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2023.03.24(Fri)

Amazon Connectの「かゆいところ」に
NTT Comはどう対処したのか?

#CX/顧客体験
近年、コンタクトセンターは「オンプレミス型(以下、オンプレ)」から「クラウド型」への移行がトレンドとなっており、フルクラウド型のコンタクトセンターソリューションである「Amazon Connect」に注目が集まっています。しかし、Amazon Connectは海外発。日本のコンタクトセンターでも問題なく利用できるのでしょうか。NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)では、自社で運用する中で導入の課題発見と解決のノウハウを蓄積。さらには「かゆいところ」まで対応するソフトフォン「Your Connect」と「コンタクトセンターKPI管理ソリューション-Dashboard-(以下、KPIダッシュボード)」を独自に開発しました。これらをご紹介するためのウェビナー「NTT ComだからできるAmazon Connectの徹底活用法~使って困って改善した内容を特別に共有~」の要旨をお届けします。

NTT Comの自社センターにおけるAmazon Connect導入の全容

3部構成のウェビナーでは、まずNTT ComがAmazon Connectを導入して運用する、自社のコンタクトセンターにおける活用ノウハウが明かされました。コンタクトセンターで利用するCTIシステムの開発・運用を担当するマネージド&セキュリティサービス部の武藤朔太郎、顧客へのAmazon Connectの提案・導入を担当するソリューションサービス部 デジタルソリューション部門の衛藤和宏と河原理菜子(モデレーター)によるクロストークが展開されました。

武藤:NTT Comのコンタクトセンターでは、法人向けにサービスオーダーのデリバリーや、カスタマーサポート、故障受付などを行っています。東京、仙台、金沢、札幌などを拠点とし、合計約1,200席規模で運営しています。24時間365日の対応が求められるミッションクリティカルなセンターです。

私たちのコンタクトセンターでは、電話のみのチャネルに縛られない、チャットやWebフォームなどの複数チャネルでお客さまとの接点を増やすオムニチャネル化、応対の自動化による効率化、リモートワークへの対応を目指していました。しかし、既存のコンタクトセンター基盤では2つの課題によって実現が難しい状況でした。

武藤朔太郎|NTT Com マネージド&セキュリティサービス部

1つ目は、コンタクトセンターのシステムはオンプレ基盤のため、機能を追加したり設定を大幅に変更したりしようとすると開発コストが大きくなってしまい、オムニチャネル化にも時間がかかってしまうという点です。

2つ目は、専用線で接続したセンターの固定電話で業務を行っており、リモートワークへの対応が難しいという点です。

そこでフルクラウドのAmazon Connectを検討したところ、インターネット接続が可能で、かつパソコンで使えるソフトフォンで応対できるため、電話応対のオペレーターのリモートワーク化を実現できることがわかりました。

また、クラウドベースでAPIが用意されているためシステム連携が容易ですし、簡素なコード記述だけのNoCode/LowCodeで音声基盤が開発可能なため、スピード感を持って開発を進められることがわかりました。実際に、他のAWSサービスと組み合わせて、短期間で一次問い合わせを自動回答するなどの効率化も実現できています。

河原:最近はリモートワークが当たり前になりつつありますし、開発しやすいというのもSaaSが人気の理由ですよね。

河原理菜子|NTT Com ソリューションサービス部

武藤:開発の手間が少ないのはもちろん、お客さまにお伝えしている電話番号を変更する必要がないこともうれしいポイントでした。電話番号を変更することになれば、システム面の変更だけでなく、Webサイトでの周知など、いろいろな手間がかかってしまいますが、Amazon Connectの場合、NTT Comが提供するフリーダイヤルやナビダイヤル、Arcstar IP Voiceと組み合わせ、電話番号もそのまま使い続けられます。

河原:実際に導入してみていかがでしたか。

武藤:メリットとしては、開発と運用の両面における大幅なコスト削減が挙げられます。大部分が複雑なプログラミングなしで内製開発できたこと、開発用サーバーが不要なことなどから、開発にかかるベンダー委託費が90%削減できました。運用工数に関しては、オンプレ設備の保守運用コストがなくなったこと、コールフローを外部ベンダーに頼らずに簡単に変更できること、利用料金が従量課金であることから半減しています。

Amazon ConnectはコールフローをWebのGUIで構築できるため、例えば「接続する電話番号を変える」「営業時間を変更する」「IVRでの選択肢を変更する」といったことを開発ベンダーに頼らず行えます。

河原:一方でデメリットはありましたか。海外製品は日本のコンタクトセンター事情に合わないのではないか、と心配されるお客さまもよくいらっしゃいます。

武藤:そうですね。デメリットは主に3つあります。1つ目は、一斉着信機能がないこと。Amazon ConnectではオペレーターのAvailable(受け可)のステータスが長いオペレーターから順に着信するロンゲストマッチというシステムが採用されているため、一斉着信ができません。

2つ目は、固定電話からソフトフォンに変わったので、音声品質がクライアントの環境の影響を受けてしまうことです。Amazon Connect自体の音質が悪いわけではないのですが、オペレーターの利用回線やヘッドセットなどに起因する音声品質の課題が発生しました。

3つ目は、当時のAmazon Connectの標準ソフトフォンで提供される発着信画面では、アーリーメディア(接続状態前に音声パスを開いて音声を流す機能)が非対応だった点です。

河原:Fit to Standard(クラウドサービスの標準仕様に業務を合わせる導入手法)によるメリットも大きい分、日本のコンタクトセンタービジネスで足りない点もあったのですね。

衛藤:お客さまからも、同じような話を多くいただいています。音声品質については回線の状況、ヘッドセットとパソコンの相性など、さまざまな要因が組み合わさっていることがあります。「支給されたスマートフォンでのテザリングを利用していたら、電子レンジと干渉していた」というケースもありました。そこで、まずは実際に使用する環境での動作検証をお勧めしています。

衛藤和宏|NTT Com ソリューションサービス部

河原:もともと専用線を使っていたお客さまですと、実際に試せることで安心感が高まりますよね。武藤さんのコンタクトセンターでは、どのように課題をクリアしていったのですか。

武藤:AWSへ問い合わせるだけでなく、自社内で運用や開発を工夫しながら対処のノウハウを蓄積していきましたね。一斉着信に関しては、これまでの運用を変えて対応し、変更後は、この後にご紹介する「KPI管理ソリューション」を使って、スーパーバイザーに通知してスムーズにオペレーターをフォローできるようにしています。

音声品質に関しては、クライアントからAmazon Connectまでの環境をエンド・ツー・エンドで切り分け、それぞれの被疑の際の対応方針をナレッジとして蓄積していきました。

衛藤:武藤さんがお話ししたような、実際に弊社センターの運営で蓄積してきたノウハウは、お客さまに価値として還元できています。

河原:自社で実際に導入したからこそ、お客さまと同じ目線で課題解決のノウハウが貯まっている。これは弊社にとって財産ですよね。一方で、どうしても乗り越えられない技術的な壁はありましたか。

武藤:標準ソフトフォンの技術的な課題は、運用面のノウハウだけでは対処しきれません。そこで、自社ブランドのソフトフォン「Your Connect」を開発していきました。

衛藤:Your Connectはお客さまにも提案しており、今年度導入したAmazon Connectの約8割でご利用いただいています。

武藤:私たちの現場の意見を吸い上げながら作っていったので、日本でAmazon Connectを利用しているコンタクトセンターにとっては、かゆいところに手が届くようなサービスではないでしょうか。

導入してから2年近く経ちますが、標準ソフトフォンよりも機能が付加されているので、使い勝手もよく、非常に助かっています。また、私たちからの改善要望がスピーディーに反映されるところもありがたいですね。

衛藤:センターから要望があった翌週に、お客さまから同じような依頼があったことも。先に開発を始めていてリリースも決まっていたので、胸を張って話せました。弊社コンタクトセンターの皆さんと会話をしながら改善を進めていくことは、お客さまにとっての価値にもつながりますし、お客さまが困っていることは私たちのセンターでもすでに困っていることなのだと実感しています。

「アマコネ」をより便利にするNTT Comのソリューション

続いて衛藤から、Amazon Connectの導入支援実績や、より便利にするために独自開発したソフトフォン「Your Connect」をはじめとするソリューションを紹介する講演が行われました。

衛藤:最近では「アマコネ」と略して呼ばれるほど、コンタクトセンター業界における認知が定着しています。しかし、導入するにあたってのお悩みもたくさん寄せられています。

NTT Comでは、これまでに100プロジェクト以上、小規模な10席から大規模では1,200席とさまざまな規模のプロジェクトで導入実績があります。業界も幅広く、銀行、保険、信販といった金融業界、運輸、不動産業界、さらには飲料、玩具、化粧品、そしてBPOと、業界を問わず導入が進んでいます。

また導入して運用を開始するまでの期間についてご質問いただくことも多いのですが、弊社では最短2カ月で提供可能です。最初に要件をヒアリングシートで伺い、見積もりを作成。その後、構築に必要なパラメーターの案を私たちが作成し、お客さまとの合意後に構築を行います。構築後はお客さま自身で操作ができるよう、トレーニングもセットで提供しています。

PCI DSSや閉域網(VPN等)に関する質問も寄せられますが、これらにも対応しています。

また標準ソフトフォンの使いづらさを指摘する声をいただくことがございます。グローバルスタンダードである一方、日本のコールセンター特有のニーズは汲み取りづらいのだと思います。

そこでお勧めしているのが、弊社が提供しているYour Connectです。お客さまの待機状況を可視化、通話先の関連情報表示、操作が一目でわかるボタン配置などUXも考え抜いています。

また、Amazon Connectの標準ソフトフォンにはない独自の機能を豊富にご用意しています。例えば、転送先のオペレーターが現在応答中か、転送可能かをリアルタイムに把握できる「転送先ステータスのリアルタイム表示」、複数の業務を兼務する場合に便利な「発信番号選択」、ヘッドセットを外して別の業務を行いたい場合などに着信音をパソコンのスピーカーに切り替えられる「着信音スピーカー設定」、電話の途中でビデオ通話を利用できる「ビデオ機能」などがあります。

このように、日本のコンタクトセンター特有の機能や要望を盛り込んだソフトフォンです。ぜひAmazon Connectとともにご利用いただければ幸いです。

そんなYour Connectの最新機能や操作方法などはポータルサイト(https://portal.your-connect.com)をご覧ください。こちらはまだ弊社と契約していないお客さまも閲覧可能なサイトですので、これからAmazon Connectを導入しようと考えている方にとっても参考になるのではないでしょうか。

現場目線の品質管理を可能にする「KPIダッシュボード」

衛藤はAmazon Connectの導入を検討中のお客さまから「オペレーターのKPIやステータスを管理できますか?」という質問もよく受けるといいます。NTT Comでは、KPIダッシュボードを独自開発することで、Amazon Connectではできない詳細かつ簡単な品質管理を自社センターで実現し、お客さまにもご提供しています。そこでここからは、 KPIダッシュボードの立ち上げ段階から携わってきたソリューションサービス部 第二マネージドソリューション部門の木本彩夏が、活用方法と導入効果をご説明します。

木本:クラウド型のコンタクトセンターシステムを利用するのは、100席以下の中小規模のセンターも多く、品質管理者がいない場合もあります。しかし、顧客満足度の向上は常に求められます。顧客満足度のカギとなる品質管理を、弊社のノウハウを使ってより簡単にできるようにしたいという思いから、このソリューションは生まれました。

木本彩夏|NTT Com ソリューションサービス部

それでは早速、KPIダッシュボードの概要を見ていきましょう。「誰もが簡単にコンタクトセンターのマネジメントができる」をコンセプトに開発され、活用することでコンタクトセンターの課題を解決に導く分析が容易に実施可能です。Amazon Connectから自動でデータを取得し、コンタクトセンターのKPIを管理できます。

特徴は「操作が簡単」「リアルタイムに確認」「音声から感情分析」の3つ。ダッシュボードは5秒間隔で更新する「リアルタイムダッシュボード」と、最短15分ほどで更新し過去のデータを振り返って分析を行う「ヒストリカルダッシュボード」の2つで構成されています。

リアルタイムダッシュボードは、Amazon Connectでのセンター運営をより容易にする補完機能となっており、各オペレーターや窓口の現状をリアルタイムで把握できます。座席表形式でオペレーター一人ひとりの現状を確認でき、待ち呼が増えた際にはアラートを出すことも可能です。

ヒストリカルダッシュボードは、コンタクトセンターの管理に必要なKPIをこれ1つで確認できるというもので、現場の目線での分析に必要なグラフやデータが揃っています。また、オペレーターやお客さまの過去のデータから感情を可視化できます。

ヒストリカルを見て傾向をつかみ、リアルタイムでコントロールすることで効率的なコールセンター運用が可能です。

実際に弊社のセンターでは、品質管理業務を効率化できています。センターの改善では、1つの指標だけでなく関連する指標まで見る必要があります。例えば、サービスレベルであれば、応答数や発信数、顧客満足度などさまざまな指標があり、複雑に関連し合っています。これら関連する指標をすべて見るにはかなりの労力がかかるため、非常に困難です。

そのような状況下でKPIダッシュボードを導入すると、日次、週次、月次、四半期単位でのレポート作成をダッシュボード1つでカバーできます。当社のセンターで導入前後を比較すると、品質管理者の分析稼働が半分になり、改善活動をよりよく実行できています。また、ノウハウがなくても分析できるようになり、センターを運営するメンバーもより当事者意識を持ってデータを見るようになりました。

自社センターを運営しているNTT Comだから提供できる価値がある

ウェビナー終了後、登壇した4名にAmazon Connectがもたらす価値と、NTT Comが提供する意義を改めて語ってもらいました。

衛藤:少なくともこの1年で、私が提案したのはすべてフルクラウド型です。新規かリプレースかを問わず、オンプレを希望されるお客さまはいませんでした。

河原:お客さまにコンタクトセンター基盤を提案していると、データ活用やオムニチャネル化の要望が高まっているのを感じます。また最近はクラウド基盤側でもトレンドに合わせた投資を実施し、主要サービス同士なら簡易接続が可能なケースもあります。そのためオンプレに手を入れて難易度の高い開発をするよりも、クラウド基盤にSaaSを組み合わせるほうが容易かつ素早く連携できます。世の中の状況が変わりやすい現在は、コスト面だけでなく、変化にスピーディーに対応できるかという観点からもクラウドが選ばれていると思います。

武藤:ただ、既存のオンプレをそのままAmazon Connectに変えようとすると、「今までウチはこうしていた」「あった機能が使えなくなった」というところは必ず出てきてしまいます。

木本:慣れていただかないと仕方ないところもありますが、なるべく快適にAmazon Connectが利用できるようにYour ConnectやKPIダッシュボードでは随時追加機能の開発を行っています。また、自社センターでは、Amazon Connectにマイグレーションしたからこそ、外部システムとの連携等の開発が容易になり電話応対自動化がスピーディーに進められています。こうした事例を知っていただくために、NTT Comの自社センターにおける取り組みを「ショーケース」として社外へ展開していきたいですね。

衛藤:Amazon Connectを自社で使っているからこそ、提供できる価値があります。AWSは高い稼働率を誇りますが、まれにトラブルは起こります。以前、お客さまのコンタクトセンターから問い合わせがあり、弊社センターの状況を確認したところ同じ問題が発生していました。そのため、お客さまの設備ではなくAWS側の問題だという切り分けがすぐにできたわけです。自社で同じサービスを利用している強みを改めて感じましたね。

ここまでNTT ComのコンタクトセンターにおけるAmazon Connectの活用、そしてそれを踏まえた多くのお客さまに向けたノウハウとソリューションをご紹介しました。NTT Comでは自社で活用しつつ、多くのお客さまへAmazon Connectの最適な導入と運用をサポートしております。

Amazon Connect、そしてフルクラウド型のコンタクトセンターソリューションを検討する際は、ぜひNTT Comにご相談ください。

●Amazon Connectに関する詳細はこちら
https://www.ntt.com/business/lp/amazon-connect.html