2025年7月より、NTTコミュニケーションズはNTTドコモビジネスに社名を変更しました

Carbon Neutrality

2025.09.05(Fri)

ザスパ群馬が挑むSDGsへの取り組み。
NTTドコモビジネスが提唱する「イベントオフセットパッケージ」の多方面における効果とは

2025年5月31日、Jリーグに所属するザスパ群馬は「SDGsデー」と銘打ち、ホームスタジアムである正田醤油スタジアム群馬で公式戦を開催しました。この日、採用されたのがNTTドコモビジネスの提案する「イベントオフセットパッケージ」です。イベントに伴って排出されるCO2等の温室効果ガスを把握し、カーボンクレジットによってオフセット(相殺)します。その際に購入するカーボンクレジットは、購入によって温室効果ガス排出量削減や森林資源の保護に寄与することができます。プロサッカークラブが行う気候変動対策やSDGsの目標達成に注力する背景、「イベントオフセットパッケージ」によって得られた多方面における効果について、ザスパ群馬の伊藤崇浩氏をお招きし、お話をお聞きしていきます。

目次


    プロサッカークラブとカーボンオフセットの接点

    ーーザスパ群馬がSDGsに関連した取組みに注力するようになった経緯について教えてください。

    伊藤崇浩 氏(以下、伊藤氏):Jリーグの理念にもありますが、各クラブは地域に根差し、貢献するというホームタウン活動に注力しています。では、私たちザスパ群馬には何ができるのかとあらためて考えた時、持続可能な社会を作るというSDGsの流れに沿った活動により一層、力を入れていこう、そのような取組みを推進していくことで地元にいろいろなものを還元していこうという方向性が固まっていきました。

    伊藤崇浩 氏|株式会社ザスパ パートナー営業部部長
    SDGsや地元企業との連携事業、エコスタジアムプロジェクトなど環境活動や地域貢献施策を積極的に推進する。

    小笠原正人(以下、小笠原):日本サッカー界を外側から見る立場として感じるのは、気候変動に対するJリーグの前向きなスタンスです。Jリーグのホームページにも記載がありますが、大雨など自然災害によって試合中止になったケースは2017年と2018年を比較すると約4.7倍に増えたというデータもあります。Jリーグの各クラブが気候変動アクションやSDGsへの取組みを加速させているのは、このように気候変動の及ぼす影響をリアルに受けている状況が背景にあります。こういった背景を知り、弊社のGX(グリーントランスフォーメーション)やサスティナビリティに関するサービスでご協力できないかと日々考えておりました。

    小笠原正人|NTTドコモビジネス ビジネスソリューション本部 スマートワールドビジネス部 スマートインダストリー推進室 主査/Catalyst
    NTT Com入社後、GXを中心とした社会課題や産業課題の解決に向け、ICTを活用したサービスやソリューションの企画開発を担当。住友林業との協業による「森かち」立ち上げに従事。

    ーーでは、NTTドコモビジネスがザスパ群馬へ提案し、実現したGXの中身について教えてください。

    小笠原:端的に言えば、気候変動に対応する脱炭素を促進する取組みです。これは「イベントオフセットパッケージ」と呼ばれるもので、イベントに伴い排出されるCO2等の温室効果ガスの排出量を算定し、カーボンクレジットを利用してオフセットします。オフセットに利用しているのは主に、CO2を吸収する森林、水田由来のクレジットを弊社がハブとなって調達・購入して、カーボンオフセットを実施するというものです。ポイントは単にオフセットするだけではなく、この取組みが地域貢献につながっていくという点でしょう。ザスパ群馬が森林由来のクレジットを購入することで、地域の森林保有者に資金を提供することになり、結果として適切な森林管理による環境保全活動の実現や地域経済活性化へつながっていきます。今回は群馬県内の森林クレジットを利用しませんでしたが、今後、この取組みによってザスパ群馬がカーボンオフセットを実現しながら地元の森林保全にも貢献し、こうした一連のストーリーをサポーターや地元の住民、企業と共有することで地域との関係性を深めていけると私たちは考えております。

    伊藤氏:このご提案をいただいて、ザスパ群馬としてもホームゲームでこうした取組みができれば、多方面においてメリットがあるだろうと感じました。群馬県の森林を有効に活用していくことや林業の活性化に貢献できることは大きなメリットですし、こうした取組みを通じて地域社会や自治体との関係性を深められるという期待も大きかったです。SDGsの取組みが、地元のコミュニティ拡大や新たなビジネスチャンスの創出にもつながっていけば嬉しいですね。

    新井駿也(以下、新井):私自身、高校までサッカーに熱中していたこともあって、着任した群馬のサッカークラブと何かつながりを持ちたいという気持ちも強かったです。もちろん群馬の地域社会に貢献したいという思いもあったのでこのイベントオフセットパッケージの提案をお受けいただけてとても嬉しかったですね。

    新井駿也|NTTドコモビジネス ソリューション営業部 群馬支店
    NTTドコモビジネス側の窓口として、今回の「イベントオフセットパッケージ」実施に尽力。群馬県内の企業、自治体、地域住民をつなぐ事業推進に取り組む。

    「イベントオフセットパッケージ」によって生まれる、豊かなストーリー

    ーーイベントオフセットの対象となった5月31日の試合ではカーボンクレジットの購入・無効化によって実際、どれだけのCO2排出がオフセットできたことになるのでしょう。

    小笠原:試合会場での水道、電力消費、来場される方の移動、廃棄物などから発生したCO2排出量などを合計すると、約27トンのCO2排出をオフセットしたことになります。この日にオフセットした排出量は無効化証明書(オフセットした証)としてスタジアム内に掲示していただけたので、パートナー企業へのPRにもなったと考えています。さらに、キックオフ前にはサポーターに対して大型ビジョンを用いて取り組みを紹介することもできました。また当日は「SDGsデー」と銘打って、スタジアム周辺のゴミ拾い活動や生分解性容器のスタジアムグルメへの導入なども行われ、ザスパ群馬のSDGsへの姿勢を広くアピールすることができたのではないかと感じています。

    2025年5月31日、スタジアムに映し出されたカーボンオフセットの掲示。

    伊藤氏:クラブとしてももちろん、カーボンニュートラルへの強い興味はありましたし、試合開催によってどれだけのCO2が排出されるのかということにもフォーカスしていたのですが、今回の取組みでリアルな数値を把握できたことにとても満足しています。実際、クラブ側だけでCO2排出量に繋がる情報を取得して排出量を算出するのはとても困難だと分かっていました。NTTドコモビジネスのイベントオフセットパッケージを利用することで、環境省の会議・イベントにおけるオフセットガイドラインに則った算出方法で情報を整理するフォーマットを提供していただき、CO2排出量算定に関する情報を集めることが、驚くほどスムーズにできました。このように数値算出を実践できたこと、またパートナーと連携してそれを実現できたことは私たちにとって大きな収穫です。

    イベントオフセットを実現したSDGsデー、試合当日のイレブン。©THESPA

    イベントオフセットを実現した当日の試合を観戦したNTTドコモビジネスのメンバー。

    ーー今回のカーボンクレジット購入には住友林業とNTTドコモビジネスの共同開発による森林価値創造プラットフォーム「森かち」を採用しました。このシステムの中身や狙いについて教えてください。

    樫村ゆい(以下、樫村):「森かち」は森林クレジットの活用によって森林の価値を高める取組みで、そのミッションは森と人、地域の繋がりを育むことです。プラットフォーム地図上でクレジット情報を一括管理し、クレジットの創出、データ管理の負担を大きく軽減し、購入者向けに対象となる森林の所在地、詳細情報をわかりやすくご提供しています。これまで購入者目線では、クレジットを購入した後にどのようなかたちでお金が使われるのか、対象となる森林はどのような魅力を持った土地なのかといった情報がなかなか分かりにくい状況でした。「森かち」ではこうした課題をクリアにすべく、クレジット販売ページに地域情報や購入資金の用途などをテキストや写真で分かりやすく掲載し、知りたかった情報を一覧して可視化することで利便性を飛躍的に向上させました。このプラットフォームによってクレジットの売買を活性化させることで、結果として森林整備の充実や山林所有者の収益確保、人材不足に悩む林業の健全化に貢献したいと私たちは考えています。

    樫村ゆい|NTTドコモビジネス 北陸支社
    北陸支社に所属しながら「森かち」運営を兼務。スポーツと地域社会をGXによってつなげる「イベントオフセットパッケージ」のさらなる全国展開を構想中。

    小笠原:現行制度におけるカーボンクレジットには排出回避・削減(削減系)と除去・固定吸収(吸収・除去系)の2種があります。この2つのうち「森かち」が提供するのは吸収・除去系の森林由来J-クレジットで、これは大気中に存在するCO2を直接的に除去できるため、国際的にも気候変動対策への貢献度が高いと言われています。このように価値の高いクレジットを購入できるうえに、森林保全への貢献といったストーリーを作りやすいとか、地域社会との関係性を深められるといった副次的なメリットも生み出せるのが「森かち」の強みです。

    ーー今回のイベントオフセットパッケージ実施によって生まれた効果、手応えについてお聞かせください。

    新井:今回のオフセットは、ザスパ群馬のパートナーである株式会社サンワが提供するJクレジットを利用し実施されたものです。こうしてザスパ群馬、株式会社サンワ、弊社の3社がしっかり協業してSDGsへの姿勢を社会に対してアピールできたことに大きな手応えを感じています。またこの取組みを通じ、サッカークラブという存在が地元企業や自治体、住民の方をつなぐハブ的な役割を担っていることをあらためて痛感しました。サッカークラブとの協業によって、私たちが益々、地域社会に貢献できることを認識できた収穫の多いプロジェクトだったと思えます。

    伊藤氏:クラブ側としても大きな可能性を感じ、さまざまな気づきを得たプロジェクトでした。私たちは単に試合に勝って嬉しいとか、単に試合を観に来ていただきたいということだけを考えているわけではありません。ザスパ群馬が存在することでどれだけ地域社会にポジティブな影響を与えていけるかということを考え、注力したいですし、SDGs関連の取組みはその一環でもあります。具体的にはクラブがカーボンクレジットを利用することで、サポーターの皆さんの環境保護に向けたアクション、行動変容にもつながっていくかもしれません。ですからイベントオフセットを実施しました、という事実の背景にあるストーリーをより豊かに表現し、広く伝えていく必要があるなと今回、あらためて認識しました。たとえば試合会場で利用される生分解性の食品容器はスタジアム内のエコステーションに設置した回収ボックスを通じてコンポスター(生ごみなどの有機物を微生物の働きで発酵・分解して「堆肥」を作るための容器や装置)に入れ、堆肥として利用するという試みも行なっています。サポーターの皆さんはこの堆肥によって育ったひまわりを、GCCザスパークというザスパ群馬のクラブハウスで見ることができます。これを見た方々が「循環」というキーワードに気づいたり、何かの行動を起こしたりするかもしれません。こうしたストーリーをしっかり作ってご紹介していくことが大切ですよね。ですからストーリーを作ってご紹介しやすい今回のイベントオフセットのような試みはクラブにとって大きなメリットがあったとあらためて感じています。

    スポーツと全国の地域社会を結ぶGXの可能性

    ーー今後、NTTドコモビジネスはザスパ群馬のようなスポーツクラブとどのような協業を構想しているか、聞かせてください。

    樫村:以前、イベントオフセットパッケージの提供をラグビーチームの浦安D-Rocksへ実施したのですが、その際、クレジットの創出者が熊本県の人吉市であったというつながりから、ひとつのイベントが生まれました。人吉市のラグビー協会がクレジット購入者であるD-Rocksを人吉市に呼びたいというお申し出に対し、弊社がハブとなって実施したイベントです。「田んぼラグビー」と称したこのイベントでは人吉市の人々とD-Rocksのラグビー選手が田んぼを舞台にラグビーを楽しみ、豊かな交流も生まれました。カーボンクレジットの購入者であるD-Rocksがクレジット購入によって貢献した森林を目にするという新たなつながり、そして関係人口の創出というメリットなど、さまざまな副産物が双方にあったと感じます。こうした取組みをぜひ、ザスパ群馬とも行なって、カーボンクレジットを通じた異なる地域同士のつながりなどを創出できればと考えています。

    小笠原:今回のザスパ群馬との取組みを広くご報告したところ、複数のサッカークラブからお問い合わせをいただきました。これほどイベントオフセットパッケージの効果に期待していただけるというのは弊社にとって嬉しい事実です。サポーターの方々はもちろん応援するクラブの勝ち負けにこだわりますが、今回のようなカーボンオフセットの取り組みや広くSDGsの目標達成に取り組む姿勢も、今後、サポーターにとってクラブを評価するひとつの基準となっていけば素晴らしいと感じます。環境保護に寄与しながらスポーツクラブの価値向上につながっていく施策を、これからも積極的に打ち出していきたいですね。「森かち」では現在、47都道府県すべてにおいてJクレジットの購入ができるよう力を注いでいます。クレジット購入者の皆さんにとっては日本全国の森林とつながる機会となり、クレジット創出側にとってはザスパ群馬のようなプロスポーツクラブと関係を構築できる舞台ともなっていくでしょう。

    樫村:私はNTTドコモビジネスの北陸支社に所属していますが、北陸地方におけるGXを通じた地域貢献の可能性を今後、ますます拡張していきたいと考えています。そのような観点で見ると、今回のザスパ群馬との協業は北陸においてもお手本となるような事例であったと感じています。地域社会と密接な関係を構築しているスポーツクラブとの協業、SDGsへの取り組みにおいて、弊社がお手伝いできる領域をしっかり確立し、広く社会に貢献していきたいですね。

    ーー最後に、伊藤さんからNTTドコモビジネスへ期待することについてお聞かせください。

    伊藤氏:ザスパ群馬は数年前からSDGsの目標達成に向けた活動を続けてきましたが、今回のイベントオフセットによって新たな取組みを実施でき、とても満足しています。また、今後もクラブの価値を高めるため、地域社会に貢献するために多様な活動を展開していきたいという意欲がさらに高まりました。これから何をすべきか、どんなアクションができるのかという課題がクラブ内で出てくると思いますが、今回のプロジェクトでNTTドコモビジネスが有する幅広いソリューションの可能性を知ることができ、引き続きご一緒に前進していけるという実感も得られました。さまざまなアイデア、提案をお互いに出し合い、一緒にチャレンジしていくことを期待しています。

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