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Coming Lifestyle
2024.06.14(Fri)
この記事の要約
NTT Comはデータ、デザイン、地域密着という3つの強みを活かして、唯一無二の観光DXを推進しています。
北見市では地場の観光事業者とワークショップを開催し、データ分析結果を踏まえながら、観光戦略やデジタル施策を参加者自身が主体的に検討しました。そこで導き出された「おひとりさま大歓迎な観光都市北見」というビジョンの実現に向けて、今後はアイデアを具体的な施策につなげていく段階に入ります。
NTT Comは北見市をモデルケースとして、総合力を発揮しながら観光DXを通じた地方創生に貢献していきたいと考えています。
※この要約はChatGPTで作成しました。
目次
——観光庁が実施する「地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化事業」に北見市が採択されたことを契機に、北見市との観光DXの取り組みがスタートしたとのことですが、まずは観光DXとは何か、そしてNTT Comの観光DXがどのようなものなのか教えてください。
安藤隆紘(以下、安藤):観光DXとは簡単にいうと、効率化や利便性向上だけでなく、デジタル技術を駆使してビジネス領域の拡大や新たな観光サービスといった価値創出を進めていこうという取り組みです。稼げる仕組みづくりによって地域社会経済に好循環を生むことを目指しています。
一般に、観光DXのデジタル技術実装の検討には4つの柱があるといわれています。1つ目は「旅行者の利便性向上・周遊促進」。2つ目は宿泊業や飲食業など、地域で働く人たちの生産性の改善を実現する「観光産業の生産性向上」。3つ目はデータを活用した「観光地経営の高度化」。そして4つ目がそれを支える「観光デジタル人材の育成・活用」です。
この4つの柱は3つ目の柱である「観光地経営の高度化」をハブに連動しています。事業者間や地域間でデータ連携が強化されることで、旅行者の体験価値と観光地の収益を最大化する。それによって観光地の地域活性化と経済社会を持続可能なものにしていこうとしています。
そのためのデータ活用基盤(Data Management Platform)も欠かせません。観光地が統合されたデータ基盤を持つことで、戦略策定・マーケティング・事業者の支援実現などDXの推進が可能になるからです。
観光DXは観光関連事業者がそれぞれ個別に推進するとともに、観光地域づくり法人(DMO)や自治体・事業者などが連携し、地域一体・異業種連携も視野に入れて取り組みを進めることが肝要です。
しかし人材・体制・コストなどの課題があり、事業者が個別に進めるだけでは限界があります。そこでNTT Comは戦略策定からデータの蓄積分析基盤、各種デジタル施策まで、地域の特性や課題を踏まえながら提案・提供を行っています。
——NTT Comが全国で観光DX事業を推進する中で、北見市との取り組みに至った経緯について教えてください。
鈴木貫大郎(以下、鈴木):私たち北海道支社 ソリューション営業部門はNTT Comの北海道の営業組織として道内の自治体や企業に地方創生に資するICTソリューションやDX施策を提案しています。今回は北見市の商工観光部 観光振興室さまから「北見市は特色ある観光資源を有しているが、現状はビジネス客が多く、観光消費へ結びついていない」との課題を解決する目的で観光庁の令和5年度事業「地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化事業」に応募をしたいというご相談をいただきました。そこで観光DXに関して豊富な実績を持つ第二ビジネスソリューション部やソリューションサービス部、デザインスタジオKOEL(以下、KOEL)といった社内組織と連携をし、提案を検討することになったのです。
そして事業が公募採択され、私たちが作成をサポートしたのが、来訪者データにもとづいた観光戦略「北海道 北見市 面的DX化計画」です。
この計画の目的は北見市のビジョンである観光目的での「ちょっと立ち寄りたくなるまち きたみ」を実現させるために、現状多く訪れているビジネス客に対し、北見市の魅力的な観光資源に触れる機会を増やし、ビジネス客が家族や友人を連れて再訪することを促進、さらなる消費増額につなげることで、持続可能性の高い観光地の実現を目指すことを計画目標としました。
多田大輔(以下、多田):具体的な計画の概要ですが、まずは北見来訪者のGPSの位置情報を活用した人流データをBIツールで可視化したデータ分析基盤を構築します。来訪者の属性・行動データを把握・分析することで観光戦略の企画立案が可能になります。そうしたデータをデジタルマップに反映させ、北見市の観光施策のブラッシュアップや効果的なデジタルマーケティング、消費を促進する仕組みを導入します。データに裏打ちされた最適なアプローチによって訪れる人が特別感を得られるような観光戦略や企画、施策の立案とその実施が、集客と消費増額の好循環サイクルを生み出すことが計画のゴールです。
——具体的にどのようにデータを取得し、活用するイメージなのでしょうか。
多田:ワークショップのインスピレーショントークで人流データから来街者の特徴や回遊行動の分析報告をしましたが、あのようなセグメントの把握やセグメントごとのデータ分析結果を活用したデジタルマーケティングを実行します。そのほかにも旅マエ・旅ナカふるさと納税システムの導入、観光施設などのデジタルクーポンコンテンツ設計、情報発信のためのデジタルマップの拡充など、さまざまな活用方法があります。
——データ分析基盤と最適な各種デジタル施策をNTT Comでは提案されているのですね。
多田:はい。データドリブンな観光戦略の企画立案の実現のためのBIツールダッシュボードを私たちはほかの観光地でも構築・提供してきた実績があります。取得するデータは顧客属性が分かる粒度で匿名処理し、地域全体のデータが比較可能な形で閲覧可能にします。データによって潜在行動を把握することで、観光地の特徴やターゲットに合ったコンテンツの造成やマーケティングが可能になります。
そしてNTTグループのさまざまなアセットを活用してのデジタル施策の提案ももちろん可能です。
——面的DX計画を策定したのち、なぜ今回のワークショップを企画されたのでしょうか。
高見逸平(以下、高見):多田がお話ししたように私たちはデータ分析基盤からデジタル施策まで提案・提供することが可能です。一方で観光戦略やデジタル施策の立案実行に取得したデータをどのように生かすかは私たちのお仕着せではなく、北見観光に関わる皆さんに当事者として考えていただく必要があると考えたからです。
安藤:それができて冒頭で触れた「観光地経営の高度化」の実現に近づくのです。今回はそのきっかけをつくるべく、KOELにワークショップの企画・設計をしてもらいました。私たちや北海道支社、ソリューションサービス部、KOELのメンバーで「デジタル化・DXに関する戦略が北見市において策定され、その戦略にもとづいて観光経営が行われている」という将来の北見観光のあるべき姿に近づくためにはどのようなワークショップにすべきか、最初に綿密な議論を重ねました。
多田:データ担当の立場としては、旅行者の体験価値と観光地の収益を最大化するためにデータが重要で有効なのだということを、北見の人たちにぜひ実感してもらいたいと思っていました。実際ワークショップで細かい属性情報や回遊行動を聞いた参加者の方々は自身の経験と照らし合わせてこのデータは役に立てられそうなど、直感的に判断されていた様子でしたし、デジタル施策の発案ではデータをベースに深いところまで考えておられました。
高見:デザイン担当としての大切な役割として、こうしたデータを人とつなげる部分がありました。
北見市の事例では、人流データをもとに地域外の人がなぜ北見市を訪れているのか、そして北見市内でどこを回り、どのような経路で北見市から出て帰っていくのか、行動パターンから北見市の魅力となる部分を分析して伝えしました。これは読み解いたデータから私たちデザイナーがストーリーを醸成し、ワークショップに参加した方々がイメージしやすい状態に翻訳して伝えることが目的だったのです。
一方でデータから知り得た情報からカスタマージャーニーを作成する上では現場のリアルな状況を知ることも欠かせません。私たちは事前に現地に足を運んで市役所職員や事業者など現地の方々に何度もインタビューを行いました。そこで得た生の声とデータを組み合わせてこそ、地域の方々が納得感を持って自分ごと化しやすいストーリーを提示できるからです。こうしてデータと北見に関係した人々をつなげる橋渡しをしたことに、デザイン部門のKOELが参画した意義があると考えています。
——ワークショップをどのように振り返っておられますか。
鈴木:今回のワークショップが非常に有意義だったのは、一般論としてデータ分析のノウハウをシェアするのはもちろん、北見市に入り込んで分析したデータを出しながら、観光DXの進め方を示せたことだったと思います。
印象的だったのは、参加者の方々がデータを根拠に観光体験のストーリーを想像する過程で、北見にすでにある価値だけでなく、今後必要とされるアセットまで具体的に自分たちで考えて導き出せていたことです。また、3年後の理想の北見観光の姿というバックキャストの視点から北見観光の未来を参加者同士で語り合うというワークショップの設計もこれから観光DXを主体的に推進する土壌づくりとして役に立ったのではないでしょうか。北海道支社として北見に観光DXが根付いていく種をまけたことを実感してうれしく感じています。
多田:北見市のワークショップは準備に3カ月ほどかけましたが、データ担当としてデータ分析をするだけでなく、その間に何回も現地に足を運んでステークホルダーの方々へのインタビューに参加し、自分の目でデータの対象地域の視察も行いました。データだけでは見えてこない現場のリアルな声や情報を得たことが有効なデータ分析につながったのではないかと思います。
高見:ワークショップの設計と進行にあたっては、参加者がいかに主体的に入り込めるかを大切していました。とにかくたくさんアイデアを出すプログラムもありますが、今回は1日目に「どういう北見でありたいか」のビジョンを全員で策定した上で、2日目にはアイデアと施策を形にしてくという構成でした。私たちが提示したのはあくまで観光戦略を立てるためのヒントとデータの読み解き方の一例でしたが、参加者には議論の中で自律的で持続性のある観光戦略のプロセスを実感してもらえていたらうれしいです。
安藤:高見が言ったようにデータをもとに北見市の方々が自らで観光DXを推進していかなければ、持続可能かつ自走的できる仕組みになりません。それが、今回のワークショップで一番伝えたいことでしたが、一定の成果をあげられたのではないかと思います。
鈴木:準備期間を通じて北見市の方々との信頼関係が深まったことも、今回の取り組みの大きな収穫でした。NTT Comのデータ、デザイン、地域に根付いたサポートといった総合力を使ったワークショップを実施できたことは優良な取り組み事例の1つになったと感じています。
——今後の北見市での観光DXの取り組みについて展望などをお聞かせください。
鈴木:今回のワークショップをスタートとして、北見の観光DXに関する取り組みにも貢献できればと考えています。そして北海道支社としてはこの北見の取り組みが観光DX事業の最初の事例となるので、これを先行事例として道内に展開していきたいですね。
高見:NTT Comにはデータの専門家もデザインの専門家もいるという強みがあります。さらに観光DXの事例に多く取り組みながら観光庁を担当する安藤や、北海道で北見市を担当する鈴木のようにお客さまと常に近い距離にいる担当者もいます。これらの連携があって観光DXを起点にした地方創生への取り組みができたという点で、私たちにとっても大きな意味のあるプロジェクトです。さらに次のステップに進んでいければと考えています。
多田:ここからはたくさんあがってきたアイデアを、実際の観光DX施策につなげていく段階に入りたいですね。北見市の方々とワークショップで描いたビジョン、そして私たちが提供するアセットがクロスする部分にスターティングポイントを見出せたらいいなと思っています。
——今後のNTT Comの観光DX事業の展望はいかがでしょうか。
安藤:NTTグループとして地方創生に取り組むという大きな流れがあり、その取り組みのひとつが観光DXです。NTT Comにはデジタル技術があり、さらにデータやデザインといった強みもあります。それらを生かしながら地域を元気にしていきたいというのが観光DXに取り組む私の今後の活動におけるテーマです。
北見市の事例であれば、例えば「旅先納税」など北見市がすでに取り組み始めている観光DX事業をフォローアップし、ときに私が観光庁サイドの視点でアドバイスしていくなど、デジタル施策を運用する中で浮き彫りになる課題を地域の方と共に解決し、一緒に成長しながら関係性を深めていければと考えています。
多田:今回の取り組みを通じて、さまざまな強みをとりまとめ総合力を発揮しながら、観光DXの分野で地方創生に貢献していくことがNTT Comにはできることをあらためて実感しています。
今回のプロジェクトを形にしていくことで、NTT Comの観光DXの認知度を一層高めていきたいと考えています。そして私たちの観光DXに興味や関心を持っていただいたほかの多くの観光地や自治体へさらに取り組みを拡大していきたいですね。
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