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Manufacturing for Well-being
2023.02.17(Fri)
目次
日本のアパレル業界では、大量生産を前提とした製造スキームによって大量の余剰在庫が発生し、年間で100万トンもの衣類が廃棄されています。この事実は「サステナビリティ」の観点だけでなく、労働環境をより改善して労働の質を高める「ウェルビーイング」の観点からも問題といえます。そこで、その解決に向けて立ち上がったのが、熊本発のスタートアップ「シタテル」です。
シタテルが開発・提供している「sitateru CLOUD」は、アパレル業界のバリューチェーン全体の様々な課題に対応したアパレルクラウドサービスです。大きく「衣服の生産に関する課題」と「衣服の販売に関する課題」に対応しています。
「衣服の生産に関する課題」に対しては、衣服生産のワークフローにおける情報管理と工場とのコミュニケーションをデジタル化することで「業務の管理・見える化」「取引の効率化」「サプライチェーンの最適化」を可能にし、衣服生産のコストを削減するだけでなく、生産性の向上も実現します。
「衣服の販売に関する課題」に対しては、在庫ゼロの製販一体型ECパッケージを提供。必要項目を入力するだけでECサイトの開設が可能です。また決済機能や物流管理機能も利用可能で、販売促進を図るとともに在庫の削減を実現します。
「sitateru CLOUD」の導入が進むことでアパレル業界の非効率な部分が改善され、ひいてはサステナビリティの向上が期待できるでしょう。シタテルの今後に注目です。
「GUSSスプレーヤー」は、米国カリフォルニア州キングスバーグに拠点を置くGUSSが開発した自立型農薬散布ロボットです。
例えば、カリフォルニアではさまざまな果物の栽培が盛んですが、そうした果物の栽培には農薬や除草剤などの散布が欠かせません。カリフォルニア州では古くから、農園から委託を受けて農薬や除草剤の散布を代行する「スプレーヤー」と呼ばれる外注業者が存在していました。GUSSも、1982年に創業したそうしたスプレーヤーの1社です。
ところが、スプレーヤーには共通して直面する課題がありました。それは、農薬散布を人の手で行わねばならず、危険が伴うこと。それゆえ散布作業員のなり手が少なく、慢性的な人手不足に悩まされているのです。
そこでGUSSは2014年に外部からエンジニアを招聘し、自律型農薬散布ロボットの開発を開始。5年の歳月をかけて、自律型農薬散布ロボット「GUSSスプレーヤー」が完成しました。GPSとLiDARを使って自分の位置を確認し、設定されたルートに従って完全自動で農薬を散布。ロボットの動きは専用モニターでモニタリングでき、オペレーター1人当たり最大8台までモニタリング可能です。「GUSSスプレーヤー」は、農薬散布という危険な仕事から人間を解放し、同時に農園の経営効率と生産性を飛躍的に高めています。
NTTドコモは、アメリカのドローンメーカー「Skydio」と資本・事業提携し、さまざまな産業におけるドローン活用を推進しています。Skydioのドローンのなかでも「Skydio 2+」と「Skydio X2」はSkydio Autonomyという自律飛行技術を強みとしており、上下に6つ搭載されたカメラで周囲360°の全方向を認識し、その情報をAIが判断に利用して障害物を自律的に回避。この「障害物回避機能」を活用することで、従来のドローンよりも点検対象物に安全に近づき撮影することが可能になります。
また「Skydio 2+」には上下90度に動くカメラやデジタルズーム機能などを搭載。これを活用することで、機体操作を最小限にしながらインフラ施設の点検や巡回・確認などが可能です。さらにGPSが取得しづらい橋梁下や屋内などの環境でも安定した飛行が可能になり、さまざまな用途で活用されています。
一方、「Skydio X2」は産業用途に特化しており、バッテリー稼働時間などの基本性能を「Skydio 2+」より向上させただけでなく、サーマルカメラによる熱源の検知が可能となるため、設備点検だけでなく災害支援などでも活用可能です。また、リアルタイム映像伝送サービスを利用すれば遠隔地でもドローンの映像を確認でき、場所を問わず作業の支援ができます。
NTTドコモでは、Skydioのドローンの販売、技術検証や運用検証に加え、「かんたんデータ取得パッケージby Skydio」「どこでも巡回パッケージby Skydio」といった撮影や巡回業務での活用に特化したSkydioのドローンを使ったパッケージサービスも提供。労働現場の安全を守り、労働の質が高まるようにさまざまな産業におけるドローン活用を推進しています。
ここまで、働き方を変えてウェルビーイングを大きく向上させるであろう先進事例を3つご紹介しました。それぞれ「クラウドコンピューティング」「自動運転技術」「自律型ドローン」というテクノロジーを活用してサステナビリティや、ウェルビーイングを確保しようとしている取り組みです。
こうした取り組みが進めば、ものづくりやそこに携わる人々の労働の質は飛躍的に向上することでしょう。そして、社会全体のウェルビーイングが向上し、人々がより幸福になるかもしれません。テクノロジーの活用とウェルビーイング向上が、今後ますます不可分な関係になるのは間違いないようです。
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Manufacturing for Well-being
モノづくりとニッポンのウェルビーイング