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Hello! OPEN HUB
2022.01.14(Fri)
OPEN HUB Catalyst File #01 児玉 秀明
目次
——ビジネスにおいてデザイン思考やクリエイティビティが必要とされているのはなぜでしょうか。
デザイン思考とは、デザイナーやクリエイターが業務で使う思考プロセスを活用し、前例のない課題や未知の問題に対して最適な解決を図るための思考法です。昔から考え方としてはあったものの、変動性が高く複雑な現在の世の中で、従来の物差しだけでは経営や事業ににおける指標、基準などが定められなくなっていることを背景に語られることが多くなりました。
私自身、その言葉ができる以前から”デザイン経営”に携わってきました。キャリア初期はアートディレクターとして広告制作に携わっていましたが、次第に直接企業の経営者と会話をする立ち位置を築き、経営者の意図を汲み取った提案をするように。広告に留まらず、どうすれば企業をより良くできるのかを考えることに楽しみを見出すようになりました。アマナに仲間入りしてからは、取締役として新規事業の立ち上げや運営、コーポレートブランディングを行い、経営してきました。
印象に残っているのはストックフォト事業です。以前はストックフォトといえば、観光名所や歴史的な写真など説明的な写真が中心でしたが、あるデザイナーの「風を感じるような写真はないのか?」という言葉をきっかけに、コンセプチュアルなストックフォトを展開するブランド「photonica」(現Getty Images)が誕生。多くの広告デザイナーやクリエーターが使うようになり、海外のクリエーターにもファンが増えていきました。そして、このブランドの普及に一躍買ったのがカタログです。ただ写真を並べるではなく、今までになかったコンセプチュアルな写真をどう使ったら良いか、デザイナーのヒントになるように編集することで、”伝えるカタログ”から、”伝わるカタログ”に。料理で例えるなら、材料だけでなくレシピも公開するということです。ユーザーの潜在的なニーズを汲み取り、クリエイティブの力で解決することで、数億のビジネスから数十億のビジネスにまで成長し、日本でも最大規模のストック事業を展開しました。
——児玉さんは、さまざまな層に対して人材育成活動も行っています。きっかけはなんだったのでしょうか。
さまざまな事業創出を行なううちに、あらゆる分野でクリエイティブの思考性を持った人材育成が必要だと思うようになり、社会人向けの次世代のビジュアルクリエイター養成スクールをつくったことです。また、学生向けに、母校の多摩美術大学でデジタルをクリエイテブにどう活かすかを講義したり、楽天市場の出店者向けに開講されている楽天大学でフォトブランディングの講義をしたりと、多様な層に対してクリエイティブ教育を行うようになりました。そして今、企業の皆さんへ向けて講義を行う機会が増えたことで、ビジネスにおいてクリエイティビティを持った人材を育みたいと考える人が多く、ビジネスパーソンの思考の変化が急務であると感じています。
そんな方々へ向けて行っているのが、ビジネスパーソンのクリエイティブスキルやマインドを育成し、企業の競争力を上げるための実践プログラム「amana Creative Camp」です。講師に現場で活躍するクリエイターを迎え、座学と実際に手を動かすワークショップをセットで行います。内容はクリエイティブな思考法に限らず、クリエイターへのディレクションのあり方や編集思考を軸とした効果的なストーリーテリングの方法など多岐にわたり、企業の目的や課題によってアレンジしています。NTT Comの皆さんとも、情報が的確に伝わるデザインルールを学び、実践するワークショップを行いました。
——OPEN HUBにおいて、クリエイティビティはどのように生きるでしょうか。
OPEN HUBで行われるプロジェクト共創においても同じことが言えると思っています。いろんな人がいろんな想いや技術を持って集まるなかで、どのように新しい価値や体験を生み出すかが大事ですよね。その創出の過程で、クリエイティビティのある思考が生きると考えています。
クリエイティビティが組織に根付くには、経営陣がデザイン経営やクリエイティブに価値を見出すことが大切です。OPEN HUBでも、企業の経営陣が参加でき、事業共創に関して意欲的になれるような取り組みを行ないたいと思っています。例えば、意思決定までのプロセスにクリエイティビティを取り入れるワーク。事実や論理だけでなく、創造力や感性を生かせるようにすることで、企業全体の競争力の向上をサポートしたいですね。また、せっかく多様なバックグラウンドを持つ人が集まるので、互いの知恵を持ち寄りながら、さまざまな領域を越境できる人材を育てるプログラムがあっても面白いと思います。
私もカタリストとして参加しているので、今までの経験や知識をもって、新しい体験や価値の創出に変換するお手伝いしていきたいです。
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