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vol. 12

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人類の未来はいかに? メタバースへの理解を深める書籍4選

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メタバースとは一体何だろう。メタバースという概念にはさまざまな捉え方があり、この疑問に対する答えは1つではないのかもしれません。ここではOPEN HUBイベントや取材に参加していただいた有識者の皆さんからのオススメの1冊をご紹介します。メタバースについて研究者の視点、ビジネスの視点、はたまたフィクションの世界からと多方面から、書籍を通じて来るべき未来の私たちの変化について考えましょう。

「人類が抑圧から解放されたとき、待っているのはどんな未来か」―推薦者 細田守

BODY SHARING。それは身体に付随する感覚の情報を相互共有することによって、自らの身体を、他者、ロボット、アバター、さらには複数人数と共有し、そのことによって得られる「体験」を共有する技術です。「竜とそばかすの姫」の製作のために取材をした研究者の一人が『BODY SHARING 身体の制約なき未来』の著者である玉城絵美さんでした。ラボにも実際にお邪魔して体験をし、この面白い技術がどのように世界を変えていくのだろうという期待で胸が高鳴りました。

今はなんとなくメタバースという言葉が独り歩きしているような気がしています。特にビジネス活用という意味では行動しないと乗り遅れるのではという空気を感じている方も多いでしょう。本書では今までの常識ではあり得なかった新しい常識の中で、私たちの生きる世界がもっと自由なものに変貌していく様子を技術者の目線から前向きに描いています。まずはビジネスという視点は抜きにして、人類が抑圧から解放されたときどんなワクワクするような未来が待っているのだろうと思いを巡らせてみることから始めてもらえたらと思います。

細田守
映画監督

「VRはどう人類や社会を変えてくれるのかという問いを、心理学の側面から考える」―推薦者 岩村幹生

昨今メタバースがバズワード化していますが、2018年にすでにこの強力な技術の本質が「経験」そのものであり、VR内での体験を脳は現実の出来事として扱う、ということを唱えていたのがジェレミー・ベイレンソン教授です。『VRは脳をどう変えるか? 仮想現実の心理学』はスタンフォード大学で心理学・コミュニケーション学を研究するベイレンソン教授による、20年近くにわたるVR研究の成果を分かりやすくまとめた一冊です。数々の心理学実験の事例を踏まえ、メタバースを社会的に役立てるための方策について、正負のインパクトの両面から論じています。

本書ではVRを社会に浸透させるキラーアプリは、ゲームでもトレーニングでもなく、「仮想空間でただ人々と会話し、交流することが極めて普通で当たり前に行えるようになったとき、VRは必須の機器となる」と述べています。脳が環境モデルを学習するには身体性が必要ですが、視聴覚を中心に実現されつつある仮想世界が、どこまでリアルな「経験」を代替し、どのように人類や社会を変えていくことになるのでしょう。

現代人をスマホの小さな画面への依存から解き放ち、人間性を取り戻す道具となるのか、さらなる依存の深みに陥れるパンドラの箱となるのか、それはこの技術を使う人の倫理観次第なのかもしれません。

岩村幹生
株式会社NTTコノキュー 取締役

「メタバース領域も誰もが参加できる、一億総クリエイター時代へ」―推薦者 上田泰成

自己組織化こそがメタバースの本質である。そう主張するのは日本一のユーザー数を誇るVRプラットフォーム「cluster」の創業者である加藤直人さんです。彼の著書『メタバース さよならアトムの時代』ではメタバースにとって重要なのはクリエイターの存在であり、アバター産業がメタバース産業における第一産業といえるだろうと強調しています。

例えばYouTubeなどでも、今では専門的な知識がなくとも簡単な動画編集スキルがあれば誰でも配信ができるため、どんどん配信者が増えてきています。メタバースの領域でも同様にさまざまな人たちの参入によってコンテンツが充実し、そのコンテンツを通じて多種多様なビジネスが展開されていく、といった好循環を生み出していくことが、まさにわれわれ経産省が国として目指している姿です。

「最も敷居の低いメタバース」を目指しているという加藤さんの視点を本書から得ることで、メタバースという言葉を耳にしたことがあるくらいの初心者の方から、メタバース領域にビジネスのチャンスを探っているような方まで、何かしらのヒントや気付きを与えてくれる一冊となるでしょう。

上田泰成
経済産業省 商務情報政策局 コンテンツ産業課
課長補佐(産業戦略担当)

「この作品は“未来の個人に起こること”を直視する重要性をほのめかしてくれる」―推薦者 久保田瞬

メタバースとはSFに由来する言葉です。だからこそ、その定義は「われこそはメタバースを作りたい」というプレイヤー自身が自由に定義するものであり、古今東西さまざまに存在しています。

『ルサンチマン』は、冴えないダメ男が、ヘッドセットと全身モーションキャプチャスーツでバーチャルリアリティ(VR)にアクセスし、その中のAIに恋をしたところからストーリーが始まる作品です。2004年に描かれたこの作品の中に出てくる機器や設定は今でこそありふれたものかもしれませんが、このころには一般人の手元にVRデバイスがあるわけもなく、メタバースが実現するとも思われていない、そんな時代です。しかし、18年経って技術は大きく進化して社会実装が近くなったにもかかわらず、現在の私たちが思い描くメタバース像は意外とアップデートされていません。

2021年10月にメタバースが話題になって以来、「メタバースとは何か」、「どのようにビジネスに影響するか」という問いにとらわれた人々を多く見てきました。メタバース、そしてそこにアクセスするVRやARといった機器。これらが、パーソナルなものとして一般的になったときに、個人個人にとってどのような価値を持つのか、どのような人としての欲望が渦巻くのか、あらためて想像力を働かせることが重要でしょう。この作品は“未来の個人に起こること”を直視する重要性をほのめかしてくれます。ぜひ思いを馳せてみてください。

久保田瞬
株式会社Mogura 代表取締役社長

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