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Food Innovation
2022.06.24(Fri)
目次
これからの飲食業界には欠かせないトピックの1つである、食のパーソナライズ。韓国企業のNuvilabは、健康的な食事の提案だけでなく、コストや食品ロスの削減にもつながるフードスキャニングシステムAI「Nuvi Scan」を開発しました。
外食産業向けに開発されたこのシステムは、食事の前後に料理をスキャンし、配膳された分量や栄養素、消費された分量と残飯の内容を追跡します。スキャンデータによって食べたものの栄養バランスやカロリー計算を行い、結果はユーザーに共有されます。ユーザーの食習慣に合わせたメニューのアドバイスをしてくれるプランも用意されています。2018年に開発されて以来、AIの精度を高めるべく膨大な食事データの学習を進めており、2022年の時点では100万以上の食のデータが蓄積されているそうです。
個人のポーションを追跡できるということは、同時に厨房でどれだけの食材が消費されたかも可視化することができます。従来は配膳する皿数分の原料を仕入れていたため、食べ残しがあった場合はその分の食材コストが無駄になり、食品ロスを発生させていました。Nuvi Scanを使えば、ユーザーの消費量から逆算することで過剰な仕入れを防ぐことが可能になるかもしれません。
気候と農作物は、切っても切り離せない関係にあります。異常気象の続く現代社会において、食糧不足は深刻な問題の一つ。その対策として、屋内で食物の生育をコントロールするソリューションも生まれていますが、Googleが開発したのはAI技術を用いて気候変動に強い種を見つけ出すロボットでした。
Googleは、実は社会問題に取り組む事業会社という一面も併せ持っています。同社のリサーチ開発研究ラボ“X”が開発した「Don Roverto」は、農作物のスキャニングと成長記録を行う農業AIロボットです。機械学習を用いて作物を1本ずつ高速でスキャンし、葉の数、葉の面積、色、花の数、さやの寸法といった特徴を読み取って個体識別を行います。研究対象となる作物は、洪水や干ばつなどさまざまな気候環境に置かれ、Don Rovertoは何十とある苗の中から、厳しい環境下でも耐えうる1本を一瞬で見つけ出します。これまで研究者が1本ずつ人力で記録していたことを考えると、この技術によって研究のスピードが加速することは疑いようがないでしょう。
台風に負けない米。干ばつでも育つ豆。そんな食材が食卓に並ぶ未来がすぐそこまできているのかもしれません。
近い将来、デリバリースタッフの仕事場はメタバースになるかもしれません。カリフォルニア発のスタートアップCarbon Originsは、VRで遠隔操作する配達ロボットSkippyを開発。現在の拠点地であるミネソタ州ミネアポリスおよびセントポールの都市圏で、料理や食材のデリバリーサービスを展開しています。
CEOのアモガ・スリランガラジャンによると、アメリカにおけるオンデマンド式のラストマイル配送の市場規模は600億ドル。もともとシェアスクーターを開発していた会社ですが、パンデミックを機にデリバリービジネスに着目し、自動運転型ロボットの技術を応用しました。
Skippyのデザインは火星探検ロボットがベース。階段の上り下りやカーブといった環境にも対応でき、周辺の障害や動きを察知する機能を搭載しています。デリバリーをピックアップする際には注文内容を読み上げ、客と対話もします。
機体にはナビゲーション用カメラが設置されており、Skipstersと呼ばれるオペレーターがVRを通してリアルタイムで操作。本体には冷温機能が備わり、一定の気温を保ってデリバリーすることが可能です。もちろん、無事にユーザーまで荷物が届くよう、移動中は施錠されています。Carbon Originsの収入源は、デリバリーの手数料とサービスを利用するためのサブスクリプションフィー。今後はSkippy本体に載せる広告ビジネスも展開される予定とのことです。
食品ロス、異常気象、労働力不足といった食にまつわる社会課題が、テクノロジーの進化によって解決されようとしています。後編では、別の角度から、私たちの食生活を豊かにするプロダクト3選を紹介しますので、併せてご覧ください。
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