認知の現在地

    メディアで取り上げられることも珍しくなくなってきたメタバース。はじめにメタバースの認知状況を調査してみると、メタバースを認知している人(「よく知っている」+「まあ知っている」+「聞いたことがある」)は88.2%に及び、約9割の回答者には、メタバースの認知がすでに広まっているといえる結果となりました。ただ、「よく知っている」人は8.5%にとどまっており、認知が広がる一方で、十分な理解を伴って浸透するまでには至っていないようです。

    なお、業種別で見てみると、情報通信業、製造業といった業種で全体平均よりやや高い認知傾向が見られます。また、理解が進んでいると思われる「よく知っている」と答えた割合では、情報通信業に高い傾向が見られました。

    また、メタバースの利用経験については、「利用したことがある」と答えた人は全体の8.8%と1割未満であり、利用経験のない人が大半であることが分かりました。

    利用経験がない人に限ってみると、「利用してみたい」人の割合が「利用したくない」人をやや上回る結果となっています。「利用したことがある」人を含めると、利用に前向きな回答割合が56.3%と6割近くになり、認知の拡大とともにメタバースへの利用意向も高まってきているといえそうです。

    このように、認知と利用意向の拡大傾向が分かったメタバース。利用経験者に感想を求めたところ、「ワクワクした」、「世界が広がった」、「没入感がすごい」という肯定的な意見が多く見られた一方で、「違和感がある」「まだまだ発展途上」といった意見もある程度見られます。メタバースは「新しい体験をもたらしてくれるが、改善の余地はある状態」ともいえるかもしれません。

    期待が高まるメタバースのビジネス活用

    2つの質問から見えてきた、メタバースへの認知と利用意向の高まり。次は、利用する目的・興味の対象について紐解いていきましょう。メタバースで「利用者としてやってみたいこと」について多かった回答は、「ショッピング」「イベントの主催・参加」「ユーザー同士の交流」といったものでした。しかし一方で、「特になし」という回答が41.0%と最多の割合になっており、具体的な利用シーンを思い描くところまでは至っていない人も多いようです。

    また、「バーチャルオフィス」への回答も一定数見受けられ、プライベートだけでなくビジネスにおけるメタバースへの期待もうかがえます。

    そこで次に、メタバースのビジネス活用において有望視されているものを調査。すると「利用者としてやってみたいこと」と同様に「イベント」に対する回答が高かった一方で、「EC/ショッピング」が3番目になるなど、やや異なる傾向に。そして「特になし」の回答は、利用者としてでは41.0%であったのに対して、ビジネスとしてでは33.8%へと減少。ビジネスの方が具体的な利用シーンを想起しやすいようです。

    次に、自社のビジネスにおける、メタバース活用意向の有無を調査。利用したいと感じる人(「非常に感じる」+「まあ感じる」)は、全体の31.8%という結果になりました。

    この回答結果をメタバースの認知度別に再度集計したところ、メタバースに対して理解の高い層ほど、メタバースをビジネス分野で活用する意向が強い結果となっています。

    メタバースを「よく知っている」と回答した人のビジネス活用意向は、前向きな層(「非常に感じる」+「まあ感じる」)が76.5%、同様に、メタバースを「まあ知っている」と回答した人における前向きな層は46.8%と、メタバースの理解度とビジネス活用への意向について相関傾向がうかがえます。

    また、「どのようなビジネスを行いたいか」の自由回答においては、金融業において「遠隔地の顧客へのサポートが可能になる」といった意見が見受けられました。今後メタバースの理解が浸透するにつれて、ビジネスでの活用意向はますます高まっていくことが予想されます。

    メタバースは3年後がアツい?

    メタバースの将来の普及予測については、「社会全体に普及する」「社会の一部で普及する」という前向きな見通しが66.8%を占める結果に。「全く普及しない」と考える人はわずか9.0%にとどまっており、3人に2人の割合でメタバースの普及を予測している結果となりました。

    また、「メタバースでできるようになれば利用したいと思うこと」という自由回答を見てみると、ショッピング、旅行、ビジネスといったすでに活用が想定されているジャンルのほかに、「通訳不要のリアルタイム翻訳」「触覚や味覚の体験」「遠隔治療」「ゴーグル等のデバイス不要化」といった新しい体験を求める回答が散見されました。今後さらに技術的な進化が進むと、「やってみたい」と感じる人や、普及を予測する人はより増えていくことでしょう。

    最後に、メタバースがいつごろ流行するかの予測時期を調査。72.2%の回答者が具体的な予測時期を回答するなか、「1〜3年先」という回答がもっとも多く21.5%、さらに、流行は「すでに始まっている」という回答は11%にまでのぼっています。

    メタバースを「利用したことがある」8.8%を上回るこの数値は、メタバースの流行を感じさせるムードが醸成されつつある現況をあらわす特徴的な結果といえるでしょう。

    メタバースに対する認知は大半を占めるものの、理解の深い人々や利用経験者はまだ少数ということが分かった今回の市場調査。しかし7割以上の人がメタバース普及の具体的な予測時期を回答していることから、今後のコンテンツやサービス、デバイスなどのアップデートが進んでいくことでユーザーは拡大し、マーケットの成長が期待できると捉えることができます。予測困難でビジネス競争の激しいこの時代を勝ち抜くためにも、メタバースに乗り遅れないような施策を今から打っていくことが必要なのではないでしょうか。