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vol. 06

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実は誰もが手にできるクリエイティブの力。ビジネスに生かすには? OPEN HUB Catalyst File #03 川村 真司

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事業創出において必要だと言われるクリエイティブの力。しかし、そもそもなぜ必要なのか?BBH New YorkやWieden & Kennedy New York、PARTYなど世界有数のクリエイティブエージェンシーでクリエイティブディレクターを歴任してきたWhateverの川村真司さんに、クリエイティブが担う役割について伺います。

【OPEN HUB Catalyst File】
課題の探究から社会実装までをリードする、さまざまな分野の専門家である、OPEN HUBの「カタリスト」。一人ひとりの活動や想いを通して、社会に提供できる価値について伺います。

クリエイティブは、特別な能力ではない

——ビジネスサイドには「クリエイティブは自分にとって縁遠いものだ」と考えている人がまだまだ多い印象があります。川村さんはクリエイティブをどのようなものと捉えていますか。

そもそも人によって「クリエイティブ」という言葉から想起するものは異なると思います。広告をつくるようなことをクリエイティブと呼ぶ人もいれば、アート、あるいはデザインを想起する人もいるかもしれません。僕はクリエイティブとは“アイデアを形にする力”だと考えています。そう捉えると、クリエイティブはTVやギャラリーなどでお披露目されるようなアウトプットを生み出すためだけの能力ではないことに気づくと思います。みんなそう自覚していないだけで、普段から実はクリエイティブな活動をしているんです。組織づくりもそうだし、プロダクト開発もそう。もっと言うと、日々の暮らしの中でもアイデアを形にする力は必要です。

そんなクリエイティブ作業をリードしていくのが、僕のようなクリエイティブディレクターと呼ばれる存在です。クリエイティブディレクターがビジネスの現場にいることで何か変わるかというと、発想がジャンプしやすくなるようにチームを導けるのはもちろんこと、目指すべきゴール・イメージを可視化して共有しやすくし、そこへの道を外さないようにコントロールできることなどがあると思います。事業に取り組む際にロジックやストラテジーは大切ですが、それだけだと理論を積み上げすぎて進行が遅くなりすぎるケースや、こねくり回しすぎて最終的なユーザーにとっては魅力的ではないカタチになってしまうケースがあります。そんなとき、経営者の目指すビジョンをデザイナーがビジュアル化したり、コピーライターが言葉にしたりすると、目指すべき理想のカタチが見えてきて、物事が一気に進むことがあります。そしてそれを実現するためのチーム編成を考えるのもクリエイティブディレクターの役割です。こういうアイデアだったらこういう人が必要で、こうやって進めることで目指すべきクオリティが実現できそうだと舵を取りながら目指すゴールを示し、事業を引っ張っていくことができます。

大切なのは「人の根源的な部分」に触れること

——川村さんはこれまで数々のプロジェクトに携わっていますが、どのようなことを意識して取り組んでいますか。

日頃から心がけているのは、“ユニバーサルなヒューマンインサイトに根付いているか”。世界のどこで育ち、どういう言語を使って、どんな宗教を信じているのかといった違いを超えた、どんな背景をもった人でも共感できるような喜怒哀楽に触れられるものをつくりたいと考えています。個人的には誰も取り組んだことのない表現に常に挑戦したい気持ちもあり、その2つを大切にしてクリエイティブに取り組んでいます。

例えば10年以上前に制作したSOURというバンドのミュージックビデオ『日々の音色』では、通常つながり合えない世界中の人たちがオンラインでつながるという現象をWebカメラだけを使って表現しました。今でこそ当たり前にオンラインミーティングが行われるようになりましたが、当時はそういったツールの使い方や価値感が一般化する前だったので、共感を呼びつつも新鮮なものとして受け入れられたように思います。

SOUR『日々の音色』より。

誰も取り組んだことのない表現という意味では、最近『積紙(つみし)』という玩具を開発しました。このプロジェクトはコクヨ・廣栄紙工・Whateverの3社による共創から生まれたという点でも非常に面白い試みでした。紙が積層されたブロックを上に積み上げるだけでなく横にも噛み合わせることができ、これまでの積木ではつくれなかった摩訶不思議な形を生み出すことができます。これまでなかった「積層した紙を噛み合わせる」という機構をどのようなプロダクトに着地させれば魅力的な商品となるのかを、クリエイティブディレクションを通して探っていきました。

この2つの事例は規模の大小こそあれど、共創によって生み出されたものです。『日々の音色』は世界中のファンを集めて撮影し、まさにたくさんの方々の協力のもとに完成しました。また『積紙』もそれぞれ違ったスキルを持った企業が集い、試行錯誤を重ねながら商品化を進めていきました。良いもの・新しいものをつくるうえで、一人で実現できることはどうしても限られてしまうので、常にクリエイティブ作業に共創は欠かせません。

創造の場において、クリエイターは事業創出のスパイスになる

——川村さん自身、OPEN HUBの可能性についてどのように考えていますか。

OPEN HUBはあくまで器であって、そこにどんな人が集まるかが重要だと思います。でも、ただ集まるだけでは何も生まれない。料理も食材をただ揃えるだけではダメじゃないですか。どう調理するかが重要であるように、シェフのような立場でクリエイターやクリエイティブディレクターがもっともっと関わっていく意義があるのではないかと思っています。食材をどう組み合わせればもっと美味しくなるのか、どういったスパイスを加えたらやみつきになるような味を生み出せるのか。

例えばニューヨークにあるNew Incというインキュベーターでメンターをしていたころ、ジュリアというクリエイティブディレクターがまさにそういった役割を果たしていました。彼女が内外の人材やビジネスをつないで共創を促したり、場のカルチャーを育成していったことで、たくさんの新しいコンテンツやビジネスが生まれていきました。OPEN HUBには、そういった動きをする存在としてNTT Com社内外のカタリストがいます。僕を含め、クリエイティブに特化したカタリストたちが人をつなぎ、場を掻き回すことで面白いものが生まれる可能性も広がるのではないでしょうか。

ともすると、クリエイティブはビジネスから遠い存在だと捉えられることもありますが、僕たちのような存在が初期段階からいることでビジネスを後押しできる場合も多々あると思うので、一緒にプロジェクト創出へ取り組んでいきたいですね。

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