Carbon Neutrality

2023.03.03(Fri)

カーボンニュートラルに資するICTインフラとは。グリーン化の最新動向

#サステナブル #環境・エネルギー
カーボンニュートラルのための取り組みを加速させる企業が増えるなか、ここ数年の見逃せない変化としては、ICTインフラにおいても対策が求められるようになったことが挙げられるでしょう。NTTコミュニケーションズは、データセンターやクラウドサーバーのグリーン化や電力消費量の削減を推進することで、企業のカーボンニュートラルへの取り組みを支援しています。それらの取り組みについて、同社の川浪実紗と、橘賢一に話を聞きました。

データセンターに求められる低電力化

―昨今、企業がICTインフラの消費電力量やCO2排出量の削減に積極的に取り組むようになった背景について教えていただけますか。

川浪実紗(以下、川浪):インターネットのトラフィックは増大の一途をたどっており、2016年から2030年の間でIT関連機器が消費する電力量は約36倍になると考えられています。

そのなかでも、データセンターは特に電力消費量の多い設備です。全体のトラフィックが増えれば、データセンターに設置されるサーバーも増えていきます。たとえサーバーの計算能力が上がったとしても、計算量そのものが増えれば消費電力が増えてしまうのは明らかです。実際に、サーバー1台あたりの発熱量は、2000年ごろは0.3kW程度だったものが、現在では10~20kWになっています。そうしたなかで、データセンターにかかる電力消費量の削減を行うためにも対策が求められているのです。

もちろん、これまでもデータセンターが無策で運営されてきたわけではありません。低電力・省エネという観点では、1998年ごろからすでにさまざまな取り組みが進められてきました。昨今では、そこにカーボンニュートラルという文脈や、「省エネ法」の改正といった法律に基づいた動きも加わったことで、改めてスポットライトが当たりつつあるのです。

そうした状況を踏まえて、NTT ComとしてはICTのカーボンニュートラル達成のために、より低電力かつ安全にお客さまのデータをお預かりできるサービスを提供していきたいと考えています。

川浪実紗|NTT Com プラットフォームサービス本部 クラウド&ネットワークサービス部 担当課長
法人営業、東京2020プロジェクトマネージャー、NTTアメリカ等でコンサルティングやPMO業務に従事。2021年5月より、データセンターの全体事業戦略を担当。中長期の販売戦略を見据えた新規DCの開拓、在庫確保に向けた取り組みの推進、他社協業施策実行等、国内DC・香港DCのプロダクトマネジメントを推進。

オンプレミスかクラウドか。グリーン化の手段

—具体的に、ICTインフラを有する企業にとってどのような選択肢があるのでしょうか?

川浪:我々が提供しているサービスとしては、大きく2つあります。1つめは「Nexcenter(ネクスセンター)」という名称で展開しているグリーン化に配慮したデータセンターコロケーションサービスです。

Nexcenterでは、これまでもエアフローマネジメント(コールドアイルコンテインメント)の導入やAI温度マネジメントの導入、壁面吹き出し空調方式とホットアイルコンテインメントの導入を実現しました。これらにより、効率的な空調環境を確保し、空調電力損失の削減を実現しています。

将来的にはリアドアや液浸方式など、次世代の水冷式冷却環境の空調機の導入に向けた「古民家再生プロジェクト」を開始。本プロジェクトにより、さらなる電力効率化が実現されると考えています。

さらに、Nexcenterの一部の施設においては、すでに再生可能エネルギーを100%使用し、今後新設するデータセンターにおいては、100%再生可能エネルギーで運用していく予定です。

橘賢一(以下、橘):2つめは、IaaSとして仮想的な環境をご提供する「SDPF クラウド/サーバー」というサービスです。仮想サーバーやファイアウォールなど、一般的なIaaS事業者と同様の機能をそろえており、オンプレミスでご利用いただくNexcenterとは対になる選択肢となっています。

橘賢一|NTT Com プラットフォームサービス本部 クラウド&ネットワークサービス部 担当課長
ISPサービスの事業戦略、インターネットエクスチェンジサービスの営業企画などさまざまなネットワーク商材に関する業務を経て、2021年より現職。現担当では、クラウド商材を中心としたSmart Data Platformサービスのマーケティング・販売企画に従事し、お客さまのDXに資するためのプロダクトマネジメントを推進。

SDPF クラウド/サーバーについても、100%再生可能エネルギーで稼働するサービス拠点を順次拡大し、すでに5割の拠点でカーボンニュートラルを実現しています。また、導入にあたってのCO2排出量の予測や運用実績、既存のオンプレミス環境からの移行によるCO2排出量削減効果のシミュレーションなど、管理画面のダッシュボードからグラフなど視覚的に把握できる機能も備えています。

CO2排出量を予測するシミュレーション機能画面イメージ
CO2排出量を可視化するダッシュボード機能画面イメージ

CSR活動につながる環境証書も

—ユーザーがデータセンターかクラウドサービスかを選択する上で、それぞれにどういった特徴やメリットがあると言えますか。

橘:Nexcenterに構築するオンプレミス環境のメリットは、例えばセキュリティにこだわるなど、自社独自のカスタマイズやコントロールを行いやすい点にあります。

SDPF クラウド/サーバーは、自社でサーバーを調達する必要がないため初期投資コストの削減につながります。コストを抑えつつ、必要なリソースを手軽に増減させられるので、スケーラビリティが高いことなどがメリットです。

川浪:Nexcenterについては、お客さまが利用されているNTTコムデータセンターが多様な脱炭素のご要望に対応した再生可能エネルギーを選択できる電力メニューを、2022年4月から提供しております。

こうした環境証書に関する具体的なメニューとしては、太陽光やバイオマスなどから発電した自社専用の追加性があるグリーン電力を利用する「再エネ」と、環境価値情報を提供する「実質再エネ」の2つに大別されます。

自社専用の追加性があるグリーン電力をご利用されたいというお客さまには、「オンサイトPPA(Power Purchase Agreement:電力販売契約)」のご提案をさせていただいております。追加性とは、その電力を選ぶことで「世の中に再エネが増える」ことを意味します。再生可能エネルギーで発電される太陽光発電、風力発電、地熱発電等(FIT、大規模水力を除く)や、環境価値報告書が付けられた電力のことを言います。

海外のように広大な土地がある場合には自社施設内に導入しやすいですが、日本のように土地が限られる環境では、自社敷地外の遠隔地にある発電所から小売電気事業者を経由して送電することが一般的です。こちらを「オフサイトPPA」と呼びます。

一方「実質再エネ」のなかにも、固定価格買取制度(FIT法)に基づいて国民負担のもと買い取った“FIT”な電気と、FIT制度に頼らず、国民負担を軽減しつつ再エネの導入拡大に資する“非FIT”な電気の2種類があります。

NTT Comがご提供できる非化石証書は、お客さまの意向・方針に合わせて非FIT/FITの選択や、お客さまによる電源種別の指定が可能なメニューをそろえております。

橘:環境証書や、SDPF クラウド/サーバーの利用時CO2排出量の削減数値などは、例えばCSRの報告書に記載することも可能で、環境経営やSDGsへの取り組みのアピールとしても活用いただけます。

グリーン化の支援でカーボンニュートラル達成を

—今後、こうしたサービスを拡充、普及させていく上で、NTT Comとしてどのような取り組みが重要になっていくのでしょうか。

川浪:電力消費量が増加していく傾向は回避できないという状況のなかで、データセンターの電力使用効率をいかに下げていくかということが重要だと考えます。これは「PUE(Power Usage Effectiveness)」という指標で示され、PUE値が1.0に近くなればなるほど、電力使用の効率がよいデータセンターということになります。先ほど申し上げたような熱効率の優れた空調設備の導入など、技術的なアップデートによって、よりPUE値の低いデータセンターサービスを提供していくことが我々の役割だと思っております。

近年では、企業価値として「RE100(Renewable Energy 100%)」のような国際的な評価基準や、カーボンニュートラルの指標が重要視されております。そうした潮流のなかで、NexcenterやSDPF クラウド/サーバーのグリーン化に関する問い合わせは、国内外を問わず幅広い分野・業種のお客さまからいただくようになりました。

特に、データセンターを使ってオンプレミス環境を構える場合にはグリーン対応は必須だと考えている方が多い印象です。データセンターは5~10年での運用が前提になりますので、中長期的な社会のニーズに応えるためにはグリーン化が欠かせない要素となるのです。

弊社としてはそうしたニーズを持つお客さまに、グリーン化の価値をより実感していただけるようなICTインフラサービスを提供すべく、引き続き努力していきたいと思っております。