Carbon Neutrality

2024.11.13(Wed)

生成AI時代の次世代型データセンター
「Green Nexcenter®」の技術を担う新しい発想とは?

#AI #カーボンニュートラル
生成AIが急速に浸透し、私たちの生活やビジネスを変革させつつあります。しかし、この活況の裏で課題も生じています。データトラフィックの増大化です。AI(人工知能)など、ビッグデータの計算には、従来の技術では対応しきれないほどの膨大な処理能力が求められ、電力消費やエネルギー効率の問題も深刻です。こうした需要の変化から、データセンター業界は大きな転換点を迎えています。

その解決策として、NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)が2025年春から提供を開始するのが液冷式データセンターサービス「Green Nexcenter®」です。従来の空冷方式とは異なる新方式には、効率的で高性能な冷却によって生成AIの膨大なデータ処理を支える、新たなインフラとして期待が寄せられます。

実際にその仕組みと実力を探るべく、首都圏某所に設置されたデータセンター専門の実証実験環境「Nexcenter Lab」を訪れ、NTT Comクラウド&ネットワークサービス部の北山健太に話を聞きました。冷却技術がどのようにしてAI時代のデータ処理課題を解決するのか、その可能性に迫ります。

この記事の要約

生成AIの急速な普及に伴い、データセンターの冷却問題が深刻化しています。従来の空調による空冷方式では、AIの膨大な計算処理に必要なGPUの発熱量に対応できなくなっているのです。

この課題に対し、NTT Comは2025年3月から「Green Nexcenter®」という液冷式データセンターサービスを開始します。液冷方式は、GPUなどの発熱源を液体で冷却する効率的な方法で、従来の5倍以上の冷却能力を誇ります。

Green Nexcenter®は、高い冷却能力に加え、再生可能エネルギーの活用や1ラック単位でのコロケーションサービスの提供など、幅広いニーズに対応できる柔軟性も特長としています。さらに、将来的には次世代情報通信基盤構想IOWN(アイオン:Innovative Optical and Wireless Network)のAPN技術(All-Photonics Network)の導入により、データセンター間を高速かつ広帯域で接続します。これにより、超大容量のデータを超低遅延でやりとりできるようになります。

NTT Comは、この新技術を通じて、生成AIなどの先進的テクノロジーの普及と社会のポジティブな変革を支援していく方針です。

※この要約は、生成AIをもとに作成しています。

目次


    生成AIがもたらしたデータセンターの急務

    ——データセンターの冷却能力の向上が急がれると聞きますが、なぜなのでしょうか?

    北山:ご存じのように、背景にあるのは生成AIの隆盛です。さまざまなWebサービスやビジネスツールに生成AI技術が実装され、多くの人が日常的に生成AIを活用するようになりました。それに伴い、データトラフィックが爆発的に増大しています。大規模なデータ計算を実現するために、いかに効率的にサーバーを冷却するかがデータセンターの課題になっているということです。

    例えば、マーケティングに生成AIを活用する場合のプロセスとして、まず大量のデータを読み込む学習。次に、その計算結果をもとにユーザーのニーズや行動を予測する推論。そして学習済みデータによって得られた洞察から確度の高いマーケティング施策を立案するという3つの段階があります。この最初の学習のプロセスに、特に高度な計算処理が求められ、サーバーの発熱量も多くなります。ところが、従来のデータセンターでは冷却が追いつかず、生成AIのパフォーマンスを最大化しきれていませんでした。

    ——つまり、生成AIによってデータトラフィックが急増したことで、効率的にサーバーを冷却し、計算処理能力を向上させる必要が出てきたということですね。

    北山:そのとおりです。この膨大な計算量を実現するため、生成AIの計算に使われるサーバーには中央処理演算装置であるCPUと、画像処理装置のGPUチップが使われていることがほとんどですが、このGPUチップのデータ処理性能が高い分、消費電力と発熱量は非常に多くなります。

    試算によると、データセンターの消費電力は驚くべきスピードで増加しています。2018年ごろは190TWh(テラ・ワット・アワー)しかなかったのが、2030年には約16倍の3,000TWhに。さらに2050年には約2,652倍の504,000TWhにまで増えるといわれています。

    消費電力と比例して発熱量も増えます。従来、データセンターでサーバーラックを冷やすために使われていたのは空調冷却、いわゆるエアコンでした。1つのラックには、2Uサーバーで20台ほどのサーバーを搭載できますが、エアコンの冷却能力は1ラックあたり20kWといわれています。しかし、生成AIのデータ計算量に耐えうる最新のGPUを積んだサーバーは、1台で10kWの発熱量があります。つまり、空冷ではラックに2台搭載しただけで限界に達してしまうのです。そこでNTT Comのデータセンターでは液体をラック内に循環させ、効率的に冷却する「液冷」方式のサーバー機器に対応することにしました。

    北山健太|NTT Com クラウド&ネットワークサービス部

    液体が可能にする、GPUのダイレクト冷却

    ——なぜ液体による冷却なのでしょうか?

    北山:まず、液体は空気よりも20倍以上も熱伝導率が高く、エアコンなどの空冷より液冷のほうがずっと冷却能力が高いという特長があります。

    そもそも、データセンターの冷却が求められる最も大きな要因は、GPUなどのチップにあります。サーバーの消費電力の約70%を占めるといわれるほどです。従来の方式がサーバーラック全体を冷やすのに対して、液冷方式はこれらのチップだけを冷やすという発想です。

    ラックの中を見てみると、液冷方式サーバーのチップの上には同サイズのコールドプレートという金属製の部品が設置されています。そこに冷却液が流れ込むと、プレートとチップの間に熱交換が起こり、高発熱のチップが冷却される仕組みです。

    チップの熱を帯びた冷却液はCDUという冷水分配装置に流れ込み、別の水流と熱交換を行うことで二次冷却が起こります。これによって、1ラックあたり最大で80kWまでの発熱量に対応することができるのです。

    液冷方式ラックの内部。チップ(GPU)の上には、銅などの高熱伝導素材でできたコールドプレートがあり、冷却液がチューブを通りラック内を流れる
    冷却液全体の流れと温度が表示されたディスプレー。右から左に向かってラックからCDUへと液体が流れることで熱交換が起きる
    データセンター内に張り巡らされた配管

    ——空冷型の5倍以上の効果があるのですね。

    北山:はい、さらに発熱源から冷やすため、エアコンやファンなどの空冷設備のエネルギーを大量に使う必要もありません。液冷方式は、従来の「空冷方式」や液体を使った冷却方式の1つである「リアドア方式」と比較し、空冷設備に求められる性能が下がり、結果としてデータセンター自体の消費電力を低減することが可能です。

    ——NTT Comが持つNexcenter Labには「液冷方式」以外に「リアドア方式」と「液浸方式」があるとのことですが、その特長と違いも教えてください。

    北山:リアドア方式は、ラックの後方(リア)についた扉(ドア)に冷却水が流れるようになっていて、それが循環することでサーバーラック全体を冷やします。加えて、サーバーに内蔵されたファンが回転することで、冷たい空気がサーバー内を通ってリアドアから抜ける仕組みになっています。サーバーの熱を液体が流れるリアドアで冷やすため、空冷式にくらべると大幅に冷却効果が高くなります。冷却能力は1ラック30kWと、空冷単体のサーバーに比べ1.5倍の性能があります。

    CyberAirリアドア型(NTTファシリティーズとStulz GmbHの共同開発)のサーバールーム。左右に10台ほどのラックが並ぶ
    Motivair社のリアドアラック。Nexcenter Labでは複数機種のリアドアラックを備える

    ——「液冷」「リアドア」ときて3つ目が「液浸」方式。これは文字通り「液に浸す」ということですか?

    北山:そうですね。サーバーラックは縦に置くのが通常ですが、液浸方式ではラックを横にしてそのまま小型プールのような冷却液に浸します。サーバーを液体に直接浸すため、3つのうちでは最も高い冷却力を誇るといわれ、1ラックあたり最大100kWもの発熱量に対応することが可能になります。

    電気を通さない特殊な液体を触媒とする液浸ラック。サーバーで発生した熱が冷媒によって冷やされる仕組み

    液冷方式ならではのコロケーションサービス

    ——新たに開設した液冷方式の「Green Nexcenter®」は2025年3月から横浜第1データセンター、大阪第7データセンター、2026年3月に京阪奈のデータセンターで展開されるとのことですが、どのようなサービスを提供するのでしょうか。

    北山: NTT Comが新たに展開する超省エネ型データセンターサービス「Green Nexcenter®」は、1ラックスペース単位という最小単位から提供できるコロケーションサービスです。生成AI事業などで存分に活用できるのはもちろん、水資源を浪費しない環境配慮型冷却システムとなっていることも好評をいただいてます。

    北山:また、サーバールーム全体を空気で冷やすリアドア式や、クレーンなどの設備が必要な液浸方式にはない利点として、サーバーのメンテナンスがしやすいことも液冷方式の特長です。液冷方式はラック単位で運用でき、サーバーが正常に作動しているかの確認やセキュリティ対策がしやすく、責任範囲も明確です。

    ——なるほど。ユニコーン企業を目指すようなスタートアップも生成AI関連事業に積極的に参入しています。大企業はもちろんのこと、そうした企業にも広く活用してもらえるようなサービスとして、液冷方式が最適だということですね。

    北山:そうですね。NTTグループとしては、幅広い要望への対応力と柔軟性が強みであり、重要な方針でもあります。とはいえ、液冷方式のみではなく従来型の空冷方式も用意していますので、用途に応じて活用していただけるようになっています。

    というのも、「生成AIは膨大なデータ計算が必要になる」と述べてきましたが、最も大量に計算が必要になるのは、学習、推論、学習済みデータの3の用途のうち、最初の学習のステップです。

    ビッグデータを扱うこの部分だけをGPUで処理し、その冷却をGreen Nexcenter®での液冷方式で対応する、推論以降は通常サーバーで計算する、といった使い分けができるのも強みです。

    生成AI時代のインフラを強固に、そして便利に

    ――今後、データトラフィックがさらに増大化することを見据え、データセンターではどのように提供価値を強化していく予定でしょうか?

    北山:現在は、NTTが提唱する次世代情報通信基盤構想IOWN(アイオン:Innovative Optical and Wireless Network)の1つであるAPN技術(All-Photonics Network)でデータセンター間を接続し、より大容量で低遅延な通信環境の実現と、事業エリアの拡大に向けて取り組んでいます。通信が強化されることで、企業内の複数の拠点で使用される場合でも、オンプレミスに近いネットワーク利用が可能になります。

    また、データセンターサービスは、メンテナンスの観点などからどうしてもアクセスの良い首都圏に需要が偏りがちになり、それがコストの増大にもつながっています。

    よりスムーズな通信ができるネットワークを供給し、データセンターの設置場所の選択肢が広がることで、通信コストの低減や地方の再生可能エネルギーを導入しやすくなるなどのメリットが提供できるとも考えています。

    さらに、ロボットやVRによるサーバーラックの遠隔管理に向けた実証実験も行っています。リモートメンテナンス対応など、あらゆる角度からデータセンターの可能性を広げていきたいですね。

    実証実験中の見回り用ロボット。さまざまな高さや角度からサーバーの状態監視が可能
    Nexcenter Lab内のプレゼンテーションエリア兼コワーキングスペース

    私たちは、技術の透明性と理解促進にも注力しています。このラボを一般の企業の方々にも事前予約制でオープンにしているのも、そのためです。内部を公開しているデータセンターは珍しいですが、ここではGreen Nexcenter®をはじめとする最新技術や一部実証実験を実際に見ていただくことができます。

    データセンターはもはや、生成AI時代の礎となる重要な社会インフラです。NTT Comでは、その普及と発展に貢献し続けることで、世の中のポジティブな変革を後押ししていきたいですね。

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