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Hyper connected Society
2024.12.13(Fri)
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この記事の要約
建設土木業界が直面する人手不足や生産性向上の課題に対し、スタートアップ企業ARAVとNTT Comが共創した建機DXソリューション「Model V」が注目を集めています。Model Vは、旧式の建機を含むあらゆる機種に後付けで取り付け可能な遠隔操縦システムです。
このシステムにより、危険な現場作業の回避や、遠隔地からの操縦が可能になり、就業のハードルを下げることができます。また、Starlinkなどの通信技術を活用し、山間部などの通信環境が整っていない場所でも運用が可能です。
ARAVの白久レイエス樹氏は、将来的にはあらゆる建機の遠隔操縦・自動化、複数建機のネットワーク化、さらには宇宙での建設工事への応用まで視野に入れています。Model Vの普及により、建設土木業界の未来が大きく変わる可能性を秘めています。
※この要約は生成AIをもとに作成しました
――Model Vのようなソリューションが生まれた背景として、まずは建設土木業界が今抱えている課題を教えてもらえますか。
白久レイエス樹氏(以下、白久氏):一番大きな課題は他業界と同じ「人手不足」です。少子高齢化による労働人口の減少の影響は、建設土木業界にも当然見られます。
杉浦克尚(以下、杉浦):加えて建設土木業界に特有なのは、高所や山間部など、危険な場所での作業や長時間労働への危惧から、若者を中心に就職先として敬遠されがちなことです。建設業就業者の年齢構成は、いわゆる高齢者層の割合は約36%で、全産業の平均である約32%と比べても高く、対して29歳以下は約12%しかありません。
白久氏:そうした課題がある一方で、建設業の需要は拡大傾向にあります。特に都市部の再開発はもちろん、既設の橋や道路といった社会インフラの維持・整備の需要は顕著に増えていくと予想されており、人材の受給に大きなミスマッチが生じています。
さらに、2024年から時間外労働時間の上限が規制されるようになり、人手不足を長時間労働で補っていた状態も見直される状況にあります。
――一連の課題の解決、つまり人材不足の解消や安全性、作業の効率化が求められる中で生まれたのが、建機の後付けアタッチメント式ソリューションであるModel Vということですが、具体的にはどのような技術なのでしょうか?
白久氏:建設土木業界の課題解決を目指したDXソリューションは多々あります。その中で私たちは、さまざまな条件下にある建設現場に対応できる建機の遠隔操縦・自動化ソリューションを開発することで、DXの普及を実現したいと考えているのです。
Model Vは建設現場から遠く離れた拠点からネットワークを介し、PCやタブレットを使って建機を自在に操作できるようになる装置です。遠隔操縦は実工事現場での利用が進んでいる段階にあります。また、繰り返し作業の省力化を目的とした自動運転機能も現場実証が始まっております。
――建機の遠隔操縦は、既存の建機メーカーや建機レンタル業者がすでに開発を進めていた分野でもありますが、そうした中でModel Vが注目を集めている理由はどういった点にあるのでしょうか。
白久氏:建機メーカーや建機レンタルの遠隔操縦システムとの大きな違いは、後付けのアタッチメントであることです。遠隔操縦に対応している既存の建機は基本的に新型モデルばかりになるのですが、建機は耐用年数が長く、今でも多くの現場では旧型モデルが現役で稼働しています。後付け式のModel Vには、メーカーを問わず20年、30年前のモデルでも対応できる汎用性があるのです。
例えば、建機の中で最も多く使われているのは油圧ショベルで、国内の保有台数は70万台です。新型車両の販売台数は年間4万台とされているので、モデルチェンジによって遠隔化を実現しようとするとおよそ20年かかってしまう計算になります。後付けであれば、現在使っている建機を遠隔・自動化していくことができるので、スピーディかつ低コストにDXを進めることが可能になります。
――なるほど。あらゆる建機に対応可能ということですが、今使われている建機には大きく分けて「電気式」と「機械式」の2種が存在します。そのどちらにもModel Vは対応しているのでしょうか。
白久氏:そうですね。新型の建機の多くは、動力や制御に電子機器が使われている電気式なので、建機本体にModel Vの制御ボックスからハーネスを接続することで、遠隔操縦を実現するシステムになります。
対して旧型モデルの建機は、電子制御ではなく油圧による機械制御で駆動する方式です。こちらは電気信号で制御するのではなく、建機の操縦席にアクチュエータ(駆動部品)を取り付けて、操縦席にあるジョイスティックのレバーや、アクセル、ブレーキといったフットペダルを物理的に制御できるようにするのです。
――アクチュエータを後付けして、建機をロボット化するイメージでしょうか。
白久氏:そうですね。ロボット化という視点はARAVらしさを表現するものかもしれません。弊社に集まるエンジニアは、自動車や家電業界出身の仲間が多く、ソフトウェアに関してはもちろん、ハードウェアに関しての知識も持ち合わせていることが、精度の高いソリューション開発に結実しているのだという自負があります。
Model Vを実装することで、例えば東京のオフィスにいながら、1,000km離れた山奥の土木建設現場の旧式油圧ショベルでも遠隔操縦で作業を進めることができるようになります。そうした環境が整備されることで、操縦者が危険な現場に出向く必要がなくなり、事故が減ると同時に就業のハードルもぐっと下げられます。オフィスや自宅でも作業ができるとなれば、たとえば下肢障がいのある方や、事情があって長時間は働けない方などでも操縦者になれるでしょう。
建設現場では、建機によっては1日1時間ほどしか実稼働しない場合も多くあります。遠隔化が実現すれば、短時間の稼働のために操縦者が遠方まで来る時間的なコストを削減できます。また、1人の操縦者が1つの拠点から複数の現場の建機を操る、といった働き方も可能になります。さらに、ネットワークを介した遠隔操縦が普及していくと、その作業ログも蓄積していくため、自動運転のためのデータとして活用できます。
このように、Model Vのようなソリューションを普及させることは人手不足や生産性向上を多角的にアシストすることにつながるわけです。
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IoTがつくる ”超接続社会”