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vol. 04

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事業創出に携わって見えた、イノベーションに必要なマインド OPEN HUB Catalyst File #02 井上 裕太

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OPEN HUBは、イノベーションの創出を目指す実験の場。しかし、いきなり「イノベーションの創出」と言われてもハードルが高いと感じてしまう人もいるのでは。どうすれば価値ある事業を生み出すことができるのか。さまざまな企業でイノベーションの創出を手掛けてきたKESIKIの井上裕太さんに聞きました。

【OPEN HUB Catalyst File】
課題の探究から社会実装までをリードする、さまざまな分野の専門家である、OPEN HUBの「カタリスト」。一人ひとりの活動や想いを通して、社会に提供できる価値について伺います。

クリエイティブがビジネスの根幹に携わる重要性

——井上さんはこれまでさまざまな企業のイノベーション創出にクリエイティブの要素を取り入れていますが、必要性を感じたきっかけはなんでしょうか。

契機は雑誌『WIRED』の北米特派員として日本とシリコンバレーを行き来していた2011年ごろ。当時のシリコンバレーはイノベーションが生まれる場所として世界中から注目を集め、なかでもビジネスにおけるデザインの価値が急激に高まっていました。ビジネスの根幹部分にデザインが携わることで、プロダクトに大きな価値を生み出すことに気づきはじめていたわけです。その結果、スタートアップ企業を中心に優秀なデザイナーを争奪する動きが生まれ、デザイナー出身の起業家も増えていました。

また僕自身、デザイナーにアイデアをビジュアル化してもらったり、コピーライターに思考を言葉にしてもらったりしたことで、それまで進まなかったプロジェクトが一気に動き出す場面に遭遇する機会が多くありました。未知のものをつくるときってイメージもふわっとしていて、誰も価値を理解できないし、大したデータもないわけじゃないですか。そういうときにこそ、プロジェクトを可視化することができる、クリエイティブの力が活きると思ったんですね。

それだけでなく、クリエイティブはプロジェクトの浸透や共感を得たいときにも役立ちます。かつてJR東日本と取り組んだ「ON1000(オンセン)」という社内新規事業創出活動では、発案者の思いや企業としての意志、プログラムの肝をコピーライターやデザイナーと共にネーミングし、ビジュアルやコンセプト文に落とし込みました。その結果、初回から1000件以上の企画案が応募されるなど、活動が社内に力強く浸透するきっかけを作ることができました。

一方で、「クリエイティブ」と聞くと自分には縁遠いと考える人もいるかもしれませんが、クリエイティブはいわゆるクリエイターのものだけではありません。今ではJR東日本社内で愛されている「ON1000(オンセン)」という名前は、「源泉=個の思いや発想」と「効能=誰にどう役立つのか」が重要だという考えから名付けられました。実はこの名前も社内の発案者が試行錯誤しながら、新規事業に必要な要素に向き合うことで生まれたものなんです。

イノベーション創出においてビジネスパーソンに必要な2つのこと

——クリエイティブのほかに、イノベーションを創出していくうえでどのような力が必要だと思いますか?

これまでさまざまな事業に携わってきましたが、共通して必要だと思うのは「意志」と「一点突破」です。どんな取り組みでも、最初から価値を見出してくれる人はほんのひと握り。ステークホルダーから「それってやる意味あるの?」なんて言われることは日常茶飯事で、チームメンバー全員から反対されることもあります。それでもやり抜く必要があるとき、「意志」と「一点突破」が重要になります。

先述のJR東日本の事例「ON1000(オンセン)」も、ある有志の自主活動がきっかけとなって生まれたものです。まずは1人で活動を始め、意味のあるインパクトを出すという「意志」を持ってプロジェクトの推進=「一点突破」をして仲間を増やし、結果的にプロジェクトを成功させたことで社内での存在感を確立。そこに集まった社内の声をベースに、「ON1000(オンセン)」という全社変革プロジェクトが立ち上がったのです。

その点、OPEN HUBは「実験の場」と位置付けられているため、失敗することへのハードルは比較的低いと思いますし、失敗が当たり前になるとイノベーション創出のハードルも下がるはず。失敗を繰り返しながら光明が見えるまで理想の形を追い求めることもできると思います。しかもOPEN HUBには、ともにイノベーション創出に励むプレイヤーや、カタリストのような頼もしいパートナーもいます。今までできなかった新しい取り組みも、ここでならやれる可能性があるので、ぜひ臆することなく挑戦していただきたいです。

OPEN HUBという場の力を飛躍のエネルギーに

——井上さんは今後、どのようにOPEN HUBに関わっていきますか。

OPEN HUBでは「今の世の中にはこういうものが必要だ」という「意志」を持って、自分たちから仕掛けていく動きをつくっていきたいと考えています。

正直な話をすれば、「共創の場」と呼ばれているものってこれまでもあったと思うんですよね。これだけ聞くと真新しさを感じる人は少ないかもしれません。しかし、ほかとの大きな違いは国家や都市を動かすレベルのインフラの技術力と組織力、そしてあらゆる企業へのネットワークを持った大企業が、「KOEL」※のようなデザイン組織も含めた全社を巻き込み、社会変革を仕掛けようとしている点です。その影響力をうまく活かすことができれば、世の中を変えうるイノベーションを創出できるはず。

※NTTコミュニケーションズ社内に設立された、デザインを専門とする組織。通称 KOEL Design Studio(KOEL)

また、OPEN HUBから生まれた事業の成長に寄与するスタートアップ企業への投資の仕組みをつくったり、外部のパートナーと合弁会社を設立したりするようなアクションまで見据えて動くべきだと思います。そうやってこの実験の場で生まれたものを育てる象徴的な「一点突破」を示すことができれば、ここへ集うプレーヤーたちもそのうねりに反応して、よりよいものを生み出すエネルギーが湧き上がるのではないでしょうか。僕も、その相互作用の一助でありたいと思います。

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