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2023.01.27(Fri)

レベル4解禁で拓かれるドローン市場の新時代。NTT Comが目指す“空の道”とは

#ロボティクス #IoT #Smart World #モビリティ
2022年12月5日、改正航空法施行により無人航空機(ドローン)の「レベル4飛行」がついに解禁。ドローン市場は新たな段階に入りました。

同月、NTTコミュニケーションズはドローン事業「docomo sky」について記者会見とデモを開き、レベル4飛行に対応したドローン機体とモバイルネットワーク、プラットフォームの提供を開始していくことを宣言しました。

市場拡大を前に、docomo skyはどのようにしてドローンビジネスを加速させようとしているのか。NTTコミュニケーションズ 5G&IoTサービス部 ドローンサービス部門長の柏大氏に話を聞きました。

目次


    —改正航空法施行によりドローンの「レベル4飛行」が解禁されました。まずは、日本におけるドローンビジネスのこれまでの歩みについて教えていただけますでしょうか。

    柏大氏(以下、柏氏):日本でドローン市場が盛り上がり始めたのは2016年ごろからでした。当時はまだ夢を語ることが多い状況でしたが、現在ではより現実的な運用について取り組むまでになりました。

    分野ごとに見ても、当初はデモンストレーションの色合いが強いエンターテイメント分野の話題が多かったですが、現在は橋梁や道路、ダムなどといった高所や危険な場所でのインフラ点検や倉庫や建設現場での巡回、農業ではドローンの空撮とAI(人工知能)分析を組み合わせて雑草の分布や作物の生育状況などを判断するといった実用的な使い方がされています。

    —なるほど。レベル4飛行の解禁によってビジネスシーンでの利用範囲はさらに広がるのでしょうか。

    柏氏:レベル4飛行が解禁されると、制度としては「有人地帯」での「目視外飛行」が可能になります。従来、ドローンの目視外飛行は、離島などの無人地帯で

    のみ可能で、人が住んでいる地域で飛ばすことはできませんでした。しかし、今後は居住エリアの付近でも飛ばせるようになります。

    これによって物流や災害対策といった分野においても本格的なドローンの運用が増えていくでしょう。人の目に見えるところでドローンが飛び交っているという世界を社会が受容できるようにするためには、安全対策やルールづくりなどの課題を一つひとつ解決していかなくてはなりません。今回のレベル4解禁は、その第一歩が踏み出されたのだと言えます。

    柏大|NTTコミュニケーションズ 5G&IoTサービス部 ドローンサービス部門長
    長年SDx(Software Defined everything)の技術開発・商用導入に従事。SDxエバンジェリスト。2021年より5G/IoT領域のサービス開発をリード。2022年よりドローンサービス部門長としてさまざまなドローンソリューションの社会実装を目指している。

    有人地帯での目視外飛行は、機体や飛行ルートの安全性を確認するために事前申請が必要になります。飛行ルートに関しては、有人地帯が解禁されたとはいえ、自治体などと事前の合意がとれたエリアなどある程度管理された“空の道”のなかでルートを事前申請する方法が当面は主流になるのではないかと予想しています。

    また今回の法改正で、立入管理措置を講じた無人地帯でライセンス所有者が機体認証を受けたドローンを飛行させる場合は、事前の許可・承認が不要となりました。従来はドローンを飛ばす際には事前申請が必須でしたので、それと比べると商用ドローンなどをかなり手軽に運用できるようになり、利用率は増えていくでしょう。

    ―そうしたなかで、今回NTTドコモはドローン事業であるdocomo skyにおいてレベル4飛行に対応したサービスの提供を宣言しました。どのようなサービスを提供するのでしょうか。

    アメリカのドローンメーカーSkydio, Inc.(以下、Skydio社)やその他国内外のドローンメーカーと連携しながら、機体と通信プランをワンストップで提供し、ドローンを活用した社会課題の解決に向け、サービスの創出を行っていきます。目視外の長距離飛行においては上空でのモバイル通信が必須となりますので、ドローン向けの通信料金プラン「LTE上空利用プラン」を展開しています。また、飛行や映像解析などを一元で管理できるドローン向けクラウドプラットフォーム「docomo sky Cloud」の提供も行います。

    すでに本サービスを利用していただいている例としては、北海道の牧草地における雑草検知やジャガイモの病害検知の作業をdocomo skyのドローンソリューションを活用して効率化した事例があります。

    そのほか、点検や巡回、農業、物流、遠隔操作など用途に応じたドローン機体を用意し、実証実験を通じて実用化を進めています。さまざまな用途に応じられるよう、ドローンメーカーと協力して機体やアプリケーションの開発を行っているのです。 12月に千葉県で開催されたデモの様子を交えながら、docomo skyのソリューションやユースケースの一部を紹介します。

    点検・巡回ソリューション

    橋梁・鉄塔などのインフラ点検では、Skydio社のドローン「Skydio 2+」が使用されています。ドローン自体が3Dスキャンによる空間のマッピングを行うことで、GPSに頼ることなく飛行することができるのです。ドコモ基地局の鉄塔点検や首都高速道路、建設現場等でも実際に活用されています。

    Skydio社「Skydio 2+」

    巡回のためのソリューションはSkydio 2+および同機を内蔵する発着用のドローンステーション「Skydio Dock」を使用。プログラムされた巡回時刻に合わせて自動でDockから発進して巡回を行う。建設現場で実際に導入されている。

    農業用ソリューション

    農薬散布にはNTT e-Drone Technologyの「AC101」という機体が使われます。農業における除草作業では、ドローンによって撮影された畑全体の画像をAIで解析した後、除草剤の散布が必要なエリアをピンポイントで飛行します。

    NTT e-Drone Technology「AC101」

    物流用ソリューション

    物流に対応するのは、国産メーカーの空解「QUKAI QUAD」です。docomo IoT高精度GNSS位置情報サービスによって高精度な移動と離着陸を実現します。

    本ソリューションは、約40キロメートル離れた離島への救援物資などの運搬実証実験に成功しています。従来のGPSの単独測位では位置の誤差が数メートル程度発生することがありましたが、本機は受信機へ高精度GNSSの位置補正情報をリアルタイム配信することで、1秒ごとに数センチメートルの誤差内の高精度測位が可能となりました。実証実験では、あらかじめ設定した着陸ポイントに対して、海風の影響の下、自動で正確に着陸することに成功しました。

    空解「QUKAI QUAD」

    セルラードローン

    LTE対応のセルラードローンとして展開するParrotの「ANAFI-Ai」は、LTE回線を使った遠隔操作が可能です。デモでは、千葉県浦安市から埼玉県さいたま市に設置したドローンをリアルタイムで操作する様子を公開しました。モバイルネットワークを活用することで、目視外飛行や自動運航による長距離飛行でも、シームレスな通信が可能になります。

    Parrot「ANAFI-Ai」。4800万画素カメラやステレオカメラにより2D写真や映像撮影、さらにフォトグラメトリによる3Dモデルの作成にも対応可能

    高セキュリティのフライト

    ACSLのSOTEN(蒼天)は、データの暗号化や閉域網通信を駆使した「セキュアフライトマネジメントクラウド」に対応しています。セキュアフライトマネジメントクラウドは、フライト計画の作成や機体に関する情報管理などの機能を提供するクラウドサービスです。機体と操作機器間を閉域網で接続することで、安全なフライトを実現する「閉域網プラン」も用意しており、機密性の高い用途でもご使用いただけるものになっています。

    SOTEN(蒼天)

    ―有人地帯での目視外飛行を前提としたサービス提供をさまざまなシーンにおいて行っていく上で、どのような部分に注意を払わなくてはいけないと考えていますか。

    柏氏:まずは安全性です。ドローンの目視外飛行が実現した先に見据えられているのは、「自律自動飛行」による産業革命のようなものだと思っています。つまり、人間の手から離れたところで、ドローンが自動で仕事を進めていく世界ですね。そのためには、自動運転・自律運転のための技術と並行して、通信ネットワークにAIなどを駆使した制御技術を組み合わせた安全な運行を実現するための技術も発展させていかなければなりません。また、強い風が吹いてきた、雷が落ちてきたなど、予期せぬトラブルに備えて、フェイルセーフな仕組みも必要になります。

    有事の際に備えるならば、社会的なルールづくりも重要になります。責任の所在についてどう考えるのか、人や機体が被害を被った場合にはどういった保障をするのか。こういった部分の仕組みやルールづくりは不可欠だと考えています。

    ―なるほど。そうした変革に対する人々の理解を促すことも大切になりそうです。ドローンビジネスの次のステップとしてはどのような展開が必要でしょうか。

    柏氏:実用化が進んでいる領域が既にあることをより広く知っていただき、ユーザーの幅を広げ、数を増やしてくことが重要です。そのためには、ドローンの仕組みだけでなく、どのようなアプリケーションが揃っているのかについても認知していただく必要があると考えています。

    また、物流や災害対策のような領域は実用化のためにはまだ課題が多く、社会や業界を巻き込んだ改革が必要です。弊社としてもなるべくオープンなスタンスでアセットを開放したり、さまざまな業界のパートナー様と協力して、実証や検証を進めていきたいと考えています。
    物流におけるマイルストーンとしては、2025年の日本万国博覧会が契機になって大きく動き始める可能性はあると思っています。

    また、東京都がベイエリアを舞台に進めている「東京ベイeSGプロジェクト」においても、空飛ぶクルマ実機の試験飛行を行う計画が進められています。

    —ドローンビジネスを普及させることでどのような社会を実現していきたいと考えていますか。

    柏氏:NTTグループが目指す社会貢献において、ドローン事業は人口減少にともなう人材・人手不足の解消や、自動化・無人化におけるセキュリティの強化が期待できます。

    ドローンは “人間拡張”的なツールです。普及することで社会に起こるインパクトは大きなものになります。それゆえに安全性を確保するためのビジョンをしっかりと掲げながら、一つひとつのユースケースに真摯に取り組み、ドローンによって今ある社会課題を解決していきたいです。

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