DIVE to METAVERSE

2022.11.16(Wed)

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ユニバーサルな世界の見つけ方―「僕らはメタバースに夢を見る」アフタートーク

#イノベーション #AI
2022年10月6日に開催されたOPEN HUB Base Webinar「僕らはメタバースに夢を見る」。映画監督の細田守氏とNTTコノキュー 取締役の岩村幹生をゲストに招き、OPEN HUB代表の戸松正剛がファシリテーターを務めたトークセッションは、5,000人超の視聴者を集めました。三者三様の視点でメタバースの可能性を探ったこのセッション。実は配信終了後も議論が白熱していたのです。示唆に富んだ延長戦のトークをお届けします。

コミュニティー喪失の先になにを見据えるか

戸松正剛(以下、戸松):トークセッションの本編では細田監督と岩村さんとともにメタバースを起点に、テクノロジーと物語の関係性、リアルとバーチャルの間合いについてなど、興味深いお話を伺いました。まだまだ話し足りないというのが正直なところでして、延長戦とさせていただきました。
本編終盤の話題から続けるかたちで、メタバース空間におけるコミュニケーションのあり方について、さらに突っ込んだ話をしていけたらと思います。

岩村幹生(以下、岩村):人とコミュニケーションを取る場面について私が思うのは、実は物理的な接触は少ないということです。社会・経済活動の大部分は視聴覚を通して成り立っている。ただ、一方で視聴覚に特化したバーチャルなコミュニケーションは、現実における感覚とズレてしまったり、感覚モデルの形成を困難にしたりすることもあると思います。

細田守氏(以下、細田氏):コミュニケーションは全身で行う必要があるということですね。例えば、コロナ禍以降、僕たちはしばらく握手をしてないわけですが、それがお互いの信頼感にどう影響しているかは気になります。ひょっとすると握手は、言葉という信頼しにくいものを補完する役割を持っているのかもしれない。だとすれば、バーチャルな世界で求められるコミュニケーションはそうした握手的なものかもしれないわけです。

細田守|映画監督
1999年に『劇場版デジモンアドベンチャー』で映画監督としてデビュー。『時をかける少女』(2006)、『サマーウォーズ』(09) を監督し、国内外で注目を集める。11年、自身のアニメーション映画制作会社「スタジオ地図」を設立。最新作『竜とそばかすの姫』は自身の監督作品歴代1位の興行収入を記録し、第74回カンヌ国際映画祭カンヌ・プルミエール部門にも選出されている。

岩村:昨今、リアルなコミュニティーが失われつつあって、人同士の親密なコミュニケーションの機会も失われています。いわゆる「昭和的」なコミュニティーは、いまや隣人の顔すら知らずに暮らす社会に取って代わられました。そこにはあいさつもなければ、お互いを気にかけ合う文化もありません。

社会学者の宮台真司さんらは、そこでは「感情の劣化」が起きていると指摘しています。リアルなコミュニケーションやインタラクションが減った結果、空気や間合いを学習する機会がないため、相手の感情に共感できない。

細田氏:それを損失や劣化と捉えるか、それとも単なる変化と捉えるか。常識や価値観は時代が進むにつれて変わりますからね。「昭和的」なコミュニティーが持っていた良さは、もちろん僕にもわかりますし、失われた物事がたくさんあるのも知っています。しかし、肝心なことはこの変化をどう受け止め、失った物事をどう理解するかだと思いますね。その反省があってこそ、新しくつくられる仮想世界がどうなるべきかが見えてくると思うんです。

バーチャル空間のコミュニティーは昭和的?

岩村:細田監督の作品では、デジタルやテクノロジーに焦点を当てると同時に、リアルなコミュニティーや田舎の暮らしも丁寧に描かれていますよね。

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