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New Technologies
2022.07.08(Fri)
目次
デジタル技術の発達やコロナ禍への対応をはじめとして、企業を取り巻く環境や顧客のニーズは大きく変化し続けています。データを活用することで、既存ビジネスの生産性を向上させ、時間および人的コストの削減や、実績データをもとにした確度の高いマーケティング施策を実行できます。また、既存ビジネスで収集したデータをもとに新たなビジネスを生み出すことも可能です。さらに、データという客観的根拠にもとづいた経営判断は周囲からの理解を得やすく、職場のメンバーだけでなく顧客理解の促進にもつながるでしょう。
このようなデータ活用場面は、「社内向けデータ利活用」と、「社外向けデータ利活用」の2つに分けられます。
社内向けデータ利活用は、主にデータドリブン経営の実現を目指し、コスト最適化やプロセスの効率化を実現します。ユースケースとしては営業効率の最大化や経営ダッシュボードによる売上・収益の改善に取り組み始めるお客さまが増えています。
一方、社外向けデータ利活用では、統計や購買、顧客データを組み合わせながら、顧客生涯価値の最大化やロイヤルカスタマーの創出等に取り組み、売上の拡大や新規ビジネス創出を目指します。IoTデータや社外データといったさまざまな情報を収集・活用することで、社内システムのデータだけでは実現できなかった、サービスの高度化や新たな価値創造が期待されています。
近年のデータ利活用において特徴的なのが、ビジネスの変化に応じて必要なデータや手法が頻繁に変わる点です。そこを考慮せずに初めから完全なデータ基盤を整えようとすると、機能の拡張に時間やコストがかかったり、不要な機能が実装され投資が無駄になるといった問題が生じます。
一方でデータ基盤の全体像を見据えずに構築を進めてしまうと、システムやデータの個別最適化が進んでしまい、企業全体での最適なデータ利活用が達成できません。
また、データ基盤だけでなく、データ利活用を組織に浸透させ、統制をかけるために、データ利活用をサポート・推進する体制やルール、プロセスの整備も求められます。
このようにDX戦略の1つとしてデータ利活用を掲げるケースが増えているなかで、プロジェクトの立ち上げや推進の方法がわからないまま基盤を導入し、効果的なデータ利活用ができていないという課題が浮き彫りになるケースが散見されます。
抱えている課題を洗い出す際には、「戦略・計画」「分析・効果検証」「基盤整備」「人材」の4つの観点から問題を検証します。具体的には、戦略における課題を抱えているのか、実際のデータを使った分析がうまく進められないのか、あるいは基盤や人材の育成に課題を抱えているのかといった観点で、真の課題を特定していきます。データ利活用の導入を阻害している原因は企業によってさまざまですので、課題感の解像度を上げた上で次のアクションをイメージしていくことが重要です。
ここからは、データ利活用の進め方を、NTT Comで支援した実際の事例を通じてご紹介します。
まずは、製販一体型ビジネス改革を狙うインテリア商社の全社データ利活用プロジェクトの事例です。
この会社では、主に代理店を通して施工主や利用者に対して商品を提供しています。このような商流形態では「どんな人がどの商品を使っているか」「なぜその商品を選んだか」といった、代理店の先の動向がデータとして見えづらく、マーケット全体の売上げやシェアが把握できていませんでした。
そこで、バリューチェーン全体からデータを得られるようにし、利活用につなげる仕組みづくりを目指しました。
プロジェクトを推進するにあたり、「ノウハウ不足で活用ステップが描けていない」「各業務のデータは存在しているが、データのメンテナンスや取得方法、活用方針が策定されておらず、効率的に活用できていない」といった課題が浮かび上がってきました。そこで、「データ利活用の構想策定」と「データ分析検証」という2つの支援を実施しました。
1. 構想策定 ―分析テーマを定めロードマップを描く
「データ利活用の構想策定」では、まず、取り組むべきテーマの検討を行い、目指すべき姿を明確にします。そのテーマをもとに具体的なアクションを洗い出し、最終的にロードマップの形に取りまとめます。
取り組むべきテーマの検討では、プロジェクトの目的や重点ポイント、スケジュール、現状の課題を整理します。今回は営業活動における「売上貢献や実績の可視化ができていない」「アクションすべきタイミングの把握が困難」という課題から、どんなビジネス成果を期待しているかという「価値」を結び付けて議論し、売上/利益貢献に向けた「営業効率の最大化」を重点テーマに設定しました。
更に、出てきたテーマをバリューチェーンにマッピングすることで、データ利用の重要性を再認識するとともに、より重視すべきテーマがないかを確認します。
次にアクション項目の検討・明確化に入ります。この事例では、「営業効率を最大化する」というテーマに対し、顧客セグメントに応じて営業プロセスを可視化し、各プロセスに応じたアクションをまとめました。
それらを踏まえ、データマネジメントの仕組みを整理し、全体の基盤構想を策定しました。また、基盤だけでなく運用体制やプロセスもセットで検討します。CoE(センターオブエクセレンス)※ 機能の設置や分析・人材育成支援、データシステムの整備を提供するケースが最近では増えています。
※CoE:社内に分散している優秀な人材やノウハウ、設備などのリソースを横断的に集約すること
運用体制においては、内製化を考えるお客さまは多いものの、最初から実現するのは難しいため、アウトソースも含めた計画として整理することが一般的です。データ利活用推進のキーパーソンとなるビジネストランスレーターは内製化の優先度を高くし、データアナリストやエンジニア、サイエンティストはアウトソースをいかしながら、体制を構築していくことが実際のプロジェクトでも多いです。
このように各テーマの基盤構築、運用体制などへのアプローチをどのフェーズで実現するかをロードマップにまとめ、お客さまの年度計画に合わせて設定していきます。
2. データ分析検証 ―アクションやプロセスを精査する
本事例では、策定したプランが現実的なものになっているかを検証するデータ分析検証も実施しました。
データ分析には、可視化やAIをモデリングした予測などさまざまなパターンがあります。データ分析検証では、今あるデータでどんな分析ができるかを事前評価した上で、実際に分析を行い、最終的にレポートにまとめます。
分析結果が出たら、それをもとに実行できるアクションを取りまとめます。営業先ごと、顧客ごとの売上傾向や、通年のシェア動向を可視化し、予測も含めて分析をしていきます。検証を行うことで、プロセスやアクションを精査することができます。
このように、運用フェーズも見据えながら段階的な仕組みの整理、体制づくりを行うことで、お客さまのデータドリブン経営を推進するためのデータドリブン・カルチャーを醸成することができます。
続いて社外向けデータの事例を2つ紹介します。
1つめはデータ利活用により店舗向けIoTサービス付加価値を向上し、飲食店経営者が抱えていた課題をサポートした事例です。
近隣施設のイベントによる突発的な繁忙期の予測がしきれていないために、販売機会を逃しているという課題に対して、見込み客の人数予測をする需要予測ソリューションを提供しています。
飲食店のデータに加え、位置情報を使った店舗周辺の人流や属性といったNTTグループのアセットを組み合わせ、潜在顧客の有無、需要予測を行うことで、収益向上に向けた意思決定を支援します。
サービスの提供においては、飲食店における課題や提供価値、店舗でのデータ利活用シーンの検討、プラットフォーム化したときのコスト・収益のマネタイズといった、ビジネスモデルの戦略を検討します。その後、分析のトライアルへ進み、アイデア実現に向けて伴走支援しています。
2つめは建設業界向けのデータドリブンマネジメント基盤を提供した事例です。社内向け、社外向け双方のデータ利活用を促進しています。
経営データやIoTデータ、建築に使われるBIM※ データなどの社内データと、気象や人流といった外部データを組み合わせることで、データドリブン経営を加速しました。
具体的には、建築現場のDXとして、プロジェクトの稼働状況(工事情報等)と、技能スキル・アサイン状況を可視化して、エリアをまたいだ人材アサインによるスマート生産を目指しています。また、オープンデータと地図データ、自治体データなどを組み合わせ、防災技術等を活用した都市OSの実現やデジタルツイン技術を使った新規スマートシティビジネスの創出も想定されています。
※BIM:Building Information Modeling。コンピューター上に構築した3Dの形状情報に名称、面積、材料、性能、仕上げなど、建築物の属性情報を加えた建物情報モデルを構築するシステム
データ活用の導入プロジェクトにおいては、全体像を押さえた上で、活用するデータの種類や取り扱い方などを踏まえ、データ利活用基盤に必要な機能や技術、体制を取捨選択していくことが必要です。
NTT Comでは、豊富なノウハウやアセットを用いて、お客さまの現状や抱えている課題に合わせた最適なデータ利活用方法をご提案・ご支援していきます。お客さまのデータ利活用事例も、OPEN HUBにて随時紹介していきます。
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