Hello! OPEN HUB

2023.03.31(Fri)

デジタルヒューマン、メタバース、ロボティクス
~体験と議論から始まる、テクノロジーと“共生”する未来~

#OPEN HUB #AI
NTT コミュニケーションズ(以下、NTT Com)はOPEN HUB for Smart Worldが立ち上げから1周年を迎えたことを機に、「OPEN HUB Exchange 1st anniversary」を2023年3月10日に開催。OPEN HUB Parkをメイン会場に最新技術を活用した展示や、来場者も交えたセミナー、ワークショップなどを実施しました。想像する未来像が一歩現実に近づいたことを実感する、濃密な1日の様子をレポートします。

目次


    すぐそこにある未来を体験する最新技術の展示

    イベントに訪れた参加者がまず体験できるのが、OPEN HUB Parkを使った展示です。デジタルヒューマン、メタバース、ロボティクス、GXといったテーマに沿って、NTTグループの最新の技術やプロダクトを実際に体験しながら知ることができます。

    エントランスでは、デジタルサイネージ「OPEN HUB Monoliths」に映し出されたデジタルヒューマンのカタリスト、CONNがお出迎え。手渡されたARグラスをかけると、バーチャル空間に笑顔で立つCONNが羽を広げてふわりと頭上へと飛び立ち、移動した先の案内板で会場の説明をしてくれます。少しソバカスのある肌も、意志のある表情も、細い髪の毛一本一本に至るまで、これまでのCGキャラクターにはないリアルな質感に来場者から驚きの声があがりました。
    ※デジタルカタリストCONNについてはこちら

    デジタルカタリスト CONN

    さらに、中央のフロアではマルチ無線プロアクティブ制御技術Cradio®を活用したロボットの展示、デモ走行も。Cradio®は、ユーザーが無線ネットワークを意識しないナチュラルな通信環境の提供をめざし、「無線センシング・可視化技術」「無線ネットワーク品質予測・協調技術」「無線ネットワーク動的制御技術」の3つを高度化、連携させた無線技術群です。

    イベント当日の展示一覧

    デジタルヒューマン~新たなCXの探求と広がり~

    最新のテクノロジーを体感できる数々の展示とともに、会場の中央ステージでは各テーマに沿ったセミナーやワークショップが行われました。

    スタートを飾ったのは、セミナー&ワークショップは、デジタルカタリストCONNを開発した東映ツークン研究所 主席ディレクターの美濃一彦氏と、NTT人間情報研究所 主幹研究員の深山篤氏を招いた「デジタルヒューマン~新たなCXの探求と広がり~」からスタート。

    これまで、主にエンターテイメント領域でデジタルヒューマンのテクノロジーについて研究・開発を行ってきた美濃氏。CONNのプロジェクトは、これまでに養ったデジタルヒューマンのノウハウをエンタメ以外の領域に実装する好機だったと語ります。

    「CONNのプロジェクトにおける個人的なテーマは、デジタルヒューマンを社会実装するということ。それはつまり、エンターテイメントを社会実装するという試みでもあると気が付きました。

    デジタルヒューマンは、丁寧なコミュニケーションが必要な分野でこそ活用すべきものだと思っています。デジタルヒューマンでしかできないことのなかには、コミュニケーションの質を向上させたり、機会を拡大させたりしてビジネスに転用できる可能性があるのです。

    今後、1つの企業につき1人のデジタルヒューマンをつくる、という時代が来てもおかしくないでしょう。リアルとバーチャルが融合し、顧客との接点が複雑化している状況では、双方向でスピーディー、かつ大量で質の高いサービスやコミュニケーションが求められます。一方通行では顧客に届かない時代になっているなかで、最適なコミュニケーションを体現する存在としてのデジタルヒューマンがあり得ると思うのです」

    左:美濃一彦|東映ツークン研究所 主席ディレクター
    右:深山篤|NTT人間情報研究所

    CONNが体現するコミュニケーション。それはデジタルでありながら、容姿や声、仕草に至るまで、CONNの個人性が反映された唯一無二の存在感にその本質があります。CONNがつくられるまでの過程について、美濃氏は次のように語ります。

    「OPEN HUBという場にふさわしいデジタルヒューマンとは何か。そこにいることで人々の感情や行動に影響を及ぼすことができるようなふるまい、姿かたちとは何か、ということがイメージの源泉になりました。

    CONNの顔や表情のデザインは、OPEN HUBカタリスト9人の顔のデータを3Dで撮影し、それらをミックスすることで完成しました。カタリストたちの“容姿”が、OPEN HUBらしさのエッセンスになると思ったのです」

    デジタルヒューマンの個人性を表現するためには、コンセプトを体現した容姿をデザインするとともに、人格においても“らしさ”をデザインする必要があります。CONNの人格を表現するために使われたNTT人間情報研究所独自の技術について、深山氏は次のように説明します。

    「CONNには、NTT人間情報研究所のAnother Meという、人間のデジタルツインをつくり出すための技術の一部が使われています。サイバー世界で活動する分身をつくり出すために、人の内面、感情や心理状態を表現する要素としての声や仕草、身体動作を、それぞれが連動するかたちで生成するAI技術です。CONNで用いている個人性を考慮した身体モーションを自動生成する技術以外にも、年齢、趣味などの個人性のパラメーターも考慮して喋る内容や喋り方をその人らしくする「個人性再現対話技術」という技術も研究開発を進めています。」

    美濃氏によるCONNとの会話のデモンストレーションの様子

    OPEN HUBの401人目のカタリストとして加わったCONNは、今後OPEN HUB ParkおよびVIRTUAL PARKで来客たちを迎えます。

    ロボットが溶け込むこれからの生活

    続いて、ロボティクスをテーマに「ロボットが溶け込むこれからの生活」と題したセミナーとワークショップが行われました。

    セミナーでは、NTT のロボティクスに関する取り組みの全体像を紹介。テレワークロボットなどを活用した「省人化」と、AIアシスタントやビデオ通話などを搭載したパーソナルロボットによる「コミュニケーション」、自動運転機能による屋外・屋内の移動を可能にする「モビリティ」の3つが主要な領域であると説明し、それぞれのロボットの得意不得意を見定めながら、最適な領域に適応していくと述べました。

    さらに、ロボットと人が協働、共生するより良い世界を目指すにあたり、ロボットのハードウェアのみを追っても豊かな世界は実現せず、ロボットと最適なネットワークを築くことの重要性を強調。今後課題となるマルチロボットをコントロールするための取り組みや、無線ネットワークを意識しないナチュラルな通信環境を実現する技術の説明などと共に、会場での体験会も実施されていたロボット「temi」を活用した院内案内やフードデリバリーといった事例紹介や、マルチ無線プロアクティブ制御技術 「Cradio®」の実演なども行われました。

    AI搭載の自律移動型テレプレゼンスアバターロボット temi

    セミナーを経て、ワークショップへ。参加者が所属する会社はメディア関連から製造業、メーカーなど幅広く、それぞれの企業の観点から、あるいは個人的な要望も加えて、今抱えている課題を軸に将来ロボットに期待する役割、実現したいビジョンやアイデアについて話し合いました。

    それぞれ異なるアセットや異なるライフスタイルを持っていたりする立場ながら、ロボットを「使う」ことよりも「共生する相手」として捉え、より良い生活や社会を実現するために必要な存在であるという認識が、参加者のなかで共通していたことが印象的でした。

    一方で、「人に寄り添うロボット」を考える上で、ロボットに任せるべきことのボーダーラインをどのように引くのか、ロボットにどこまで人間的な感情表現や理解を求めるかといった課題整理の重要性も実感する機会となりました。

    セミナーとワークショップの内容をもとに作成されたグラフィックレコーディング

    メタバースへの挑戦―世界のトレンドとケーススタディ

    続いて開催されたのは、「メタバースへの挑戦―世界のトレンドとケーススタディ」と題されたイベントとワークショップ。まず最初に、ロンドンに本社を置くアドバイザリーファームStylus Japanの秋元陸氏から、国内外のトレンドや今後の予測される状況についての講演が行われました。

    秋元陸|Stylus Japan

    一般的にメタバースとは、常時接続可能でインタラクティブな仮想空間として定義されますが、秋元氏は仮想空間とは没入だけではなく「現実世界にデジタルのオブジェクトを導き出すことも含まれている」と言及します。つまり、デジタルの世界で購入したアイテムが、現実世界における私たちの行動に影響を及ぼすという状態も、メタバース的と言えるのです。

    実際に、世界の消費者の51%が「ARやVRの活用が生活を豊かにする」と考えているとされ、特に20代以下の子どもたちは既にバーチャルグッズやデジタルアセット、デジタルファッションを購入し始めており、バーチャルインフルエンサーは一般的なインフルエンサーより高いエンゲージメント率を得るという調査結果も出ているとのこと。1兆ドルの市場規模になると予測されているメタバースは、ブランドコミュニケーションをはじめ、さまざまな業界での活用が進んでいくことが予想されます。

    世界の経営者の71%がメタバースはビジネスにポジティブな影響をもたらすと考えているとも言われ、秋元氏は「メタバースは黎明期のテクノロジーであり、これから10年かけて育てていく必要がある」と語ります。仮想世界に馴染めず違和感を覚える層の人々もいますが、「自分が理解できるかどうかではなく、それを理解するように自分の価値観や考え方を変えていく」マインドシフトが問われていると述べました。

    講義の後は、日本電信電話の梅津佳奈氏、NTT Comの石間満も加わり、秋元氏を交えたクロストークへと移ります。

    左から秋元氏、日本電信電話 梅津佳奈、NTT Com 石間満

    序盤、石間はメタバースが注目されながらもなかなかキャズム(市場に製品やサービスを普及させるために超えるべき障害)を超えられていない点を指摘。企業やユーザーの参加を加速させるための付加価値について考える必要性があると述べました。

    2025年の大阪万博で世界初のバーチャル会場の運営に関わる梅津氏は、デバイスやネットワーク環境の整備といった構造的な部分の整備も大きな課題である一方で、長期的な視野に立ち、マーケットが確立していない分野にチャレンジしていく文化をいかに醸成していくことができるかが何よりも重要であると訴えます。

    秋元氏によると、2023年にはメタバースに長期的な投資を行う海外のラグジュアリーブランドによる事例が多く見られることになり、その動向がファッション以外のさまざまな業界にも影響を及ぼす可能性があるとのこと。「メタバースはライフスタイルを変えるテーマであり、働き方や暮らし方が多様化する中でその受け皿として活用されていくことが期待されている」と述べました。

    講演とクロストークを経て、ワークショップではテーマは「メタバースでビジネスをする上での課題感や現実とのギャップ」をテーマに議論。

    メタバース上に環境や人、プロダクトのデジタルツインをつくることで、サービスの質の向上や、作業の効率化を図る。快適な仮想空間を提供することで、コミュニケーションを改善、活性化し、顧客体験を向上させる――。さまざまな視点から課題が洗い出され、各自が望む未来像が語られました。

    セミナーとワークショップの内容をもとに作成されたグラフィックレコーディング

    事業共創を推進する実験場として生まれたOPEN HUB for Smart World。NTTグループが有する最先端のテクノロジーを基盤に、社会や産業を変革するためのアセットともいえる“人×技×場”が三位一体となってイノベーティブなビジネスアイデアを生み出す試みは、これからさらに進化していきそうです。2年目に突入したOPEN HUBの新たな展開にぜひご期待ください。

    本イベントで実施された各種セミナーはオンデマンド配信でもご覧いただけます。
    ※視聴には会員登録が必要です。

    デジタルヒューマン ~新たなCXの探究と広がり~
    https://openhub.ntt.com/event/6031.html
    ロボットが溶け込むこれからの生活
    https://openhub.ntt.com/event/6036.html
    メタバースへの挑戦 ~世界のトレンドとケーススタディ~
    https://openhub.ntt.com/event/6039.html
    NTT Comが考えるグリーントランスフォーメーション
    https://openhub.ntt.com/event/6034.html
    データ利活用ケーススタディ ~街の情報、ヒトの情報を新たな価値へ~
    https://openhub.ntt.com/event/6041.html