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2025.10.17(Fri)

「2025年の崖」は今からでも跳び越えられる!? 経産省がレポートを公開

「2025年の崖」の存在は2018年に知らされていたにも関わらず、まだ多くの日本企業がこの課題を跳び越えられていないようです。
しかし、レガシーシステムの脱却に成功した企業の知見は蓄積されています。
DXを推進し、「2025年の崖」を突破する鍵とは?その答えを探ります。

目次


    日本企業は2025年の崖を飛び越えられたのか?

     「2025年の崖」という言葉を、聞いたり目にしたことがあるビジネスパーソンは多いことでしょう。2025年の崖とは、2018年に経済産業省が公開した「DXレポート」という資料に記載されていた言葉です。

     同資料では、多くの日本企業が保有する、運用維持・保守や機能改良が困難な状態であり、経営・事業戦略上の足枷・高コスト構造の原因となっているシステム「レガシーシステム」から脱却し、DX(デジタル・トランスフォーメーション)を実現しないと、2025年以降、年間で最大12兆円の経済損失が生じる可能性があると指摘しています。DXレポートではこの経済損失のことを、2025年の崖と呼んでいます。

     多くのレガシーシステムは事業部門ごとに構築されており、全社横断的なデータ活用ができず、かつ過剰なカスタマイズが行われていることで、複雑化・ブラックボックス化が進行しているといいます。そのため、新たなデジタル技術を活用して新たなビジネスモデルを創出・柔軟に改変するDXの足枷となる恐れがあります。

     DXレポートではこの2025年の崖を飛び越えるためには、同年までにレガシーシステムの仕分けを行い、必要なものは最新の技術や仕組みに刷新する「モダン化」を進めつつ、DXを実現することが必要としています。

     それから7年の月日が経った2025年5月、経済産業省は「DXの現在地とレガシーシステム脱却に向けて」という資料を公開しました。この資料によると、残念ながらレガシーシステムの脱却はスピード感に欠けており、企業によっては、生成AI等の最新のデジタル技術を活用したくてもできない問題が発生しているといいます。

     資料によると、レガシーシステムを保有している企業の割合は全体で61%にのぼり、特に大企業の保有率は74%という高い数値になっているといいます。

    レガシーシステムの脱却に成功した企業に見られる特徴とは

     しかし、一部の企業においてはレガシーシステムからの脱却が進んでおり、そうした企業には一定の傾向があるようです。

     たとえば経営層・情報システム部門との間で、システムに関する情報が共有されている企業では、システムの仕様の可視化やブラックボックス対策がなされ、システムのモダン化が進む傾向があるといいます。

     加えて、CIO(最高情報責任者)やCTO(最高技術責任者)といった、特定の業務領域における最高責任者「CxO」を設置している企業は、システムの仕様の可視化やブラックボックス対策、経営層と情報システム部門との間での情報共有がなされ、システムのモダン化が順調に進む傾向があるといいます。

     さらにいえば、システムの仕様の可視化などブラックボックス対策に取り組む企業では、自社でシステム運用や維持・開発を行う「内製化」が進み、特にCxOを設置している場合はこの傾向が強いといいます。一方、ITベンダーにシステムの運用維持など全ての工程を丸投げする企業は、モダン化の取り組みが遅れがちとのことです。

    2025年の崖を突破するための知見は蓄積されている。あとは跳び越えるだけ

     資料では企業が取るべき対策の方向性として、情報システム部門と事業部門が緊密に連携すること、経営層が覚悟を持ってITガバナンスを効かせ、トップダウンでレガシーシステム脱却を推進すること、ITベンダーは企業の内製化を支援する立場に立ち、かつ両者ともにビジネスアーキテクト・ITアーキテクト、データサイエンティストなどの上流人材を確保することなどを挙げています。

     経済産業省が今後行っていく政策としては、企業が自社のDX成熟度やIT資産の全容を自律的に把握できるよう、「自己診断」の仕組みを整えることが挙げられています。この自己診断では、企業が自社の現在位置と、目指す水準とのギャップを明らかにし、企業が取るべきアプローチを自律的に検討できる状態を目指し、企業がベンダー企業に過度に依存しないよう、自律的に診断・検討を行うツールや指標、ガイドラインを整備するとしています。

     さらに、システムのモダン化に必要な上流人材の育成・確保のために、スキルの可視化と持続的な学び、キャリア形成や市場におけるスキル活用を推進する人材育成のプラットフォームを構築し、市場に開放していくとしています。加えて、モダン化の取り組みを促進・助成するためのインセンティブについても検討する予定といいます。

    レガシーシステムの脱却に向け、企業がすべき対策と、経済産業省が準備中の政策の一覧(経済産業省「DXの現在地とレガシーシステム脱却に向けて」32ページより引用)

     「2025年の崖」の存在は2018年に知らされていたにも関わらず、まだまだ跳び越えられていない企業は多いようです。しかし、この資料でも触れられている通り、すでに崖を越えた先進企業の知見は蓄積されています。

     資料でも触れられているように、ITベンダーにレガシーシステムの脱却を丸投げすることは、モダン化が上手く進まない原因となります。まずは自社が「跳び越えよう」と考え、行動することこそが、2025年の崖を突破する鍵といえるでしょう。

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