New Technologies

2022.09.16(Fri)

DX時代のストレージ最適化。コストを抑えてセキュリティを強化する方法とは

#データ利活用
DXをはじめ、デジタル化が進む昨今。テクノロジーの進化に伴い、データの流通量も肥大化の一途を辿り、セキュリティ強化やトランザクション増大による設備負荷増大、管理コストの増加といったさまざまな課題も生まれ始めています。

その中で、鍵を握るのが「ストレージ」です。ストレージの最適化を図るために解決すべき課題などについて、OPEN HUB Base Webinar「企業DX推進!データ×ストレージの最適解とは」でデータ管理のエキスパートたちが語りました。

目次


    巨大データ時代に企業が取り組むべき課題

    ウェビナーの冒頭は、「ソフトウェアとネットワークで進化するストレージ」をテーマに、山下技術開発事務所の山下克司氏の講演から始まりました。

    山下克司氏:まず、現代の企業が抱えている課題として挙げられるのが、「巨大化するデータをいかに素早く処理するか」です。ただ、高速処理できる方法を導入すると高額なコストがかかり、コストを抑えると処理速度が遅くなるというジレンマを抱えているのです。さらに昨今は、データを保管するだけでなく、情報の流出事件が起こるなどによりデータ保管の安全性にも注目が集まっています。

    これらの課題において企業が最も重要視しているのはストレージの安全性です。次にコストや運用効率、ビジネス課題への柔軟で迅速な対応と続きます。企業としては、これらの4つの視点を常に念頭に置きながら解決策を組む必要があるでしょう。

    山下技術開発事務所 代表 山下 克司氏

    なかでも安全性については、従来のデータが盗まれるリスクだけではなく、企業のストレージが不正に暗号化、ロックされる事例が増えてきています。データを質(しち)として身代金を要求するランサムウェアも、かつては一対一の関係でしたが、現在はより複雑化して専門家の集団や国家も絡んだ組織的な犯罪も目立ってきました。

    安全性の確保が難しくなる現代では、企業のITインフラストラクチャーは新しい課題に対処するために、より速い進化を遂げなければならないとされています。さらに、安全性のみならず、コストや運用効率なども求められるため、ストレージも従来とは異なった要件が望まれています。

    その解決策として、ストレージをソフトウェアで管理する方法が考えられます。メリットは大きく3つあり、まず挙げられるのが「ストレージの集約による効率化」です。2つめのメリットは「スケールアウト(並列化)」できることで、ニーズへの柔軟な構成管理やハードウェアのライフサイクル管理、速度や可用性の柔軟な設計が可能になります。そして、3つめが「アプリケーション対応」です。

    さらに、現在はクラウドの提供するサービスによって、パソコンだけでなく、スマートフォンやタブレットといったマルチデバイスでストレージに自由にアクセスすることも可能になっています。また、最新のストレージ保護技術には、不正なディスクへのアクセスを検知してブロックするようなソフトウェアも生まれました。

    とはいえ、これらの仕組みを一般的な企業が自社内で構築するのは、非常に難しいと言わざるを得ません。そのため、ネットワーク上でソフトウェアの機能を提供する事業者を通じて、安全性やコスト、運用効率など、それぞれの目的に合わせたSaaSの利用が求められます。もちろん、さまざまなクラウドサービスを用途に合わせて利用する際は、サービス間での安全かつ安定した接続が不可欠なため、NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)が提供する「スマートデータプラットフォーム(SDPF)」のようなプラットフォーム上でマルチクラウドを接続するフレキシブルインターコネクト(FIC)などの接続サービスの活用も重要と言えます。

    現代はネットワークの技術発展に応じたソフトウェアの進化によって、ストレージの課題に新たな解決策が生まれています。新たなテクノロジーをキャッチアップし、それを知識としてとどめておくのではなく、そのテクノロジーから生まれたサービスを目的別に峻別し、自分たちでソリューションを作り上げていく時代が到来したのです。

    ソリューション選定のキーワードは“フレキシブル”

    続いて、講演の内容を踏まえてWasabi Technologies Japanの脇本亜紀氏、ネットアップの村山岳史氏、NTT Comの光本博竹による鼎談が行われました。

    脇本亜紀氏 | Wasabi Technologies Japan合同会社 取締役社長
    村山岳史氏 | ネットアップ合同会社
    光本博竹 | NTTコミュニケーションズ株式会社

    ーー最初にストレージを取り巻く環境、トレンドについて聞かせてください。

    脇本亜紀氏(以下、脇本氏):とにかく、データボリュームが加速度的に増大していますね。最近はスポーツビジネスが注目され、私たちがオフィシャルスポンサーを務めているレッドソックスでは、ピッチャーの投球を17台のカメラで追ってデータを蓄積しています。

    また、プレー以外にも球場には数百台の監視カメラが設置され、規制によってかつては3日分だったデータの保存期間が3カ月分まで延びるなど、さまざまな面でデータ量は増加しています。

    村山岳史氏(以下、村山氏):最近はAIをはじめとするテクノロジーを活用するためにも、ストレージは容量の大きさだけでなく、リアルタイム分析に対応できる高速性も求められるようになっていますね。これまで蓄積しておけばよかったデータを、より早く出し入れできる環境が必要になってきています。また、もう1つのトレンドとして、クラウドの登場によって柔軟性も求められていると言えます。

    つまり、ストレージはスピードとセキュリティを求める「高機能性」と、クラウドに対応する「柔軟性(レスポンス性、価格感)」の両軸が求められる時代になっています。

    村山岳史氏 | ネットアップ合同会社

    光本博竹(以下、光本):データが加速度的に増えている実感は現場でもありますね。その中でも、ランサムウェアへの対応をはじめ、セキュリティにおけるバックアップは重要度が高まっています。

    現代のランサムウェアは潜伏期間が非常に長くなり、従来のバックアップでは対応できなくなりつつあるため、入念な対策を講じるユーザーが増えています。

    村山氏:高速性と柔軟性といったトレンドも、ひとつのテクノロジーだけでなく、さまざまなソリューションを組み合わせて、高速なストレージ作りが進んできていると感じています。柔軟性に関しても、クラウドとオンプレミスといった異なる環境でのデータのやりとりでも、かなりシームレスになり始めました。

    脇本氏:私たちはクラウドストレージを提供していますが、クラウドかオンプレかという二択ではなく、業務やアクセス頻度といった用途による使い分けが出てきました。ユーザーからは「Microsoft 365のバックアップでA社のツールを使用したいと考えているが、そのバックアップデータには対応できるかどうか」といった、具体的な用途を指定した問い合わせがありますね。

    脇本亜紀氏 |Wasabi Technologies Japan合同会社 取締役社長

    光本:ストレージの新しい利用用途として、DX推進に伴った、AI分析に使うデータレイクへの活用が非常に多くなっていますね。

    ーー 一方、データ活用をはじめストレージにおける課題に感じている点があれば教えてください。

    村山氏:データにも使用頻度や重要度などで違いがありますから、1つの場所にすべてのデータを入れていては区別できない点があります。ただ、データの用途によってストレージを使い分けると、「どれを選べば良いのか…」と担当者の方が苦しんでいる姿を、よく目の当たりにします。

    私たちとしても説明はするものの、混乱させてしまっているのではないかと心苦しくなるときはあります。ストレージの多様化が進み、データのパターンも増える一方のため、今後はよりユーザー視点に立った対応が欠かせないと考えています。

    脇本氏:データ量が肥大化した際にコスト面での課題があると考えています。

    米国テレビ局の事例では、データ量が3ペタバイトを超えるあたりになると、ハイパースケーラーのコストに耐えられなくなり、移行コストを払ってでもWasabiに乗り換える事例が見られるようになりました。
    このことからデータの保存先は、慎重に見極めなければならない点であると感じています。

    光本博竹 | NTTコミュニケーションズ株式会社

    光本:コストとセキュリティの課題はありますよね。コストは村山さんが言われたように、データの特性に応じて保存先を考える必要があります。一般的に利用頻度の高いデータを「ホットデータ」、半永久的にアクセスされないデータを「コールドデータ」と呼び、それぞれの容量比率は2:8や1:9とされています。これまでは2つのデータを1つのストレージにすべて押し込むことが多く、ほぼ利用されないデータのための投資がされてきたと言えます。これからはデータの特性を理解し、ホットデータであれば性能重視、コールドデータであればコスト重視という、ストレージの使い方も考えていくべきでしょう。

    また、セキュリティについては、ランサムウェア対策は間違いなく重要になります。その方法としては2つあり、まず感染しないという対策。そして、もう1つが感染した場合、いかに早く検知して復旧させるか。当然どちらも重要ですが、実際に感染した企業の報告を見ると、感染しないための最新対策を講じているにもかかわらず、感染が発生しています。そのため、感染後の対応は必須と言えそうです。

    ーー最後に、ストレージを選ぶポイントについて意見を聞かせてください。

    脇本氏:セキュリティ面など必須条件はありつつも、現状はPDCAを回して最適解を見つけていくしかないとは思います。データは増加する一方、出し入れや移行にもコストがかかる場合があるため、特定のサービスによって自社の環境が縛られてしまうような、ロックインを避け、常にフレキシブルな状態にしておくことは考慮すべき点ではないでしょうか。

    村山氏:やはりフレキシブルさは重要ですよね。データの特性が多様化し、複数のサービスを利用すれば、どうしても予期せぬハードルは出てきたりするものです。

    しかし、フレキシブルであれば、利用しているサービスの使い勝手が悪くなったり、新たな魅力的なサービスが発表されたりしても問題ありません。私たちとしても、よりフレキシブルなサービス作りが今後は求められていくだろうと感じています。

    光本:増え続けるデータの保存先やコスト負担の増大、セキュリティ対策に悩まれている際の1つの選択肢として、ぜひWasabi Tiering for NetAppをご検討ください。

    この記事の評価をお聞かせください
    低評価 高評価
    必須項目です。
    この記事の感想があればお聞かせください