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2024.07.05(Fri)

世界初のテーマパーク「イマーシブ・フォート東京」を支える刀フォースのマーケティングとデータ活用とは?

#スマートライフ #CX/顧客体験 #データ利活用
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)再建の立役者として知られる森岡毅氏が率いる、株式会社刀。同社のマーケティングは、徹底してデータや数学に基づいていることで知られています。データを事業成長に結びつけられていない企業も多いなか、刀グループはなぜ数々の事業を成功に導くことができるのでしょうか。

刀グループのなかでエンターテインメント施設のチケット販売・データ予測のクラウドサービスを担う刀フォース合同会社 代表兼イマーシブ・フォート東京 代表の田村考氏と、NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)でマーケティングDXの専門家(CATALYST)として活躍する川口昌宏が、今春オープンしたばかりの刀が開発・運営するテーマパーク「イマーシブ・フォート東京」で対談しました。

目次


    お台場ヴィーナスフォートの跡地を活用して2024年3月に開業したテーマパーク「イマーシブ・フォート東京」。一歩足を踏み入れるとそこはまるで別世界。映画やアニメなど物語のストーリーの中に入り込んでしまったかのような“究極の完全没入体験”が話題です。

    シャーロック・ホームズの世界に入り込み、事件や謎解きの現場を目撃するアトラクション「ザ・シャーロック -ベイカー街連続殺人事件-」や、東京リベンジャーズのキャラクターと一緒に脱出をめざす「東京リベンジャーズ イマーシブ・エスケープ」など、多様な「完全没入=イマーシブ体験」が用意されています。

    刀が運営するイマーシブ・フォート東京。田村氏はイマーシブ・フォート東京のプレジデントも務める。写真は人気アトラクション「ザ・シャーロック」。

    中世ヨーロッパのようなパーク内を歩いているだけでも、キャストに話しかけられて強盗を手伝わされたり、ステージに導かれて踊ったりと、物語の世界に自然と巻き込まれていきます。

    実はこの“世界初”のイマーシブ・テーマパークの企画・運営にも、刀グループのデータ利活用ノウハウが活かされているのです。

    施設内ではさまざまなイベントが用意され、来場者をイマーシブ体験へ誘う。

    前例なき取り組み。刀はどのようにデータと向き合ったのか

    川口昌宏(以下、川口):ヴィーナスフォートにはよく来ていましたが、そのまま内装や設備を活かしていている部分も多いのですね。懐かしさもありつつ、遭遇する体験はまったく新しいものになっていて、わくわくしました。

    田村考(以下、田村):ありがとうございます。もともと中世ヨーロッパの世界観でよく作り込まれた施設だったので、その良さを生かそうと考えました。

    イマーシブ・エンターテインメントをこれだけ大規模に行う試みは、世界でも例を見ないものです。ゲストにどう受け入れられるか未知数なところもありましたが、現状狙い通りの反応をいただいています。

    田村考 | 刀フォース合同会社 代表/株式会社刀 シニアパートナー
    広告会社で10年にわたりマーケティングを担当。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの運営会社に参画し、ブランディング&コミュニケーション、プロダクト開発のマネジャーを経験後、デジタルマーケティングチームをリードしてマス・PR・デジタルが三位一体となった認知形成および購買行動を変革させるコミュニケーションモデルを完成させた。2023年に刀フォース合同会社の代表に就任。現在はイマーシブ・フォート東京のプレジデントも兼任する。

    川口:刀といえば高等数学を用いたマーケティングですが、前例のないイマーシブ・フォート東京の取り組みにも、データが活かされているのでしょうか?

    田村:イマーシブ・フォート東京は世界初の試みですが、体験の種類が違っていても提供する「情緒的価値」が似ている事例はどこかに存在します。類似点のある取り組みを探し、まずはそれらの定性データをサンプルにしながら、経験と観察に基づいて仮説を考えていきました。

    刀グループではこれまでの施設運営のノウハウに基づいて、消費者のブランドに対する好意度を表す「プリファレンス」を定式化しています。提供する体験が変わっても、プリファレンスの基本的な構造自体は変わりません。最初の仮説を考えた後は、プリファレンスの式に基づいて仮説を変数に落とし込んでいきます。

    それから実際に調査を行い、仮説を消費者に問うことで、回答データと過去データの変数の幅を一つひとつ確認していきます。それにより仮説検証を進めていくのです。

    川口:一般的にもマーケティングにおける仮説検証の重要性は多く語られるところです。しかし、その時々によってゲストの感情が移り変わる体験型エンターテインメントのプリファレンスを分析するのは容易ではないでしょうね。

    川口 昌宏 | NTT Com ビジネスソリューション本部 Chief Catalyst /Business Producer
    NTTドコモにて自動車メーカーへの営業や出向など、20年以上法人ソリューションに従事。現在はモバイル分野におけるビジネスプロデュース担当としてB2B2X案件に数多く携わる。NTTドコモが持つ会員・顧客基盤データを使ったマーケティング支援や、データ利活用コンサルティングに従事し、クライアントのマーケティングDXを推進する。

    田村:おっしゃる通り、例えばアイスクリームも気温が15度のときと30度のときでは食べたいと思う気持ちに変化がありますよね。プリファレンスはまさにその瞬間、そのコンテクストによって変わってくるため、それを構成する要素も無限にあり得ます。

    しかし、どんなビジネスであっても、刀のマーケティングにおいて最も大事なのは消費者を理解することです。そのために欠かせないことの1つとして、消費者の一次データを取得する必要があります。

    特にエンターテインメント施設の運営においては、チケットの購買データを自社で取得できなければ、マーケティングの入口にも立てません。イマーシブ・フォート東京では、ブランドサイトに自前のチケット販売環境を用意することで、ゲストのデータを一元的に管理できるようにしています。そのチケット販売システムが、刀フォースが提供するクラウドサービス「Katana Force」です。

    刀のデータ利活用を支える新会社・刀フォースとは?

    川口:Katana Forceは自社の運営施設での利用だけでなく、外部の施設へのサービス提供も想定されてらっしゃるのですよね。どういったサービスなのですか。

    田村:Katana Forceの主な機能は、集客施設に高い収益性をもたらすチケット販売システムです。入場チケットはもちろん、たとえば待ち時間の短縮や、高付加価値な体験の確約など     さまざまな権利を一元的にチケット化することができ、キャパシティや需要に基づいて柔軟に価格設定・在庫管理できるのが特徴です。施設のなかに眠っている価値を、商品として収益に変えていく鍵になると考えています。

    また、購入・着券・来場者情報データに基づいた分析・予測にも強みがあります。正確な需要予測によって、在庫や人員を適正化し収益性向上が見込めるでしょう。

    川口:なるほど、自前のチケット販売システムでありながら、顧客データ基盤でもあり、刀の需要予測のノウハウも詰め込まれているのですね。

    田村:そうですね。刀フォースは、事業を安定的に運営していくにあたって需要予測を重要視しています。曜日、気温、天気、季節など、さまざまな要因で変動する来場者のデータと行動を毎日リアルタイムに蓄積・予測することで、自社のリソースをどこに投下すべきなのか、今後どのように運営を改善していけば良いのかを判断する材料になります。

    実務として長年向き合ってきた刀のマーケターたちのノウハウを取り入れることで、単なるプラットフォームではなく、実際に現場で取るべきアクションにつなげられる武器として活用していただきたいです。

    川口:このような、リアルタイムデータを活用してトレンドを把握する動きがコンビニエンスストアでも行われていますね。NTT Comが提供した人流データに基づいて、お弁当の発注数を変えたり、セールを実施したりするなど、リアルタイムのデータが“売り”に直結している事例が出てきています。

    イマーシブ・フォート東京でも需要予測に応じて、施設内のオペレーションを変更することはあるのでしょうか。

    田村:ゲストの数によって、スタッフの人数や配置を考えたり、飲食・物販の仕込みや在庫の量を考えたりと、パーク全体のオペレーションが変わっていきます。データは安定的な事業運営に欠かせません。需要予測に応じて各チームがさまざまな判断をしていくのは、私たちの中では当たり前のルーティンになっていますね。

    データより先にあるべき「消費者を知りたい」というマインドセット

    川口:刀グループではなぜ組織全体でデータドリブンにビジネスを展開できるのでしょうか。

    田村:私たちが考えるマーケティングとは消費者が求めるものを提供していく活動全般を指します。マーケターとはマーケティング部のメンバーを指すわけではなく、消費者を深く理解している人。つまり、われわれはまずデータありきではなく「消費者を知りたい」という動機が前提にあり、知るための方法としてデータを捉えています。これは刀グループ全体に自然と身についている考え方だと思います。

    川口:なるほど。データありきではなく、消費者を知りたいという動機のためにデータを活用する。非常に重要なポイントですね。ただそうは言ってもなかなかデータを上手く活用できないという企業も少なくありません。刀グループでは、何かフレームワークに落とし込んでいるのでしょうか。

    田村:仮説設計においてわれわれは、「Who」「What」「How」を大事にしています。エンターテインメント事業に関わらず、いかなる事業をつくるときも、まず「誰=Who」がターゲットなのか定義します。次に、その人たちが「何=What」に価値を感じるのかを定める。「Who」「What」を常に持つようにするのです。

    すると、世の中の他のビジネスを見る視点も変わってくる。異業種でも共通点を見つけやすくなり、例えば、「スマホでこのゲームをやっている人(Who)は、テーマパークのこのアトラクションを好む人(Who)と似ているかもしれない」といった仮説が思い浮かぶようになります。このフレームワークを持って観察を重ねると、仮説検証の勘所がつかめるでしょう。

    その先の「How」は、実際にターゲット(Who)に価値(What)をどのように伝えるかという手段の部分。提供すべき価値をどれだけ表現できるかが重要です。

    イマーシブ・フォート東京でも事業を対象にした大きな「Who」「What」「How」は定義されていますし、その上で「レストラン」「ハロウィンシーズン」など、さまざまな粒度でも「Who」「What」「How」を設計しています。

    マーケターだけでなく、多くの事業に関わるメンバーが「Who」「What」「How」を共有することでデータ活用のスタートラインに立つことができるでしょう。

    チケット販売システム「Katana Force」をリリースした狙いもまさに、日本の集客施設の方々がデータに基づいて「Who」「What」「How」を議論できる環境を提供することなのです。

    第三者チケット販売ブランドへの委託ではなく、自社で来場者の一次情報を収集・分析し、消費者視点での運営のアクションを取れる施設を増やせれば、多くの消費者にとって彩りのあるレジャーの選択肢が増えるはずと考えています。

    企業のデータ利活用の壁と、本質的な活用のためのアプローチ

    川口:NTT Comはネットワークインフラをご提供するなかで、さまざまな企業からマーケティング基盤の構築をご依頼いただいてきました。しかし、データを入れる箱を作っても上手く活用いただけていないケースが少なくありません。

    田村:たしかに企業のデータ活用の現状を見ると、箱を作って大量のデータをまとめたり、クロス集計をかけて整理したりといったことに満足してしまっているケースが散見されます。

    しかし、本来は上位に消費者がいて、マーケティング戦略があり、どのようなデータがどうまとまっているべきかが決まってくる。そして、データが整理された状態でスタートライン。そこからデータに基づいた仮説検証がはじまっていくべきです。

    川口:ビジネスプロセスの設計から伴走して、データ利活用まで支援していくのはまさに刀グループの得意領域ですよね。

    NTT Comでは、2022年にNTT ドコモと統合してから、当社の有する約1億人のdポイントクラブ会員のデータを利用したファンプロファイリング分析や商圏/人流分析など行っています。位置情報やd払いなどの購買情報、アプリの利用状況といったNTTドコモならではのデータを活用して、ユーザーの潜在的なニーズや深いインサイト分析を行い、施策のご提案や示唆だしなど支援を行っています。

    例えば、「福島県浜通り地域での来訪者による消費促進事業」では、浜通りの来訪者の呼び込みと域内における消費拡大を図るため、過去に浜通りに来た人を正解データとしてプロファイリングを実施しました。「60歳代、東京都在住、旅行・グルメサイトをよく閲覧している人」など、ペルソナの解像度を上げて類推拡張し、dポイントクラブ会員の中から対象者を抽出。対象者には浜通り内加盟店でのdポイント還元キャンペーンの案内を配信しました。この取り組みで、実際に消費が2倍ほどに増えています。

    また、弊社がご支援したジャパンラグビーマーケティング様は、日本のラグビーファンを増やすという目的のもと、プロモーションとロイヤルカスタマー育成を実施するため、セキュリティを担保した上で、行動情報を取得するデータ基盤を構築しました。当初、別々で管理されていた「チケット購入サイト」や「ファンクラブ会員」など各サービスサイトのIDを統合。統一されたIDで蓄積されたデータを分析、可視化するデータ基盤を使い、ドコモデータと連携してマーケティング施策の実施に活用していく予定です。

    さらにはNTTドコモの有する位置情報を活用することで、チケットを購入した代表者だけでなくそのご家族や友人などの同行者まで把握、分析することが可能になりました。

    田村:スマートフォンの位置情報によって同行者も含めたより複雑なデータが取得でき、施設でどう行動しているのかまで把握できれば、新たな仮説検証ができるようになりそうですね。

    また、当然データポイントが多いことは、仮説検証の精緻さにもつながります。膨大なビッグデータと、徹底的に消費者心理を洞察することの両面で理解を深められる機会は非常に興味深いです。

    刀グループとして、観光やレジャーにまつわる産業は次世代の日本の食い扶持の軸にならなければいけないと考えています。

    さまざまな集客施設の支援を進めるなかで、より多くの事業者の方が消費者のことを知り、戦略を立てて成長を遂げるためには、多くの消費者データにアクセスできる環境と、活用できるマーケティング思考が必要です。刀フォースもそのために立ち上げたサービスであり、共感するところも多いです。

    川口:ありがとうございます。本日のお話に挙がったようにデータ利活用においては、集める箱とデータがあるだけでは不十分。ビジネスの設計図を基に目的に向かってデータを集めるという共通認識がないと、データ利活用は進みません。

    一方で、それが企業においていかに難しいかということも実感しています。最初の仮説設計の部分でしっかりと合意形成を行い、共通言語化した上でデータ基盤を提供する。そういった刀フォースさんのアプローチは大いに見習わせていただきたいところです。

    これまでは基盤構築を主としてきたNTT Comですが、グループ再編により、ドコモデータを利活用したマーケティング支援業務まで可能になりました。NTT Comと刀フォースさんのそれぞれの強みが合わされば、エンターテインメントやコンテンツ産業、そして観光産業などさまざまな取り組みでデータ活用の壁を乗り越えて、新たな産業創出ができるのではないか。今日の対談を通して、そんな可能性を感じることができました。

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