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2022.06.01(Wed)

「経理DXの壁」を突破する、リアルとデジタルの出会いが生んだソリューション

#共創 #事例 #働き方改革

#9

PARTNER

NOCアウトソーシング&コンサルティング
芙蓉総合リース

リモートワーク“最後の壁”。請求書などの書類を多く扱う経理部門は、そう言われてきました。しかし、法改正による請求書の電子化の推進と、画期的な経理DXのソリューションサービスの登場によって、その壁を突破しつつあります。NTT Comと芙蓉総合リース、NOCアウトソーシング&コンサルティング(以下、NOC)の共創によって生まれた「経理・請求書トータルソリューション」は、さまざまな場面におけるDX導入のハードルを取り払う画期的なソリューション。企画に携わった4人のキーパーソンに、共創の経緯とビジョンを聞きました。

目次


    トリガーは、インボイス制度

    ――経理部門のリモートワーク化が進まない企業がいまだに多い理由を教えてください。

    川﨑雄二氏(以下、川﨑氏):答えはシンプルで、紙の請求書とハンコによる承認作業を残している企業が多いためです。郵便物の受け取りや押印作業があるため、オフィスに通わざるを得ないわけです。

    我々、芙蓉総合リースは総合リース会社です。リース業務は企業会計に関わるため、クライアントの経理部門と密接な関係性が生まれます。そのため「リモートワークが全社的に進んでいるのに、経理部は出社しなくてはならない」「紙の請求書にこだわる取引先がいるため、郵送での受け取りがどうしても発生してしまう」など、経理部門の方々のリアルな課題を耳にする機会が多々ありました。

    特に弊社は、新たな事業の柱として2019年からBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスを戦略的に展開してきました。経理部門の方々の業務効率化を図ることに、直接的なビジネスのシーズを強く感じてもいました。

    川﨑雄二|芙蓉総合リース BPOサービス推進部長
    芙蓉総合リースで情報機器営業に長年携わり、大企業営業部門の立ち上げに従事。その後、営業企画部門を経て、2019年のBPOビジネス立ち上げより現部署に所属し、2021年「経理・請求書トータルソリューション」のサービスを開始。2022年4月より部長として、「アウトソース+DXによるBPS(ビジネスプロセスサービス)」の推進を担う。

    ――芙蓉総合リースの子会社でBPOの専業会社であるNOCは、まさに現場でそうした経理部門の課題とシーズを感じていたのでしょうか。

    橋本公司氏(以下、橋本氏):はい。弊社はそもそも2000年から経理、人事、総務といったバックオフィス業務の代行事業を専門にしてきました。「紙が多すぎるのでは」といった電子化への課題感は長らく持っていたものであって、今はコロナ禍によってそれが顕在化しただけであると捉えています。

    請求書に記された数字や情報は、各社の会計システムなどに移されるので、処理までのフローのどこかで誰かが電子化をする必要があったのです。そのため、「お客さまの書類を受け取って、電子化する業務」は以前からよく請け負っていました。最初から請求書をデジタルデータとして受け取れれば、根本的な効率化が図れるのに……との議論はもう20年前から起こっていたのです。

    橋本公司|NOCアウトソーシング&コンサルティング執行役員 アウトソーシング事業部本部長
    専門商社での営業経験を経て、2000年より総合アウトソーシング会社であるNOCグループに従事。人事・総務・経理のアウトソーシングプロジェクトリーダーとして、数十社のクライアントを立ち上げから運用フェーズまで担当。現場のリアル感を重視した業務アウトソーシングの構築を得意としている。

    ――今回の法改正が、その流れを大きく変えつつあるそうですね。

    川﨑氏:そのとおりです。法改正は2つあって、まずは2022年1月からの「改正電子帳簿保存法(電帳法)」です。2年間(2023年12月末まで)の宥恕(ゆうじょ)期間はつきましたが、企業は電子取引情報に該当する請求書は紙ではなくデジタルデータとして保存することが義務づけられました。

    もう1つは2023年10月に施行される「インボイス制度」です。仕入税額控除を受けるためには適格請求書(インボイス)の保存が必要になることや、現在、保存義務のない3万円以下の領収書等を含むすべての適格請求書等の保存が必要になることから、紙のやりとりのままでは請求書処理は煩雑になり、負担が大きくなります。

    ――「電帳法」と「インボイス制度」。この2つに効率よく対応するには請求書を電子化するほか道はありません。リモートワークの推進以上に重い腰を上げざるを得ない状況になっているというわけです。

    橋本氏:機運が高まったのは確かです。ただし、やはりハードルがありました。「経理、請求書業務をDXする!」と決めても、実行するには取引先企業も巻き込む必要があるからです。

    「請求書をこのような形式のデジタルデータでほしい」と取引先にお願いしても、取引先では対応していなかったり、別のシステムを導入していたりする場合も多いですから。もちろん、紙のままで出し続けたいとこだわる取引先もあるでしょうし。

    また、電子化が法規制対応のための手段と考えてしまうと、そこで終わってしまいます。重要なのは、DXを活用して業務プロセスを改革していくことです。

    ――このニーズに応えるソリューションとして立ち上げたのが、NTT Comとの共創によって生まれた「経理・請求書トータルソリューション」ということでしょうか?

    橋本氏:そうです。NTT Comが開発した請求書プラットフォーム「BConnectionデジタルトレード」と、我々が2021年10月から提供している「電子化BPO」、「経理BPO」を組み合わせたパッケージソリューションです。

    手書きとデジタルを、シームレスにつなぐ

    ――「経理・請求書トータルソリューション」の仕組みを教えてください。

    山上昌彦(以下、山上):まず、我々NTT Comが提供する「BConnectionデジタルトレード」についてお話しします。これは企業間取引の電子化を実現するクラウド型サービスがソリューションの中心にあります。

    請求書の「発行」はもちろん、「受け取り」も電子化し、そのままクラウドのプラットフォーム上で「承認」フローまで実現できるシステムです。もちろん、電子化された請求書データはそのままクラウド上で保管できるので、電子帳簿保存法にも対応しています。

    競合サービスとの大きな違いは、アカウントをとっていただいた導入先企業はもちろん、取引先企業にとっても使いやすくなっていることです。

    山上昌彦|NTTコミュニケーションズ プラットフォームサービス本部アプリケーションサービス部 担当課長
    NTTドコモ、NTTアメリカ、NTTPCなどグループ各社での経験を経て、スポーツ業界におけるDXコンサル・サービス企画や店舗集客型デジタルマーケティングサービスの事業企画など、アプリケーションレイヤーでのビジネス開発に広く携わる。 現在では企業間取引における課題を解決すべく、業務改革・DX化を推進するソリューション BConnectionを担当。

    ――使いやすさ、とは?

    山上:UIをSNSライクなデザインに仕上げ、マニュアルがなくても誰でも直感的に使えるようにしました。

    取引先には、経理や情報システム部門を持たない中小企業や個人事業主が含まれる場合も多い。誰もがわかりやすく、わずらわしくない操作性を担保することで、先に橋本さんがおっしゃった「電子化はわずらわしい」と感じがちだった取引先企業のハードルを下げました。さらに、スムーズな「データ連携」も使いやすさの大きな要因です。

    ――データ連携とは具体的にどういったことでしょうか。

    山上:社内の会計システムなどとの連携です。電子化された請求書データは、そのまま会計システムやその他システムとスムーズに連携するのが理想です。単に請求書を電子化するのではなく、社内システム内の元データがそのまま請求データとして自動的に発行できたり、逆に受け取った請求データが社内データに反映されたりすれば、大きな業務効率化が図れます。

    ――しかし、社内システムは各社が標準的につくられてはいませんよね。

    山上:そのとおりです。数社のシステムを組み合わせ、複雑な環境で組み上げている場合がほとんど。そのため、インプットされたデジタルデータがそのままスムーズに別のシステムに汎用できるかといえば、そうではありません。

    そこで「BConnection デジタルトレード」は、データ連携の環境に合わせたカスタマイズや作り込みをクラウド上で柔軟にできるようにしました。導入先企業にあわせて、ここまで環境のセットアップができるシステムはほかにないと思います。

    ――操作性と利便性によって、請求書の電子化のハードルをとことん下げたプラットフォームなのですね。とはいえ、それでも「紙で発行・管理したい」「請求書のスタイルを変えたくない」という取引先は残りそうですが、その点いかがでしょうか。

    橋本氏:おっしゃる通り「BConnection デジタルトレード」の導入ハードルがいかに低くとも、そういった要求は一定数残ると想定しています。そこで次に力を発揮するのが、芙蓉総合リース×NOCの「電子化BPO」です。

    具体的には、紙で受け取った請求書は弊社のBPOセンターが預かり、高速スキャナとAI-OCRの組み合わせで、1分あたり300枚の請求書を電子化します。これを「BConnection デジタルトレード」プラットフォームにインプットするところまでを請け負います。

    つまり、取引先から紙の請求書が来ても「経理・請求書トータルソリューション」を利用されている企業は、「BConnection デジタルトレード」プラットフォームの操作だけで請求データの受け取り、承認などができるのです。

    ――デジタル×アナログの両輪でDXを行う。「経理・請求書トータルソリューション」は、3社の強みを生かした座組だからこそ生まれたソリューションですね。

    橋本氏:はい。また、そうした単純な「電子化BPO」だけではなく、請求書データを会計システムに入力する際の仕訳などを正確に請け負う「経理BPO」と呼ばれる領域もフォローします。いくら電子化がスムーズにできても、「発注情報と請求額の差異のチェック」や「経費データの勘定科目を正しいかチェックして修正する」といった作業は残ります。

    弊社にはプロフェッショナルの経理専門スタッフが数十名ほどいて、こうした仕訳作業もアウトソーシングで請け負っています。

    ――経理業務のリモートワーク化が可能になるだけではなく、さらに大きな業務効率化も期待できる。

    川﨑氏:まさにそんな期待を持って「経理・請求書トータルソリューション」を検討・導入いただいている企業が多いです。「BConnectionデジタルトレード」と「電子化BPO」「経理BPO」それぞれの機能と、それらが掛け合わされることで実現される環境を理解していただければ「これなら完全リモート化ができる」という実感が得られるのではないかと。

    補完し合う関係性が、実りある共創を生む

    ――長く満たされていなかった経理のニーズを、リアルに強い芙蓉総合リースとNOC、そしてデジタルに強いNTT Comのかけ合わせで実現することができた。今回のケースは、理想的な共創の形の1つに見えますね。

    石間満(以下、石間):そう自負しています。功を奏したのは、共創の起点を各社の事業ポートフォリオから練り上げるところとしたことだと思います。

    弊社はこれまで音声やネットワークなどの領域が稼ぎ頭でしたが、この領域は市場がすでに成熟しきった。新たな事業の柱としてDXにかじを切り始め、チャレンジの意欲にあふれていました。

    石間満|NTTコミュニケーションズ OPEN HUB Chief Catalyst/Business Producer
    ビジネスプロデューサーとして、お客さまとの共創による新規ビジネス創出に従事。過去多くのビジネスインキュベーション、開発、エンジニア経験とNTTグループ全体のアセットや知見を活用した事業戦略立案とコンサルティングがスペシャリティ。

    川﨑氏:一方の我々も、昨今、会計基準の変更などによって、かつてはもっとも存在感のあった会計面でのリース業のメリットが薄まっていました。そこで先に述べたようにBPOに注力し、強みとして磨き上げていくタイミングでした。

    ――そこに、冒頭にあったような経理部門のペーパーレス化やリモートワーク化のニーズがあった。そして、それに対応するソリューションをお互いが補完し合うかたちで共創することができたというわけですね。

    石間:リアル×リアルでも、デジタル×デジタルでもない。リアル×デジタルの会社同士の共創だったのは成功の一因だと感じます。領域が重なるとどうしても仕事が取り合いになりますからね。

    また、デジタライゼーションは一足飛びには進みません。過渡期の今は特にアナログの領域が残る。その部分を得意とする芙蓉総合リース、そしてNOCと組むことで補完できたのは本当に大きかった。サービスそのものもそうですが、システムの磨き上げでも大いに得るものがありました。

    請求書・経理データの埋もれた価値

    ――今後はどのようなビジョンをお持ちでしょうか?

    川﨑氏:芙蓉総合リースとしては、BPOからさらにBPS(ビジネスプロセスサービス)に進化させていく考えがあります。

    BPOとDXを組み合わせた今回の取り組みは、BPSの先鞭(せんべん)となる試みです。中期的にもこのソリューションを磨き上げると同時に、また新しいカタチのBPO×DXの事業を展開させていきたい。

    石間:そうですね。我々も「この先」にこそ大きなシーズがあると考えています。今回、請求書を電子化することで作業効率化や法対応のニーズが満たせるわけですが、それは請求書データをおのずとお預かりすることになる。

    このデータを利活用することで会計、経営的なコンサルティングをより精緻に行うことが可能になります。たとえば「この出費はリースにしたほうが得です」などとリースのクロスセルも可能になるかもしれません。

    ――なるほど。単なるコスト削減ではなく、実はもっと解決できることが増える。ユーザー目線でいえば、DXによってまた視座の違う課題解決のヒントも自然に得られるようになるわけですね。

    橋本氏:請求書データはまだまだ活用されていない、価値化されていないもったいない領域ですからね。今回の共創で、変わっていく起点になったらすばらしいですね。

    石間:共創がもっと大きなシナジーを生み出すのは、むしろこれから先にこそあると期待しています。

    【ウェビナーアーカイブのお知らせ】
    経理・請求書トータルソリューションに関するウェビナーの模様を収録した動画は、こちらよりご視聴いただけます。
    「改正電子帳簿保存法、インボイス制度に対応
    請求書電子化サービスと経理BPOの導入による経理部門の完全テレワーク実現
    ~芙蓉総合リース×NOC×NTT Com協業シナジーで作るサステナブルな働き方~」

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