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2025.03.06(Thu)
——近年、企業間でのデータ連携を促すデータスペースの構築が必要だと言われています。なぜ今、こうした仕組みが求められているのでしょうか。
越塚登氏(以下、越塚):いくつか理由はありますが、まずはインターネットやIoTデバイスの普及により、データが爆発的に増えたこと。そして、デジタル分野の競争力の源泉がデータのレイヤーになってきたことが挙げられます。
デジタル技術のトレンドは約20年周期で移り変わってきました。1960年代には大型計算機によって世界初のDXが実現され、1980年代になるとマイクロコンピューターが登場し、2000年代はインターネットの時代。そして、2020年頃からはデータとAIの時代になりました。
新しい時代にはその時代に適したプラットフォームが必要であり、データとAIの時代に必要な新しいプラットフォームがデータスペースなのです。
データスペースとは、企業や組織の垣根を越えてデータを安全に共有・活用するための仕組みのこと。必要なときに、必要なデータだけを、許可した相手とだけ共有することができます。データは自社で抱えるだけでなく、連携させることでネットワーク効果が働き、価値が増大しますから。

境野哲(以下、境野):地球規模の社会課題が出てきたこともデータスペースが求められる理由の1つです。環境問題や人権問題などを解決するためには、企業や産業、国の枠を超えて協力することが欠かせません。
このような社会課題を解決するには、必要な情報を社会の共有財産として、適切な範囲で関係者が活用できるようにする必要があります。例えば、CO2排出量は社会全体で把握していかなくてはなりません。従来のように企業がすべての情報を抱え込んで、自社だけで問題を解決するという時代ではなくなってきています。
——GXの文脈でデータスペースが果たす役割を教えてください。
越塚:GXとデータはとても相性が良いです。なぜかというと、CO2は見えないから。透明で手に持てないCO2の排出量を把握し、管理するためには、データが唯一の手がかりとなります。
製品の原料調達や製造、廃棄までの一連の流れにおけるカーボンフットプリントを測定するためには、サプライチェーンに関わる複数企業のデータ(Scope3)の連携が必須です。
境野:GXを実現するためには、地球上のあらゆる人、モノ、金、エネルギーなどの情報を把握しなければなりません。さらには現状把握だけでなく、100年後、200年後の地球をシミュレーションする必要もあります。これらの実現のためには、データスペースの存在が欠かせないのです。

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