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Co-Create the Future
2024.08.27(Tue)
この記事の要約
NTT Comが2023年1月に立ち上げた「Value Add Femtech Community」の第5回ワークショップが開催されました。
テーマは、企業が福利厚生としてフェムテックサービスを導入する際の課題や利点について。
第一部では、参加企業がグループに分かれ、企業の厚生担当やダイバーシティ推進担当が求めるものを議論しました。主な意見として、従業員の長期勤続、健康課題の可視化、女性ロールモデルの増加などが挙がりました。また、経営層への説得方法や、男性社員の理解促進などの課題も指摘されました。
第二部では、一般社団法人Femtech Community Japan理事の木村恵氏による講演が行われ、海外フェムテックの最新トレンドが紹介されました。クラウド技術やAIの活用、女性の健康研究の進展などが取り上げられ、日本市場の現状と今後の展望について語られました。
最後に、参加企業による新サービスの紹介と交流会が行われ、フェムテック領域での連携可能性が探られました。
※この要約は生成AIをもとに作成しています。
目次
第一部は19社、第二部は23社が参加した今回のワークショップ。冒頭、ワークショップのねらいやグループディスカッションのテーマと進め方について、NTT Comスマートヘルスケア推進室の岡田彩花から説明が行われました。
「女性活躍を推進する企業の厚生担当やダイバーシティ推進室に所属する方々が短期・長期的にどのような目線で何を求めているのかを深掘りする」ことをねらいにした今回のワークショップ。その背景には、女性特有の健康課題による社会全体の経済損失が非常に大きいという算出が経済産業省から出されたことなどから、企業の間で健康経営や女性活躍の課題解決を目指したサービスを福利厚生として導入する動きが出てきていることがあります。
グループディスカッションでは、参加者は4つのグループに分かれて企業が福利厚生目的で導入するフェムテックサービスに求めるものを議論。「B2B2E(※)」モデルをベースに、企業の厚生担当・ダイバーシティ推進担当などに向けた福利厚生サービスを提供し、企業で働く女性の活躍促進を目指すビジネスモデル案を課題の洗い出しから考えていきます。
近年、政府は男女平等と企業の競争力向上を目的に女性活躍推進の政策を強化し、なでしこ、くるみん、えるぼし等の女性活躍推進に関わる認証を取得する企業は、行動計画の策定と公開が義務付けられています。また、プライム上場企業は2030年までに女性役員比率30%を達成するという目標も課されており、女性が働きやすい職場環境を整備することが求められています。
これらの状況を踏まえ、顧客のニーズを深掘りする作業を参加者が個人ワークとして取り組むところからグループディスカッションはスタート。人事・ダイバーシティ推進部署の担当者になったつもりで、「Customer Jobs(会社のあるべき姿)」「Gains(『あるべき姿』に到達するためにあったら嬉しいと感じること)」「Pains(『あるべき姿』に到達するために障害だと感じること)」を付箋に書き出します。
その後、各自が付箋の内容を発表し、「Customer Jobs」「Gains」「Pains」に分けてホワイトボードに張り出しながらディスカッションを進めていきます。今回のディスカッションの目的は、意見やアイデアを数多く挙げることで、結論を導き出す必要はありません。
議論を経て分類された付箋を眺めてみると、皆が挙げた意見の多くに共通点があることが明らかになりました。
例えば、「Customer Jobs」に関して多く挙げられたのは、従業員が長く働き続けることができる企業、皆が男女それぞれの健康課題を可視化し、互いに把握している状態、女性ロールモデルの増量、ライフイベントに左右されずに働ける環境、などです。
これに対して、「Gains」と感じるものには、社員の課題を把握できるツールやサーベイ、悩み相談会・座談会、気軽に相談できる保健師やオンライン窓口、卵子凍結や不妊治療などライフステージに向けた金銭補助や休暇などの手当てなどといったアイデアが溢れます。ある男性参加者から「生理用品や頭痛薬など、月経の際の女性の出費が多いので、女性専用手当てを導入すべきだ」というアイデアが出た際には、女性参加者たちが大きく頷く姿が印象的でした。
「障害だと感じること(Pains)」として挙げられたのは、相談しにくい環境、自身の体質や適切な対処法に関する理解の不足、女性特有の課題に関する男性社員のリテラシーの低さ、管理職の女性起用の少なさ、人員不足、などの意見です。「生理休暇が用意されていても、上司が男性だと言いづらくて使えない」という悩みが挙げられた際にも、多くの女性参加者たちが同意を示していました。
また、あるグループでは、フェムテックサービスを福利厚生として取り入れようとする際に、どれだけ良いサービスを立ち上げても、経営層の同意なしには導入できないという構造的な課題が挙がり、この壁を越えるためにはどうしたら良いかということを起点にしながら話が進められました。
すでに、生理用品を社内の女性用トイレに設置するプロジェクトを進行しているという女性参加者は「女性だけではなく男性も含め、従業員全員にメリットのある福利厚生サービスだと説明できることが重要」だと語り、サービスの分かりやすさや経営陣への説得材料として数値やエビデンスを収集することなど、稟議を通すための工夫が挙げられました。
また、男性参加者からは、「そもそも職場に女性が少ないことも理由の1つではないか」という懸念が挙げられました。女性が少ない環境で、女性特有の健康課題に対する理解を促進することや、女性が意見や成果を出せる文化を形成することへの難しさを訴え、人事採用のジェンダーバランスに関しても見直す必要があると指摘しました。
最終的にこのグループでは、フェムテックを福利厚生サービスに取り込むためには、経営層のマインドチェンジが必要だという結論でまとまりました。
グループディスカッション後の発表ではその内容を参加者全員に向けて次のように共有しました。
「経営層には、フェムテックの導入は福利厚生ではなく『経営戦略』であり、コストは『投資』と考え、女性だけではなく会社全体の課題であると認識してもらう必要があり、そのためには10年、20年先の未来を見据えた長期的なロードマップを示すため、まずは社内で試験的に導入し数値やファクトを取ることも重要だと考えます。これらの前提のもとで、理解促進を図るためセミナーを実施したり、サービスに関する社内認知度を上げる工夫をしたりすることでさらなる効果に期待ができます」
発表では他のグループからも福利厚生としてのフェムテックサービス実装に向けたアイデアや見解が語られ、多様な視点が交わるポイントから共通の課題や解決の糸口が浮き彫りになりました。
第二部では、「一般社団法人Femtech Community Japan」 理事の木村恵氏を迎えた講演会が開催されました。Femtech Community Japan は、フェムテック関連のビジネス、プロダクト、サービス推進のために幅広く関係者がつながり、議論や情報共有を行うネットワークです。
講演のテーマは「世界のフェムテックスタートアップから学ぶ女性ヘルスケア新時代」。海外フェムテックの5大トレンド「クラウド技術とデータ活用」「女性の健康研究」「AI」「保険償還(福利厚生)」「資金調達」に関する情報が、既存のサービスや製品と共に紹介されました。
「『クラウド技術とデータ活用』『女性の健康研究』という観点では、ウェアラブルデバイスの進化により、個人データの収集とビッグデータ解析が進展し、個別に最適化された健康ケアの提供が可能になってきました。また、日本とアメリカでは女性の健康に関する研究が注目され、特に更年期などの問題について積極的に取り組まれています。
『AI』に関しては、AIを活用した月経周期の予測や、ChatGPTを使ったAIチャットボットの利用が拡大しており、女性の健康管理や医療支援に革新的なアプローチが試みられています。AIを使って、自宅で簡単に不妊治療に関連する尿内の四つのホルモンを測定できるデバイス『MIRA モニター』や、AIベースの体外受精のソフトウェアのプラットフォーム『EMA』など画期的なデバイスが登場しています。
『保険』については、フェムテック先進国のアメリカでは保険システムが重要な役割を果たしているという点に注目しています。日本では全員が公的保険に加入し、医療費の負担が軽減されていますが、アメリカでは民間の保険が主流です。予防医療の重要性が認識され、フェムテックのスタートアップとの連携が強化されています。そして、優秀な人材を獲得するために、フェムテックのサービスを福利厚生として導入する企業が増えています。
『資金調達』の観点では、大手企業によるフェムテックスタートアップへの投資や提携が増え、この分野への関心と投資の高まりが見受けられます」
そうした分析に加えて木村氏は「日本は海外のフェムテック市場と比較すると6〜8年ほど遅れている」とし、欧米のサービスや仕組みをそのまま取り入れようとするのではなく、「日本の文化や構造に適したスタイルで導入していくことが大切」と語りました。
講演終了後は、会員交流会が開催されました。交流会の冒頭では、Value Add Femtech Community参加企業であるネクイノと三菱総合研究所の2社より事業紹介がありました。
ネクイノの平本千登里氏より紹介があったのは、新規サービスの「トレルナ」です。
医療系のITベンチャー企業として、オンラインピル処方を実現するサービス「スマルナ」や、婦人系の疾患や精神的な相談ができる「スマルナステーション」、そして福利厚生サービスの一環として実装している「スマルナforBiz」などで知られる同社ですが、サービスを展開していくなかで多くの女性が生理用品に関する悩みを持つことに気がついたそうです。
「『日常の女性の苦悩を一つでも取り除けるようなサービスを』という思いから誕生した生理用ナプキンの無料提供サービスが『トレルナ』です。専用アプリと、個室に設置されたデジタルサイネージを使い、広告収入によってナプキンを無償提供することで、生理に関する日常的な女性の悩みを解消することを目指しています。2024年5月に始動したばかりのサービスですが、年内には商業施設や学校、公共交通機関などの6,000個室への設置を予定しています。これにより、女性の生理の当たり前を変え、より快適な生活を提供することを目指しています」
次に、三菱総合研究所の福田健氏と小峰えりか氏から紹介があったのは、「健康エール」で、LINEを活用した健保・自治体向けの受診勧奨・広報支援サービスです。
「『健康エール』は、女性の健康に着目し、総務省の実証事業によりスタートしたもので、『健保を身近に感じてもらい、組合員の健康促進を目指す』というコンセプトで展開しています。具体的には、健保組合のLINE公式アカウントを通じて情報配信を行い、健康・医療に関する情報や検診の案内などを提供しています。また、ICTツールを活用して健康法アプリの利用促進や検診受診の効率化も図っています。
このサービスを通じて解決しようとしている課題は主に3つあります。1つ目は、被扶養者の受診率の向上です。専業主婦などが多い被扶養者に対して、健診の重要性を伝え、受診率を高める取り組みを行っています。2つ目は、乳がん・子宮がん検診の受診率向上と、女性の健康に関するリテラシーの向上です。3つ目は、デジタル活用により検診受診までの流れをスムーズにし、利便性を高めることです。健保・自治体の財政環境が厳しい状況のなか、デジタル化への需要が高まっており、利用者からの反応も好評です。さらに、高齢者層においてもがん検診や生活習慣病に対する関心が高く、リテラシー向上の取り組みも強化していく予定です。
『健康エール』の利用者からは、女性をターゲットとしたコンテンツやサービスに対する要望が高まっています。この取り組みに関心を持つ方々と連携し、さらなる発展を目指していきたいと考えています」
各社による事業紹介の後は、会員同士による歓談・情報交換が行われました。「フェムテック」というキーワードのもとさまざまな業界の企業が一堂に会したことで、コラボレーションの可能性は無限に膨らみ、ワークショップの時間とはまた違った盛り上がりが見えました。
今後も「Value Add Femtech Community」では、イベントやメディアを通じて、フェムテック領域の企業の輪をさらに広げていきます。ぜひ、今後の活動にご期待ください。
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